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2016-09-06

エチオピア(15)ハマル族の赤髪と赤い血。想像を絶する成人儀礼の傷跡

エチオピア_ハマル族_ウィッピング

現在世界一周的なことをやっている私は、エチオピア南部に暮らす少数民族さんたちに会いにやってきております。本日の投稿は、昨日の続きとなります。早朝、エチオピア南部の「アルバミンチ」という町を出発し、どうにかこうにかやってきた「トゥルミ」。ここで出会ったのは、ハマル族の人々。

【現在地】トゥルミ(エチオピア)

Turmi(Ethiopia)

【気温】32度(昼)

【天気】晴れ

【通貨】1ビル(ブル)=約5円

潜入!! ハマル族の月曜マーケット

トゥルミは、ハマル族という少数民族の方々が暮らす村に近く、週に一度、月曜日に行われるマーケットには、たくさんのハマル族の人々が集まります。

ハマル族_エチオピア

どこを見てもハマル族!! ちなみに、若い女性は短い髪。

ハマル族_エチオピア

そこそこの年齢の女性は、ボブくらいの長さだそうです。私くらいになるとたぶんボブ。

ハマル族_エチオピア

念願のハマル族さんとお会いするために、ぐいぐいと南下してきましたので、まずはマーケットの様子を。

ハマル族_エチオピア

とてもカラフル。

ハマル族_エチオピア

ここでは、観光客による、ハマル族撮影が当たり前になっていて、遠くから風景を撮影するように撮る分には無料ですが、1人2人とターゲットを決めて撮影させていただく場合には、撮影対象者1人につき5ビル(25円)のチップが必要です。

これはまあしょうがないですね。私だって自分の写真を撮られて勝手にネットにアップされたら嫌ですもん。

ここでは、お二人の女性にチップをお支払いし、写真を撮らせていただきました。

ハマル族_エチオピア

ハマル族の女性は、ギャザーを寄せたひらひらフリルのヤギ革のスカートをはいているのが特徴。非常にデザイン性が高く、ビーズの装飾がアクセントになっています。

ハマル族_エチオピア

上半身は、ネックレスのようなパーツを首にかけて、ヤギ革の部分を前に垂らすタイプのトップスを着用。マーケットでも販売されておりまして、大きいサイズのものからコンパクトなものまで、様々なデザインが揃っていました。

ハマル族_エチオピア

彼女たちの首や腕にはカラフルなアクセサリーがびっしり。これもまたハマル族女性の大きな特徴です。

ハマル族_エチオピア

左の女性が手に持っていらっしゃるのは、バッグ。カラバシというヘチマのような植物を乾燥させ、ペイントしたりビーズや貝で飾り付けたり。とてもかわいらしい。こちらがバッグ売り場です。

ハマル族_エチオピア

たくさん並べるとさらにキュートですねえ。

こちらは、既婚女性が身に着けるネックレス。重たそう。

ハマル族_エチオピア

ハマル族は、一夫多妻制を採用しておりまして、1番目の嫁、2番目の嫁、なんていうのをネックレスの数とデザインで見分けられるようになっています。「私はセカンドよ」とみんなに分かるいでたちで生活するのは果たしてどのような心境なのか。私にはよくわかりません。

ハマル族の方々は、村で作ったコーヒー豆や嗅ぎタバコ、ハチミツなどを販売していらっしゃいます。

ハマル族_エチオピア

ハマル族_エチオピア

あ、一応男性のファッションも。

ハマル族_エチオピア

ミニスカート着用で、頭にはヘッドアクセサリー。しかし最も大きな特徴は、その手に持った木製のツール。

ハマル族_エチオピア_ボルコット

これは、ボルコットという道具で、なんと、ポータブルなイス兼マクラ。

ハマル族の男性はもれなく全員このボルコットを携帯なさっていて、疲れたらこれに腰掛け、お昼寝の際や夜はこれをマクラにして眠るそうです。とてもユニークな文化。もうちょっとコンフォータブルな素材であれば、私も欲しいなあと思いました。

必見!! ハマル族の成人儀礼「ブルジャンプ」

マーケットを一通り見終わると、本日のもう1つの大切なイベント「ブルジャンプ」を見に行くための手段を探さなくてはなりません。

「ブルジャンプ」と言うのは、ハマル族をはじめ、オモバレー周辺の幾つかの民族が行う成人儀礼のこと。簡単に言うと、そろそろ大人かなあという男性がブル(雄牛)の上をジャンプするんですねぇ。

マーケット周辺をうろうろしていると、1人の男性に話しかけられます。彼の名はアスマモさん。アルバミンチ在住の自称ガイドさん。よくある「いつか自分の旅行会社を開きたいんだ」という彼は、第一声、なぜか日本語で

「あざーす!! 」と言ってきました。あまりの発音の良さにびっくりします。

ブルジャンプに行くためにはどうせガイドを雇わなければならないし、せっかくの貴重なイベントなのでしっかり説明を聞いたり質問したりしたい。

アスマモさんは、日本語に関しては「あざーす」が1番得意な感じですが、英語は聞き取りやすく、話していると、それなりにちゃんとした人なんじゃないかなあ、という印象を受けました。

というわけで、彼にガイドをお願いすることに決定。それではさっそくハマル族の伝統的な成人儀礼「ブルジャンプ」へ行ってみましょう!!

ブルジャンプ入場料金600ビル(約3,000円)。アスマモさんガイド料金+バイクタクシー代往復400ビル(2,000円)。

【ハマル族の婚姻とブルジャンプ】

先ほども書きましたが、ブルジャンプとは、男性が、雄牛の背中の上をジャンプする儀式。これは、ハマル族のウェディングセレモニーの一環です。

結婚を前提にお付き合いしている男女。それは、ラブであったり、ご両親が決めた許嫁であったり、パートナーの決め方は様々あるそうですが。交際期間中はまだそれぞれの家に暮らしています。

そして、しかるべきタイミングがきたらいよいよブルジャンプ。立派な大人であること、勇敢であることなどを身をもって証明するための大切な儀式。

男性がブルジャンプをすることで、正式な結婚の運びとなるわけです。

だいたい何歳くらいでブルジャンプをするのかというと、これが、はっきりとはわからないんですねえ。なぜなら、ハマル族には年齢をカウントする習慣がないから。ですから、ブルジャンプのタイミングはご両親や村の偉い人たちのさじ加減で決まります。

とはいえ、ブルジャンプの翌日からはいじゃあ一緒に暮らしましょうとなるわけではなく、まず花嫁は約3ヶ月、旦那のご両親宅で生活します。この期間は、一切の外出が許されず、ひたすら料理やお裁縫などの家事一式を叩き込まれる期間。

つまり、軟禁生活兼花嫁修業です。

これが終わると晴れて夫婦は2人一緒に暮らすことを許され、藁でできた伝統的な住居を構え暮らし始めます。

【もう1つの大切な儀式ウィッピング】

ブルジャンプの主役は、ジャンパーである男性ですが、それと同時に行われる女性たちによる「ウィッピング(Whipping)」もまた、非常に大切な儀式。ウィッピングとは、鞭(ムチ)打ちのこと。女性たちがムチで打たれるのです。

男性が牛を跳び、女性たちがムチで打たれる。

よく意味がわからないと思います。というわけで、本日私が見たこの儀式の様子を順を追ってご紹介します。

エチオピアを訪れる前に多少は情報収集し、この儀式について学んでいた私は、正直、ブルジャンプを見たいと思う反面、少し憂鬱さも感じていました。ムチで打たれる女性たちを、喜んで見たい見たいと思う人はそう多くはないはずです。

15:50 最初の会場、川沿いの一角に到着。本日のジャンパーの親族たちが集まっているところです。

楽しげに談笑している女性たちの背中。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

いきなり目にする衝撃的な光景に絶句。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

なめらかで美しい女性たちの背中には、真っ赤な血のにじむ痛々しい傷跡が。これこそが、ウィッピングによるもの。

セレモニーの第一部が終了し、ここで休憩していらっしゃるようです。この時点ですでに私の頭の中はハテナハテナハテナでいっぱい。なぜこんなに傷だらけに…。

16時を過ぎた頃、いよいよブルジャンプの会場へと向かいます。

この日は、4WD車でいらっしゃったほかの旅行者もかなりいて、彼らはここで一旦車にもどり、直接ブルジャンプの会場に行くそうです。けっこう距離があるんですねえ。

しかし私とガイドのアスマモさんは、一斉に歩き出すハマル族の女性たちの後について、一緒に徒歩で向かうことにします。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

静かな森の中に、女性たちの足についた鈴の音が響き渡り、日常とは切り離された不思議な空間へと誘っているようです。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

でこぼことした岩山を、まったくペースを緩めることなく進んで行く女性たち。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

私も必死で追いかけます。痛々しい背中の傷をぼんやりと眺めながら。

この先に待っているのは、本日のメインイベントであるブルジャンプと、本格的なウィッピング。足取りは、軽くはない。

歩き続けること、50分、ブルジャンプの会場に到着。遠かった。

唐突に始まる壮絶な「ウィッピング」という儀式

ブルジャンプの会場は、ちょっとした広場になっていて、すでにたくさんのハマル族の人々が集まっていました。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

女性たちが手に持っているのは、自分を打ってもらうための木の枝で作った鞭。

しばらくすると、どこからともなく、頭に羽根の飾りを付けたなんだか立派な格好をした男性たちが現れました。彼らがウィッパー。ムチを打つ担当の人。ジャンパーの住む村の近隣の村の偉い人たちがこの役割を担います。

ウィッピング開始の合図なんてものはないのですが、突然たくさんの女性たちが会場の中心に集まり、次々とウィッパーに自分の鞭を手渡します。

そうしてはじまりました。ウィッピング。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

女性たちが、我が我がとウィッパーの前に躍り出て、ムチを差し出し、そして自らの身体も差し出して、激しいムチを受けています。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

ウィッパーのふるうムチは、もちろん全力で、容赦なく彼女たちの背中には大きな傷をつけてゆきます。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

痛いの苦手な方は動画とばしてください。

痛いよう痛いよう。いや、私自身は全く痛くはないのですが、何度も繰り返し同じような場所を打たれる女性たちは、ものすごく痛いはず。

エチオピア_ハマル族_ウィッピング

それなのに、嬉々としてウィッパーのもとに集まり、ときには誰が先かで小競り合いも起こります。木の枝のムチは一回きりの使い捨て。同じものを使い回すことはしませんので、会場のそこかしこに木の枝が散乱しています。

女性たちはウィッピングの合間に、輪になってジャンプをしながら踊り、大きな声で歌います。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

これを繰り返すこと約30分。狂気と言ってしまってもいいような、信じられない習慣「ウィッピング」が終了。

ウィッピングの儀式を終えた女性の背中。

ハマル族_エチオピア_ウィッピング

そもそもなんのためにこんなことをしているかといいますと、すべては本日の主役、ジャンパーのため。

ハマル族は、オモバレーの中でも、ズバ抜けて、女性が強くたくましい民族。家事はもちろんのこと、重い荷物を運んだり、家畜の世話をしたり、重労働&肉体労働はほぼ全て女性が行います。

こうしたことから、女性のフィジカルの強さ=一族の強さ、となるのだそう。

自ら進んでムチに打たれ、それでも平気な顔をしていることで、一族のフィジカルの強さを証明する。それとともに、自身の身体を傷つけてもいいと思うほどのジャンパーへの深い愛情、そして一族の強い絆を示すというのです。

なんとなく、その意味は理解できないこともないのですが、生々しい傷を目の当たりにすると、

なにもそこまで。

と思わざるをえない。とはいえ、彼らにとってはとてもとても大切な、いつまでも守っていくべき伝統儀式。よそ者の私がどうこう言えたことではないのです。

本日のハイライト「ブルジャンプ」開始!!

日没を迎えるころ、いよいよクライマックス、ブルジャンプが始まります。女性たちがムチで打たれていた場所にはたくさんの牛が運び込まれました。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

人々がその周りで歌い、踊ります。たくさんの牛の中から、何かしらの基準で10頭の雄牛が選び出され、一列に並ばされました。ジャンパーは衣服を脱ぎスタンバイ。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

たくさんのハマル族の人々が固唾を飲んで見守ります。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

ウィッピングの傷がまだ乾ききらない女性たちも、じっとジャンパーを見つめています。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

そうして、いよいよスタート。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

ルールはいたってシンプル。10頭の雄牛の背中の上を2.5往復。片道を1とカウントするなら、5回ほど彼は牛の背中の上を駆け抜けなければなりません。もし落ちてしまっても、またそこから始めればよいので問題なし。とにかく、5回、牛の背中を渡るのです。

やったことがないので、これがどれほど大変なことなのか、私にはいまいちわかりませんが、とにかく彼が牛の背を渡ると大歓声がおき、落ちるとザワザワとどよめきます。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

数回の失敗を挟みつつ、見事ブルジャンプ、クリア。

ジャンパーは、これで晴れて一人前。

日本で生まれ育った私には、理解しがたい儀式。だって単純に痛そうだもの。会場にいるみなさん、嬉々として写真を撮っていらっしゃいましたし、地元の方々も「ブルジャンプすげーだろ」みたいなノリではありましたが、私にとっては、これは、なんというか、そう何度も繰り返し見たいものではありませんでした。

ちなみにこのブルジャンプ、クッソ観光客だらけです。

ハマル族_エチオピア_ブルジャンプ

1人の欧米人の方から、私がハマル族の女性たちに近づきすぎて写真に映りこんじゃうから、もうちょっと離れてくれと注意されました。

不定期で開催されると言われているブルジャンプですが、おそらく、トゥルミ村の月曜マーケットに合わせて行うことが多いんじゃないかなあ。

だって、マーケット目当てに観光客がたくさん来ますから、さらにお金を落とすチャンスですもの。彼らにとっては、貴重な現金収入を得る機会。絶対ではないですが、トゥルミでブルジャンプを見たいなら、月曜を狙うとみられる確率が高いと思います。

ハマル族_エチオピア

なんだか今日はとても長い1日でした。投稿も2回にわけちゃいました。

そして、いま私はちょっと疑問に思っています。

私はここにいったい何をしに来たんだろう。

少数民族を見て、写真撮って、お金を払って、はい終わり。これ、わざわざここまで来た意味あんのかな。

私はこれで満足しているのか。

答えは否。念願のハマル族に会い、そしてブルジャンプ、ウィッピングを見ることができたのはとても貴重な経験だと思いますが、これは私の旅のスタイルではないんじゃないかなあ。

ブルジャンプの会場から、トゥルミの町に戻り、ガイドのアスマモさんと晩御飯。メニューは今日もインジェラ。

「ハマル族はどうだった? ブルジャンプ見られてよかっただろ? 」

「ええまあ」

俺はオモバレーのことは何でも知ってる。俺は友達がたくさんいる。俺は6種類の民族の言葉を話せる。将来は旅行会社を開きたいから今は格安でガイドをしている。

“こういうこと言ってくる人は信用してはいけません”の代表格みたいなことを繰り返すアスマモさんに、ダメもとで相談してみます。

「このあたりに少数民族がたくさん暮らしていて、みなさんそれぞれかなり独自の文化をお持ちというのは分かりました。でも、普段の生活や、彼らがどんなことを思い暮らしているかは、まだよくわからないままです。

わざわざ日本から遠く離れたこんなところまで来たからには、ここに来なければ知りえなかったこと、体験できなかったことに、私はチャレンジしたい。4WD車に乗ってチャッと行ってパッと写真撮ってチップ払って帰ってくるだけの旅にはしたくないのです。

もっと少数民族の方々のリアルな生活を見たいし、ただの撮影者と被写体という関係ではなく、もうちょっとちゃんと接してみたい」

このような私の言葉を彼がどれだけ理解したか分かりませんが、彼から驚きの提案がありました。

「明日、ハマル族の村に泊まることができるよう、アレンジするよ」

マジで!?

私にとってはかなりありがたい体験です。

もちろんタダではないです。明日の昼間、ハマル族のみなさんが集まるディメカという町を案内してもらい、午後からディメカの近くにあるハマル族の村に行き一泊。アスマモさんにガイド料、コーディネート料、彼の生活費一式として35ドル(3,500円)。村の入村料200ビル(1,000円)は別途。

こうして、明日のガイドをお願いし、ホテルに戻り21時就寝。ドキドキわくわくのアドベンチャーに備え、しっかり睡眠をとっておかなければなりません。それでは本日も最後までお読みくださってありがとうございました。

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コメント2件

  • ASAMI より:

    mayumiさんはじめまして。
    ブログ毎日拝見してます。初めから読んでようやく追いつきました!

    情報がぎっしりで写真もたっぷりで、ウェーイ系は少なく、笑
    勝手ながらお考えや性格に共通点を見出しつつ、そのせいか自分も旅についていっているような感覚で読ませていただいてます。
    本当に面白いです!わくわくしながら読んでます。ブログ記事というよりもう冒険譚です笑

    これからも楽しみにしてます。
    どうかこれからもお気をつけて旅を楽しまれますようお祈りしてます。

    • mayumi mayumi より:

      ASAMIさん
      大変ありがたいコメントをいただきまして、なんと言っていいやら!!
      ウェーイが得意でないばかりか、あまりたくさんの人と接するのも苦手でして、ここまでろくにウェーイをする機会もなく、もうすぐ最後の国エジプトです笑
      現在いるエチオピアは、自分でも何が起こるか全然予想もつかなくってかなりわくわくしています。
      それに共感していただけるなんて、すごくうれしいです。
      安全・健康に気を付けて、旅をしていこうと思います!!
      またぜひブログに遊びに来てくださいね~!!

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