エチオピア(16)ハマル族村滞在。ヤギを解体し牛皮の上で寝るワイルドライフ
現在、エチオピア南部オモバレーにて、様々な少数民族に会いに行く旅をしております。昨日は、トゥルミという村に滞在し、ハマル族という民族のマーケットを見学。そのあと彼らの伝統的な成人儀礼兼ウエディングセレモニー「ブルジャンプ」「ウィッピング」を見に行きました。詳細は昨日の投稿をどうぞ。
【現在地】トゥルミ(エチオピア)
Turmi(Ethiopia)
【気温】32度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1ビル(ブル)=約5円
本日はハマル族マーケットで出会った自称ガイドのアスマモさんという人の提案で、ハマル族の村に行き、ホームステイをさせていただく運びとなりました。昨日の投稿はこちらです。
昨日、非常に貴重な経験をさせていただいたのですが、それでもなんというか、しっくりこなかった私。不完全燃焼な、もやもやした感じが残っておりました。まあ、あれですよ、簡単に言うと、写真撮ってチップ払ってハイ終わりーでは、あまりにつまらないなあ、と。アスマモさんは、そんな私のわがままを聞いてくださったわけですねえ。1日35ドルのガイド兼コーディネート料と引き換えに。
ディメカでローカルビアを初体験!!
ハマル族のお宅に行く前に、まずはディメカ(Dimeka)という、周囲にハマル族の村がたくさんある町を訪問。ガイドのアスマモさんプレゼンツ、ディメカの散策。ディメカの場所はこちら(5.174308 36.548997)。
トゥルミからはバイクタクシーで200ビル(1,000円)。バイクタクシーは高級な乗り物です。
ディメカの町に着くと、いたるところにハマル族の人々が。
普通に毎日ヤギ革の民族衣装で暮らしてらっしゃるんですねえ。
ここでまず訪れたのは、地元の方、主にハマル族の方々で賑わうビアハウス。
ローカルビアの試飲が目的です。
なぜお酒に弱い私が昼間っからこんなとこに、と思われるかもしれませんが、ここで言うローカルビアとは、お酒というより、スタミナ満点のエナジードリンク。むしろドリンクというより、食べ物に近いかもしれません。
ハマル族の方々が、毎日仕事に行く前に摂取するという大切なエネルギー源。小さな子供も飲んでいるくらいですから、アルコール度数はかなり低く、そういった面では、私にとってありがたい飲み物。
しかし、どうでしょう、この見た目。
ドロドロとした白っぽい液体に、熱湯を注ぎます。
これがローカルビア、その名も「チャカ」。
当然初めて口にしますから、かなりの緊張感。万が一、全く飲めないほど強烈な味だった場合気まづいなあという不安でいっぱいです。
手渡された器からは、生暖かい温度が伝わってきて、さらにビクビク。
私の知っているビア(ビール)とはあまりに違いすぎて、恐怖しかないんですが、さすがにここで「飲まない」という選択肢はありません。勇気を出して、一口。
んぁーはいはい、こういう味ねー。わりと想像通り。
最初に感じるのは、何かしらが発酵した強い酸味。そして、次にやってくるのは、穀物の味。お湯を入れているので当然ぬるく、どろっとした半固形物のような口当たり。
美味しいかっていうと、それは否定せざるをえませんが、飲めないことはありませんでしたので、ホッと一安心。
エチオピア南部に来てから、口に入れるものに関してこういった状況が増えている気がします。33歳にして初めて食べるものがこれほどたくさんあるとは思いませんでした。
このお店のチャカの原料は大部分がコーン。それから、エチオピアで多く見られるゾルゴーンという穀物。それにイーストと熱湯を混ぜて発酵させているそうです。炭水化物多めですので、これは確かに飲み物であり食べ物でもある。
それから、手を出すように言われて待っていると、手のひらに乗せられたものは、生姜、ニンニク、胡椒、塩。
(写真の手はアスマモさんの手です)これを、チャカといっしょに口の中に入れ飲み下すのがハマル流。
栄養価の高い食物をこれでもかと盛り込んだ、非常にパワーのみなぎる食生活なのだと言うことがわかりました。それから、ハマル族男性の髪型がとてもユニークだということも。
続いて向かったのも、ビアハウス。
えーまたー!?
みなさんビール片手にくつろいでいらっしゃいますが、こちらのビアハウスのチャカ(ローカルビア)は、コーンではなくゾルゴーン多め。
いやいやその違い私にはわからないです。
「ゾルゴーンには、白、黒、赤と3種類あって」と、非常に丁寧に説明してくださるアスマモさん。でももう私ローカルビア、イナフ。ゾルゴーン博士になりたいわけではありません。
とここで出てきたのが、ビールのお供にぴったり! かどうかはわかりませんが、おつまみ的な料理。
これもまた、先ほどと同じように、チャカ(ローカルビア)と一緒に口に入れ食べながら飲むという摂取方法。
コーン、豆、トマト、グリーンペッパー、ガーリックが入っています。
炭水化物×多種多様なエナジー。エチオピアのカロリーメイト。ハマル族さんは毎日このようなものを食べてらっしゃるんですねえ。
さあそれでは、いただきましょうか。
お味のほうは…
んんん。
このあと、お口直しのコーヒー。なんだかチンピラ風のガラの悪い男性スタッフさんですが、とても丁寧にコーヒーを淹れてくれました。
こうしてかなりお腹が膨れたところで、いよいよハマル族さんが暮らすお宅に向かいます。
ハマル族のお宅にホームステイしてみよう
ディメカの町から約5分。メインストリートから約15分ほど草むら方面に入ったところにその村はありました。
見えてきましたよー!!
こちらがハマル族さんの暮らすおうちです(こう見えて二階建て)。
まずは、中に入れていただきます。
歓迎の意味を込めたコーヒーシェルのお茶をご馳走になりました。
コーヒーなのにお茶? と思われるかもしれませんが、ハマル族は、コーヒーの豆の部分を使わずに、その殻の部分を煮出して作る「シュフロン」というお茶を飲む習慣があります。
室内にある囲炉裏の上に鍋をくべ、ぐつぐつと沸かすお茶。これをカラバシという、ひょうたんのような植物で作った器に入れていただきます。
コーヒー感はほとんどなくって、独特の味ですが、さっぱりしていておいしい! ハマル族さんは、朝昼晩ととにかくたくさんこのお茶を飲むそうです。
家の中でもっとも入り口に近い場所に座るのが、チーフと呼ばれる家長。
お茶の途中で、突然家長が、
「プシュー」と大きな音を立てて長く息を吐き出しました。
びっくりして見ていると、この息を吐く動作を数回繰り返します。これは、「ブレッシング」と呼ばれるハマル族の習慣。家族や家畜の安泰、訪問者への歓迎の意などを願い、ブレッシングをします。
それから家長は、口に含んだお茶を歯の隙間から噴水のようにピューっと出して、自らの手を洗いました。
これも、ブレッシングと似た意味合いを持つ風習。悪いものを洗い流してしまうという意味で行われています。
ハマル族のお家の中はこうなっている!!
お茶の後は、お家の中を見せていただきます。地面に敷かれているのは牛の皮で作ったマット。
牧畜を生業とするハマル族は、衣服や家具のいたるところにヤギや牛の皮を使用しています。掛けられているヤギ皮の衣服。
絞ったミルクを入れる水筒的なもの。
プラスチックだとかポリエステルだとか、人工物の占める割合がかなり低いです。
部屋の真ん中に座ってらっしゃるのが、先ほどコーヒーのお茶を作ってくださったお嫁さん。新妻です。
ハマル族の女性は、結婚が決まると、まず3ヶ月の間、旦那の実家で暮らすという習慣があります。
この期間はどこにも出かけずに、ひたすら家にいて、姑から家事やお裁縫などをたたきこまれるのだそう。主な生活の場は、真っ暗な家の二階。
軟禁兼花嫁修行。この期間に、花嫁は、この先自分が着用するヤギ革スカートの製作に取り掛かり、姑に教わりながら、自らデザインをし縫製します。
よく見ると、さまざまな質感や色の皮がキレイに組み合わせられています。
ヤギ革は言わずもがな丈夫で長持ち。まさに一生もののスカートです。
家の外に出ると、別の女性がお子様の衣類を仕立てていらっしゃいました。
にわとりに餌をやるおばあちゃん。
羊やヤギの放牧をメインのお仕事にしているハマル族ですから、日中は、みなさん家畜を連れて遠くまで行ってらっしゃいます。日が沈み、外が暗くなり始めると、家の人たちが1人また1人と帰宅し始めました。
実はこの日、私とアスマモさんは、この家族にあるものをプレゼントをすることを決めていたのです。
それがこちら。
ヤギです。
この家族からヤギを1頭買い取り、そしてそれを本日の晩御飯にしようという計画。今までにヤギを買ったことも買おうと思ったこともありませんので、値段の相場がわかりません。
アスマモさんによると、サイズによって違いますが、だいたいヤギ1頭1,000ビル(約5,000円)前後、牛1頭10,000ビル(50,000円)だそう。
ヤギ5,000円が高いのか安いのか判断がつきませんが、いちバックパッカーである私にとっては大きな出費。というわけで、アスマモさんと私とで半額ずつ負担してヤギをお買い上げ。
そうして連れてこられました。我々の買ったヤギ。
日本ではあまり口にすることがないヤギ肉ですから、このときまで、わあー楽しみだなあなんて思っておりましたがしかし、
その前に、や る こ と が あ り ま し た ね。
ヤギを殺して解体する。
食べるのはそのあとです。
そこまで深く考えていませんでしたが、今目の前でメェーメェー鳴いているこのヤギを、こ、こ、殺す。動物の肉なんて毎日のように口にしていますから、今さらかわいそうもくそもないんですけど、それでも、やはり、それを目の当たりにするのは正直言って、こわい。
「見たくない」と逃げても良かったんですけど、私はヤギを殺し解体していく様を見ていることにしました。撮った写真はさすがに掲載しませんが、描写などが苦手な方は飛ばしてください。
ヤギは、自分の身にこれから何が起こるかわかっているよう。すごく強い力で逃げようとするヤギの手足を持って仰向けにし、
そして、「さあやるぞ! 」みたいな掛け声はなく、唐突にヤギの喉にナイフが突き立てられました。頸動脈切断ですから、当然たくさんの血が流れ、ヤギ、絶命。この血はボールに入れ、後でミルクと混ぜて飲むそうです。血を抜いたところで解体スタート。
解体の手順。皮を剥ぐ→内臓を取り出す→四肢の切断。
ザクザクという皮を剥ぐ音。ガリガリという骨を削る音。バキバキという生き物の体を解体する音。
全部はじめて聞いた。
ハマル族の民族衣装はヤギの皮でできていますから、この皮はあとあと誰かの衣類になります。そして、内臓は、細かく刻んでスパイスと混ぜ、生のまま食べます。
センマイ刺しとか生レバーとか、臓物系けっこう好きなので、これが日本であったり、もしくは旅の最終日であったなら、私もみなさんと一緒に食べたでしょう。しかし、私の旅はまだ続きます。万が一、ここでリタイヤする羽目になったら困りますので、この日、臓物系は丁寧に辞退いたしました。
血を抜き、内臓を取り出し、大きな肉の塊となったヤギは、木の串に刺して直火焼き。
初めて見たヤギの屠殺。自分がどう反応するか予想もつきませんでした。
もしかして、泣いたり吐いたり、すごく動揺したりするかもなあと思っていましたが、意外と冷静でいられたことに、自分自身驚いています。でもよく考えたら、私は普段から牛も豚も鶏も、モリモリ食べています。ただ見ていないというだけで、日々、他の生き物を殺して食べて栄養にして生きているのです。
パチパチと燃えさかる焚き火と、余分な脂を落としながらこんがりと焼けていくヤギを眺め「あぁ、おなかすいたなあ」と思う私は、果たして異常なのか、正常なのか。
こうして焼きあがったヤギを、いよいよ食す時間です。この家の人たち以外にも、近隣の住居から村人が集まり賑やかな晩餐。
普段は昼間食べたような炭水化物メインのお食事なので、肉というものはかなりのご馳走。
ゾルゴーンという穀物を水と混ぜ焼いたものといっしょに食します。この茶色いやつ。
ヤギ肉はかなり歯ごたえがしっかりしているものの、とくに強いクセがあるわけではなく、非常においしくいただきました。
ものすごい速さで我々のお腹に入り、あっという間に、骨だけになったヤギ。
素手で肉をつかみ、思いっきり頰張るなんて、まさにワイルドライフ。聞こえるのはガリガリと骨を噛み砕く音。ハマル族さんは、骨を割り、その内側までしっかりと召し上がっていらっしゃいます。
ひとたび奪った命ですから、しっかりきっちり余すことなく食べつくすのが誠意。そう、骨の髄まで。
食事の時の飲み物は、ハニーワイン。
エチオピア全土で飲まれている非常にポピュラーな、蜂蜜とホップで作るお酒です。地方によりお味は様々ですが、この日のハニーワインは、ハチミツ多めで甘くて美味しかったです。
3口飲んでは隣の人にパスする、というスタイル。
お酒に弱い私は、口だけつけてほぼ飲まずにパスし続けましたが、10周以上まわってきましたので、なんだかほどよく酔っ払いました。
他の方々は、ハニーワインとは別にローカルのお酒も飲んでいらっしゃいます。
コーン、ゾルゴーン、バッリという穀物から作られた蒸溜酒。最初に一口いただきましたが、これはかなりアルコール度数が高く、飲んだ瞬間咳き込むレベル。
ウォッカとかジンとかテキーラとか、お酒に弱い私のような人間にとっては致死性のある恐ろしいやつと同じですのでご注意ください。
ハマル族の人々のライフスタイルについて
ハマル族には、年齢をカウントする習慣がなく、カレンダーもありません。
週に1度、街で開かれるマーケットがあるので、その開催日から次の開催日までが一区切り。マーケットが行われるごとにロープに結び目をつくり、それでなんとなくの1週間を知るのです。長期的な季節の移り変わりは月の満ち欠けで判断するそう。
もちろん日本のことなんてご存知ありません。私のことはただ、どこかほかの村からやってきた客だと思っていらっしゃいます。
よそからの訪問者に対して寛容なハマル族は、こうして得体の知れない私を笑顔で迎え入れてくれました。古くから伝わる彼らの教えの中に「悪いことをすると、悪いことが返ってくる」というのがあるそうです。
これは、私も幼いころから母親に何度も何度も言われてきました。
言葉も文化も生活スタイルも全く違いますが、なんとなく、その感覚には近い部分もあるんだなあとうれしくなります。
食事が終わると、すぐさま睡眠。働いて、食べて、寝る。とてもシンプルですねえ。
家の中で寝たいか、外で寝たいか聞かれたのですが、とりあえず、見てくださいこの星空。
こんなのを見てしまうと、そりゃ外で寝る1択でしょう!! ファミリーのお父さんも外で寝られるとのことで、私も隣に牛の皮を敷いてもらいます。
そして枕は、ハマル族伝統の「ボルコット」と呼ばれる例のやつ。
マーケットや町中で見かけるハマル族の男性が全員その手に持っていらっしゃるこのツールは、ポータブルな枕兼イスなのですが、本日ついに私もこれで寝ることを許されました。感激です。
22:30 就寝
30分後…
寒い。ものすごく寒い。さっきまで人がたくさんいたし、肉を焼いた火も残っておりましたのでとても暖かかったのに。今は強い風が吹き付け、気温もぐんぐん下がってきてしまいました。気温15度きってるなあ。
おまけにこのボルコットとかいう枕。よくよく考えたら、これで寝心地がいいわけないんですよー。牛皮の敷布団もまた然り。地面にダイレクトで寝てんのと大差ないじゃないですかー。
いやー、勢いとテンションってこわい。後先考えずに行動するのは私の悪い癖ですが、また今回もやってしまいました。寒さとアンコンフォータブルな環境に慣れていない私は、ハマル族って大変だなあと心の底から思うのでした。
ちなみに、トイレ、シャワーは当然なし。少し離れた藪の中で用をたします。
それでは本日はここまで。明日は、オモバレー2つ目の少数民族さん「ダサネチ族」に会いに行きます。本日も最後までお読みくださってありがとうございました。
初めてコメントします。旅の荷物で検索したらused keyさんが出てきて(キーワードは忘れてしまいましたが…)旅行記も楽しく拝見しています。
何度か星空の写真をアップされていますが、三脚を使っているんですか?私もキャノンのmayumiさんと似たようなカメラを持っていて三脚なしでは星空を撮るのは難しいのかと思っていたのですが過去の記事を拝見しても三脚が出てきてないので三脚なしで撮影しているのですか?
来月旅先で星空が撮影できそうなんで教えて頂けないかと思いコメントしてみました。