キューバ(13)トリニダーから観光列車で行くロス・インヘニオス渓谷
世界一周みたいなことをやっております私は、現在はキューバのトリニダーという町にいます。ここは、町自体が世界遺産になっておりますが、そこから電車で行くことができる場所にもうひとつの世界遺産があります。その名は「ロス・インヘニオス渓谷」。本日はそちらに足を運んでみました。
【現在地】トリニダー(キューバ)
Trinidad(Cuba)
【気温】30度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1CUC=約115円、1CUP=約4円
トリニダーからロスインヘニオス渓谷に行ってみよう!
トリニダーにやってきたのは昨日のこと。本日は、このトリニダーから観光列車に乗っていく「ロス・インヘニオス渓谷(Valle de los Ingenios)」についてご紹介いたします。
トリニダーという町は500年以上も前から存在するキューバの古都。かつては奴隷貿易と、その奴隷たちを使ったサトウキビ生産で莫大な富を獲得し、たいそう潤っていたそうです。19世紀の中ごろに奴隷制度が廃止されてからは、町は静かに衰退し、その名残として美しいコロニアル建築の家々がたたずんでいるわけです。
そんな経緯もあって、トリニダーから15kmの場所に位置するロス・インヘニオス渓谷には、サトウキビを使ってお砂糖を作る大規模な工場群が存在します。“ロス・インヘニオス”とは「機械類」のことで、製糖機械にちなんで付けられた名前。「砂糖の谷」なんて呼ばれるほど、砂糖の生産が盛んだったんですねえ。
ビニャーレス渓谷に存在する工場跡と、サトウキビ貿易で莫大な富を築いた当時の富豪たちの邸宅跡は世界遺産にも登録されています。今もなお稼働している製糖工場はごくわずかなのですが、当時の名残を残す廃墟と化した工場跡を見学できる列車ツアーが、ここトリニダーから出発しています。
のんびりゆったり観光列車でGO!
まずは宿での朝ごはんからご紹介します。私が滞在しているのはトリニダーにあるカサ・パティラール。キューバ流の民泊のことです。多くのカサ・パテクラールでは、宿泊費とは別に、3~5CUC(約330~550円)払うと朝ごはんを用意してくれます。宿の詳細はこちら。
この日は朝食をお願いしておりましたので、朝7:30に宿の屋上へ。
清々しい朝。そして豪華な朝食でおなかいっぱい。たっぷりのフルーツと
大きなパン。オムレツまで付いてきます。
ところで、毎日毎日お金の話ばっかりして申し訳ないのですが、この朝食もね、いわゆる“観光客用”なんですよ。こちらで、キューバ人の平均月収が2,800円くらいだというお話をしたかと思います。
で、朝食は5CUC(約550円)。これはキューバ価格でいうとすごい高いんじゃないかと思ったりもするのですが、どうやらそうでもないみたいで。昨日外貨ショップと呼ばれるスーパーに牛乳を買いに行ったのですけど、牛乳1Lのパックが2CUC(約220円)もするんですよ。日本で買うのと変わらない。2,800円の月収で、牛乳1パックが220円とか…。
そんなことを踏まえて考えますと、この朝食がけっして法外に高いわけではなく、そして、キューバの人々にとってはものすごく高級。地元の方が毎日こんな感じの朝食を食べていらっしゃると思ったら大間違いなんです。
朝食を済ませ、ロス・インヘニオス渓谷へ連れて行ってくれる観光列車に乗るために駅へと向かいます。
宿からは徒歩で行ける距離。場所はこちらです。
地図で見ると、このへんなんだけどなあ。駅どこかなあ~。
え、あ、これ?
ホーム小さーい。でも旅行者の姿を見かけますので、ここに列車がやってくるようです。道路を挟んで反対側に小さな駅舎がありますので、ここでチケットを購入します。
この観光列車は、トリニダーを出発し、「マナカ イスナガ」という村を経由し、今は稼働していないかつての製糖工場まで行きます。製糖工場で1時間停車したあと折り返し、また「マナカ イスナガ」に。こんどはここに1時間ほど停車して、最後にトリニダーに戻ってきます。詳細はこちら。なんだかかわいいです。
チケットは15CUC(約1,650円)。
これに乗るのは旅行者のみ。そして乗車も降車もみんないっしょ。ガイドはいませんが、この列車に乗ることが、まるごと観光ツアーになっているわけです。チケットをゲットして、ホームで待っていると、大きな音をさせて列車がやってきました。
なんと今ではとてもめずらしい蒸気機関車。サトウキビのイラストつきー!!
か、かっこいい!!
列車が停車すると、観光客が我先にと乗り込みます。撮り鉄さんのように写真撮影に必死になっていた私もあわてて乗車。内部も、木製のベンチでとてもレトロー。素敵ー。
ほんで満席ー!! 大人気ですこの列車!!
最初、客車は2両だったのですが、座れないお客さんがいらっしゃったので、もう1両連結させて全員が座れるようにしてくれていました。客車を1つ引っ張て来ているところ。
キューバらしからぬフレキシブルさにびっくり。
9:30汽車が出発
車内にはバーもあります。
マラカスや葉巻などのお土産も売っていますよ。
途中でギターを弾きながら歌ってくれおじさんも現れました。お気持ちでチップをー。
馬に乗った地元の方。
バナナ農園。
サトウキビ農園。
牛。
のどかぁぁぁあ!!!!!
なにここ!!! ハバナの人ごみとクラシックカーの出す濃厚な排気ガスに少々げんなりしていた私ですが、ここトリニダーはハバナとは正反対。とてもゆったり時間が流れ、人々もおだやか。
かなりのスローペースで山の中を走る機関車にゆられて、青い空と緑の山々のコントラストが美しい景色を眺めていると、心が洗われるようです。
10:30「マナカ・イスナガ」の町に到着
しかし、ここで降りません。
いかにも観光地なタワーが見えるんですけれども、ここで降りてはいけません。
一部の旅行者さんは降りますが、大半はこのまま列車に乗り、まずは終点の「砂糖工場博物館」を目指します。「マナカ・イスナガ」は、あとで折り返して戻ってきますからご安心ください。
このあたりはもうビニャーレス渓谷です。素朴な地元の方々の生活を車窓から垣間見ることができます。
そうして30分弱で見えてくるのがこちら。
11:00砂糖工場博物館到着(終点)
かつてはここでたくさんの奴隷たちが働き、キューバの産業を支えていたであろう製糖工場の痕。廃墟萌えの方にはたまらないと思われる大変かっこいい廃墟を拝むことが駅ます。
煙突は立派に生き残っています。
サトウキビのなにをどうする施設なのかさっぱりわかりませんが、迫力満点。
屋内の展示品もあります。
顕微鏡。
当時の製品カタログと思われます。
工場がまだ生きていたころの写真も。
もうちょっと展示方法を工夫すると、もっといいかもしれません。
そもそもこの地には、最初からキューバに住んでいる先住民族が暮らしていました。しかし、ヨーロッパ入植者が持ちこんだ病気と、奴隷としての粗悪な扱いによる使い捨てのせいで実質的に死滅。そして、スペイン人のプランテーション経営者たちは、サトウキビ畑や工場で働かせるために、アフリカから奴隷を連れてくるようになったのです。
さらっと書きましたが、これってとんでもなく恐ろしいことですよね。
先住民全滅させて、足りなくなったからアフリカから連れてくるとか。
家畜やモノじゃないんだから…。日中の気温30度越え。日差しもかなりきついです。当然冷房設備なんてないであろうお砂糖工場やサトウキビ畑で働かされていた奴隷の人々は、さぞ苦しいかっただろうなあ…。
絶頂期にはこの渓谷だけで50以上のお砂糖工場があり、工場と周辺のサトウキビプランテーショーンで働かされていた奴隷の人数は約3万人を超えるそう。
3 万 人 !!!!
今はこうして博物館として観光客を呼び寄せるための建物となっておりますが、このかっこいい廃墟も、歴史を知ると、なんだかおどろおどろしく見えてきました。
ここには小さなキオスクみたいなものがありまして、サトウキビジュースを飲むことができます。
すごく甘いかと思ったら、レモンをたくさん入れてくれるので、適度にさっぱりでおいしかったです。1CUC(約110円)。
実はこのジュース、すぐ隣でおじさんたちがしぼってくれるんです。
こんな機械。
製糖博物館を見学するための滞在時間は1時間。時間が終わるとみなさん列車に戻ってきます。列車は1日1本なので、おいていかれるとたぶん困ったことになると思いますのでご注意ください。
駅の近くにあった昔の機関車。
12:00 出発
列車はここで折り返し、先ほど停車した「マナカ イスナガ」という村に引き返します。こんどはここで1時間の停車。
トリニダーと言えば伝統的なファゴッティング刺繍
12:30 マナカ イスナガ到着
列車を降りるとすぐに、たくさんの白い布が目に飛び込んできます。
青い空にくっきりと映える白が爽やかー!!
これは、この地方の伝統手工芸品「ファゴッティング」。
もともとはヨーロッパの貴族が身に着けていたレース装飾のことです。植民地時代に持ち込まれた技術が独自の発展を見せできあがったのがトリニダーのファゴッティング。平織の布から、一本一本丁寧に糸を引き抜いて装飾を作っている手法はとても時間と手間がかかります。
白を基調にした単色、もしくは2色のデザインが多いので、メキシコの刺繍に比べると、すごくシンプルに見えますが、息のむほどに繊細なディテールは手作り好きにはたまりません。
テーブルクロスやベッドカバーとしても使える大きなサイズのものから、コースターやランチョンマットサイズの小さなものまで種類も豊富。あとは子供服なんかもかわいいんですねえ。トリニダーの町中のお土産屋さんでも売っていはいるのですが、マナカ イスナガのほうがたくさんのアイテムが揃うので買い物する楽しみがあります。
私が購入したのは、白いノースリーブ。お店の女性の手作りだそうです。
フロント部分に精緻なファゴッティング刺繍が入った、シンプルだけどかわいい逸品。
拡大するとこうなります。
繊細でしょうー!! すごくお気に入りです。
建物の由来とその立地が不釣り合いすぎる「イスナガの塔」
マナカ イスナガには大きな大きなタワーがあります。ピサの斜塔と同じく、少し傾いている気がするこちらのタワー。「イスナガの塔」もしくは「イスナーガの塔」と呼ばれています。
周囲で高い建物って言ったらこれしかないので、とても目立ちます。入場料は1CUC(約110円)。
塔の一番上まで階段で登るんですけれども、ここからの景色がすごーくいい!! まわりはぜーーーんぶ緑色。
遠くにさきほど訪れた砂糖工場博物館も見えます。煙突、わかりますか?
こちらが歩いてきた方角。ファゴッティングのお店がたくさん見えます。
東西南北、4連発。
こんなお部屋から撮りました。
このタワーは何にために作られたかといいますと、
えー、監視塔です。
高さ45 m の監視塔。1830年から1835年にかけて、農園主アレホ・イスナーガ(Alejo Iznaga)が建てさせたこちらの塔は、サトウキビ畑で働く奴隷たちを監視するのに使われていたそうです。さらに、一時はキューバで最も高い建造物であったこの塔は、
奴隷たちや製糖業界にイスナーガ家の権勢を見せ付ける象徴
でもあったそう。かつて塔にあった大きな鐘は奴隷たちに一日の労働の終わりを告げるために鳴らされていたそうで、今は、塔の下に置いてあります。
これまたなんか負の遺産のような塔ですけども、見た目の美しさと周囲の大自然、そしてまわりののどかな雰囲気のせいで、不思議とそれを感じさせないんですよね。このへんキューバっぽいなあ、なんて思うんですけれども、なんだかすごく気持ちの持っていき方に困るのです。
ここでの1時間が終わると再び電車に戻ります。列車には、運転手さんがスタンバイ。
あまりにかっこいい蒸気機関車だったので、運転席ものぞかせてもらいました。
さらに、写真まで撮ってもらいました。
この列車、好きだなー。かっこいいなー。
13:30 マナカ イスナガ出発
ふたたび緑の中を列車はのんびり走り抜けます。
14:30 トリニダー到着
さあ、いかがでしたでしょうか? トリニダーから観光列車で行く砂糖工場博物館ツアー、すごくおすすめです。もっと無機質なやつかと思いきや、それなりに考えられていて、とても興味深く、楽しかったです。トリニダー滞在が1日しかない方でも、14:30には戻ってきますから、そこから町の観光も十分できると思います。
それでは本日はこれにて終了。最後までお付き合いくださってありがとうございました。
行こうと思ってた観光列車の情報、ありがたいです。
1日1本なのでタイムテーブル、観光仕方(終点まで先に行く)チケット代.各停車駅での見どころ、解説、とても助かります。
ファゴッティング、買いたいと思ってたので、興味深々!購入されたものも素敵なデザインですね。
私も一期一会でお気に入りになるような
デザイン見つけられるかな。