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2016-01-24

バックパッカーにとって大切なことはだいたい『銀河鉄道999』に描いてある

銀河鉄道999

バックパッカーの”バイブル”と言われる『深夜特急』(沢木耕太郎・著)は読んだことがありません。私の中でのバイブルは『銀河鉄道999』なんだよな~。1977年から1981年にかけて連載されていた松本零士・作の漫画です。最初に読んだのは小学生の頃。そこから”旅”といえば『銀河鉄道999』を思い浮かべてしまうのですが、当時の私にとっては、まあ普通のSF冒険漫画。鉄郎とメーテルがいろいろな星を冒険していろいろな人に会っておもしろいな~、ぐらいの印象でした。

大人になって読み返そうと思ったとき、実は最終話どうなったか忘れてちゃってましたもん。個性的な登場人物や行く先々での強烈なエピソードのほうがインパクトが強かったんですね。でも、今読むと、「沁みるな~」「ぐっとくるな~」と感じ入るところがありすぎてびっくりします。子供のころと感じ方が全然違う。ものすごいえぐられるし泣きそうになる。
私の大好きな童話、モーリス・メーテルリンクの『青い鳥』をヒントに執筆されたというだけあって、「本当に大切なものは実は自分のすぐ近くにある」っていうメッセージがいたるところにちりばめられているような気がしたリ。それはまあ読者の感じ方、読み取り方次第ではありますが。

そもそも『銀河鉄道999』がどういう話かっていうと、まあ、地球でいろいろあった星野鉄郎という少年が、謎多き美しい女性メーテルといっしょに「機械の体をタダでくれる星」まで行く旅の物語。ざっくりですみません。詳しく知りたい人は漫画読んでください。とにかく、長い長い旅のお話しなので、旅好きの方はそれだけで親近感を覚えると思います。なので、バックパッカー(またはその予備軍)目線で読むとまた新たに見えてくるものがありまして、いろいろと大切なことが描かれているわけですよ。実用的なところから気の持ちようまで。ということで、本日は、私が『銀河鉄道999』から学んだ「バックパッカーにとって大切なこと」をご紹介します(仕事を辞めて旅に出ようかなとか思ってる社会人バックパッカー予備軍にとくにおすすめしたい)。


■荷物は少ないほうがいい

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出典:『銀河鉄道999』第1巻・第1話「出発のバラード」46ページ/松本零士作(小学館)

「おかしいな…大旅行に出るってのに荷物は体につけているものだけだ。」鉄郎
「ほんとうのプロの旅人はそれでいいのよ。」メーテル

鉄郎はバックパックすら持っていないので、これは極論ですが、フットワークを軽くするためには、荷物は少ないほうが断然いいな。「旅人」と書いて「トラベラー」と読ませるあたり、なんかメーテルおしゃれ。

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■ごはんは食べられるときに食べておく

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第4巻・第6話「次元航海惑星」188ページ/松本零士作(小学館)

「まず食べなさい。それからが男の戦いよ。」メーテル

スリーナインが襲撃された直後にメーテルが言い放ったセリフです。けっこう危機的状況なのに、いたって冷静なメーテル。このあとワインで乾杯までしちゃいますからね。かっこいいです。長時間の移動が重なると、次にいつ食べられるか分からないということも多々あります。いろいろなことに動じず、食べられるときにガッツリしっかり食べておけば、生き残る可能性が高まるということです。メーテルの目が怖い。残さず食べます。

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■パスポートは肌身離さず

出典:『銀河鉄道999』第3巻・第4話「泥のメーテル」122ページ/松本零士作(小学館)

出典:『銀河鉄道999』第3巻・第4話「泥のメーテル」122ページ/松本零士作(小学館)

「パスは身につけていなくちゃだめよ。ここでは、これが一番価値のあるものだから……パンツの中へでも入れておきなさい」メーテル

バックパッカーにとっての”大切なパス”は銀河鉄道999の定期券ではなく、パスポートです。これ無くすと、大使館に行ったりいろいろめんどうなことになりますので、パンツの中はあれですけど、セキュリティーポーチなんかに入れて肌身離さず身につけておいたほうがよいかと。作中、びっくりするくらい何度もパスを盗られますが、実は銀河鉄道999に乗る前にすでに1回盗られてます。

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第1巻・第1話「出発のバラード」31ページ/松本零士作(小学館)

さすがにメーテルも「えーっ!! 」って言いますよ。パスあげたばっかだから。いきなりはないよ。しっかり管理しましょう。

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■盗難には最大限注意する

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第1巻・第10話「大四畳半惑星の幻想」239ページ/松本零士作(小学館)

「パスを盗まれたのよ、定期を……ねてるあいだに! お金といっしょに!! 」メーテル
「しまった!! ラーメンくってしあわせな星だと思ったんで気がゆるんで……」鉄郎

この前のくだりでね、ラーメンがめちゃめちゃおいしかったんですよ。で、ラーメンお腹いっぱい食べて、セントラルパーク的な感じでそこらへんの芝生で寝っ転がって爆睡しちゃってた鉄郎とメーテル。案の定これですよ。作中で、この2人は、数え切れないほど盗難にあいます。最終的に盗られたものは返ってきますが、現実にはそんな可能性は皆無。旅行ブログとか読んでると、多くのバックパッカーさんたちもけっこう盗難の憂き目にあっているようですし。どんなにごはんがおいしくても、気のゆるみは危険です。「自分は大丈夫」なんて思わずに、荷物の管理は厳重に。

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■多少風呂に入らなくても死なない

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出典:『銀河鉄道999』第5巻・第2話「トレーダー分岐点」52ページ/松本零士作(小学館)

「死なない死なない、フロへ入らなくても死なない。」鉄郎

そうなんですよ。一週間や10日くらいは風呂なんで入らなくても大丈夫です。私も鉄郎と張るぐらい風呂がキライ。いやもう不潔でけっこう。今はね、会社とか行かなきゃんでしぶしぶ毎日風呂に入ってますが、入んなくていいよってなったら、「あ、そうですか」ってなるよ。

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第5巻・第2話「トレーダー分岐点」53ページ/松本零士作(小学館)

鉄郎さん、分かります。つまり、風呂とかシャワーは適度に入れればいいです。毎日入れなくても、私どうってことないです。


ここからは具体的な旅のノウハウではないんですけど、気の持ちようというか。自分的にグッと来ているお話しです。

■インターネットや本にかかれている情報がすべてじゃない

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出典:『銀河鉄道999』第1巻・第9話「水の国のベートーベン」213ページ/松本零士作(小学館)

「科学者の言うことだけが宇宙の真理の全部じゃないわ、鉄郎! いろいろなものがこの世にはある、自分の目で見たものは…それが幻覚でなければ信じることね。」メーテル

メーテルが変なサングラスかけていいこと言ってます。今は、いろいろな情報がインターネットで見られるし、Google先生に聞けばある程度のことは教えてもらえます。NAVERまとめとかRETRIPとかでも”死ぬまでに行きたいなんちゃら”とか”自分を変えるどこそこ”とかやってるじゃないですか。なんとなーく薄っぺらいように感じちゃうんだよねーあれ。ああいうまとめサイトじゃ満足できないから実際に行ってみたいんですよ。一番大切なことは、やっぱり自分の目で見て感じること。そのためにわざわざ旅に出るんだから!

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■警戒しすぎてやたら疑いすぎるのはよくないかもね

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第1巻・第5話「これからの星」189ページ/松本零士作(小学館)

「鉄郎!! ここの人たちを疑っちゃいけないわ!! 」メーテル

これバックパッカーあるあるなんじゃないですかね。知らない人が異常に親切でめっちゃ警戒してたら最後までホントにいい人で、なんか疑っちゃってごめん、みたいな申し訳ない気持ちになるやつ。「これからの星」はそういう場所です。ここで鉄郎とメーテルはまたパスと荷物を無くします。突発性台風に襲われて旅館ごと木っ端みじんに吹き飛ばされてしまって、どこに行ってしまったかわからなくなってしまったんです。途方に暮れる鉄郎の心をよぎる「旅館の父娘があやしいんじゃないか」という考え。そんな鉄郎をメーテルが諭します。けっきょく、親切な人々が散り散りになった荷物を探して届けてくれるっていう、たぶんあまり多くない、読後に爽快な気分になる後味の良いエピソードです。旅の道中、もちろん嘘つきも、自分をだまそうとしてくる人もいます。だから、警戒を怠ってはいけないのです。が、たまにこんなこともあります。そのへんの見極めって、かなり難しいと思うんで、私もしっかり見極められるようになりたいです。

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■時間を食べて耐え抜くのもまた才能

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第7巻・第1話「C62の反乱」36ページ/松本零士作(小学館)

「終わりがないかもしれない”時間”の流れる場所がこの大宇宙だ。そこで自分の信念を貫けるのは、時間を食べて耐えぬく才能のある者だけだ」

『銀河鉄道999』の中で私の記憶にもっとも印象深く残っているのがこの「C62の反乱」というエピソード。突然原因不明で停車してしまったスリーナイン。いくら待っても復旧しない。そうこうしているうちに今度は、先頭の機関車だけが、客室車両だけを置いてどこかに行ってしまう。何もない宇宙空間に置き去りにされてしまうんです。私だったらテンパります。完全にパニックですよね。「なんでなんで!? いつ復旧するの!? え、無理無理。どうしよう」ってなるね。

でも鉄郎は動じないんです。全然。本でドミノしたり歌ったり寝たり。これを仕掛けた人たちのほうが若干動揺しています。

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第7巻・第1話「C62の反乱」25ページ/松本零士作(小学館)

「あれからもう58時間空間に停止している…乗客の様子はどうだ? 」
「別に異常はありません、平然としています。」
「平然と? ジタバタするようすもないわけか? 」
「そうです、とくに星野鉄郎という少年は時間を食う方法を心得ているようでして……」

とくにインパクトのあるシーンとかがあるわけではないのですが、この”時間を食う方法”というやつが、なんか忘れられず。旅って数え切れないほど移動があって、僻地に行けば行くほど”定刻発車”みたいな概念が無くなってくるじゃないですか。車がいっぱいになったら出発、とかね。あと、格安で買ったら乗り継ぎ時間が異常に長かった飛行機のチケットとか。現代人もうスマホとかないと時間つぶせないんじゃないかね。そんなときに試されるのが”時間を食べて耐えぬく才能”なんでしょうね。

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第7巻・第1話「C62の反乱」34ページ/松本零士作(小学館)

結局列車は74時間遅れて発車するんですけど、「なぜ停車してしまったのか」「いつ発車するのか」が全く分からない状況の中で、鉄郎はあせることもなく、イライラすることもなく、いとも簡単にこの「時間を食べるテスト」に合格してしまった。なんか、かっこいいな、と。さあ私は時間を食べるテスト、合格できるかな~。

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■男は簡単には死なない。女もね

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第1巻・第10話「大四畳半惑星の幻想」256ページ/松本零士作(小学館)

「バカタレめ! 男はかんたんにゃ死なんのど、わかるか? 苦労の2か月や3か月、断食の1週間や2週間……どうということはないんど、わかるか!?」

旅中に危ないところに行ったり無謀なことをしてもまあ死なないから大丈夫でしょ! とかいう意味ではなく。永遠の命を得るために機械の体が欲しいという鉄郎。大四畳半惑星に住む男のこの言葉にハッとします。機械の体じゃなくても、人間はたくましく生きていける! 「いい歳して無職になって旅に出て、そのあとどうすんの? 」そんな不安に対して、背中を押す言葉と捉えてください。旅行の後のこと、正直どうなるか分からないです。でも、まあ、多少苦労はするかもしれないけど、男は簡単には死にません。もちろん女も。ある程度、何か起こってもどうということはない! って思ってないと、なかなか一歩を踏み出せないじゃないですか。

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■自分にとって一番大事で正しいこと

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第4巻・第5話「賽の河原の開拓者」174ページ/松本零士作(小学館)

「人が一生懸命やっていることを笑うなんて、だれにもできないわね。やってる人たちにとっては、それが一番大事な正しいことなんだものね……」メーテル

自分には理解できないけど相手にとっては大切なこと、っていうのはありますからね。お互いにありますから。だから可能な限り尊重して、理解できなかったとしても、否定してはいけないな、と。自分の常識=相手の常識ではないんですよ。なのにそれが分からない人のなんと多いこと。小さくて狭い視野でものごとを見ないで、もっと大きく広い目で見渡せば、もっといろんなことをありのまま受け入れられるようになるんじゃないかと。

ここまでいろいろ紹介してきてなんですが、このあと、全力で最終話のネタバレが始まります。ここまで読んで、『銀河鉄道999』読んでみようかなと思った方は、一旦ここでこのブログを離れて、読み終わったらまた戻ってきてください。(今ならkindleで1~3巻期間限定無料やってる)

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■悲報。鉄郎氏、”機械の体”が実はネジだったと知らされる

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第14巻・第5話「終着駅」211ページ/松本零士作(小学館)

「ネジですネジの型をした機械の体!! 」

長い長い長い旅の終着駅。惑星大アンドロメダで突きつけられた現実。それは、機械の体っていうのが実は”ネジ”だったという残酷なものでした。何度も死線を潜り抜けて、度重なる苦労の末にたどりついた結末がこれか、と。さすがの鉄郎も「これじゃない感」のハンパなさに動揺を隠しきれません。なんならちょっと泣いてます。

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第14巻・第5話「終着駅」212ページ/松本零士作(小学館)

「ネジの体なんて!! 冗談じゃないや!! 」鉄郎

そりゃあそうなりますよ。いくらタダもらえるっつったて、ネジはない。自身で強く望んだ機械の体です。死なないし、傷つかない、ご飯も食べなくて済むし、暑さ寒さも感じない。でも、ネジ。惑星大アンドロメダの部品となり永遠に星を支える、ネジ。機械の体っちゃー機械の体だけど、どう考えてもネジは嫌だ。

このあと、なんやかんやで物語はクライマックスへと進みます。鉄郎とメーテルがどうなるか気になる人は、漫画買って読んでください。

最終話を読んで思うことは、大きなものの一部に組み込まれてしまうっていうのは、やっぱりなんか怖いな~、と。惑星の一部とかじゃなくても、会社やら組織やらなんかいろいろあるじゃないですか。そこがどんなに安心安全な場所でもなんか嫌だ。個人の意思とか個性とか必要なくて、統一感とか均一性とかが重視される。なぜなら、ネジだから。

けっこう序盤に、すでに鉄郎はこのように言っています。

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出典:『銀河鉄道999』第3巻・第2話「重力の底の墓場」73ページ/松本零士作(小学館)

「機械の体をもらうことが自由を失うことになるのなら……ぼくは機械の体なんていらない。いつかきっと自分の力で体を手に入れてみせるよ。」鉄郎

そうだぞ、鉄郎。よく言った。だからまあ、誰しもネジになるのはイヤなんですよ。ここまで読んで、鉄郎と自分とを重ね合わせて共感できちゃう人、けっこう末期だと思います。もう仕事辞めてバックパッカーになったほうがいいんじゃないですかね。ちなみに、この「機械の体」を「社畜の魂」とかに置き換えてみてください。あと下のコマも。

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第1巻・第5話「大盗賊アンタレス」134ページ/松本零士作(小学館)

「でも、鉄郎……あなたが機械の体をもらったら、機械の体になったら…」
「眠る必要もなくなるわ。眠る楽しみも、夢を見る楽しみもなくなる…そして……そのまま永久に生きられる……」メーテル

あ、なんか笑えない。メーテル、目が悲しそうすぎてやばい。


でもね、『銀河鉄道999』にはこんなシーンもあるんですよ。

銀河鉄道999

銀河鉄道999

出典:『銀河鉄道999』第1巻・第10話「大四畳半惑星の幻想」259、260ページ/松本零士作(小学館)

「ここで仕事がうまくいかないからって……にげだしてみても結局なんにもならないと思ったから……ここでできないことはよそでもできない……」
「よくわからないけど、ぼくはぼくの目的のためにさいごまでがんばるべきだと……そのために男に生まれて来たのだと思って…それで……」

2人のパスを盗んだ少年が、自ら返しにくるシーン。言ってることがイケメンすぎて、罪を問う気にならないですね。この「大四畳半惑星」はとても魅力的な住人たちが暮らす星で、私はとても好きです。今の場所でまだやれる可能性があるなら、そこでもう少しがんばってみるのも手だと。仕事を辞める前に今一度、自分に問いかけてみましょう。「それは逃げじゃないのか? 」「ほんとうにそれでいいのか? 」と。後悔先に立たずとはよくいったもので、こればっかりは誰にも分からないんですけどね。ただ、まあ30代も半ばに差し掛かってくるとこの辺の選択が重い。決断にも時間がかかるんですよ。


最後に、「メーテルはデフォルトでは付いてきません」。大切なことなのでもう一度言います。「メーテルは、付いてきません」。これからバックパッカーやろうかなと思っている方、旅のパートナーは自分でなんとかするしかないんでね、そこはがんばってください。

ちなみに、今kindleなら1~3巻まで期間限定で無料になってますよ。

これ聴きながら、ぜひ~

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