エチオピア(17)ダサネチ族の伝統と流行。対観光客の不思議な温故知新
世界一周をしております私は、アフリカ大陸にあるエチオピアを旅行中。現在は、エチオピア南部オモバレーに暮らす少数民族さんに会いにきております。昨日から私が滞在しているのは、ハマル族という方々のおうち。満天の星空の下、吹き付ける強風と寒さ、牛皮の敷布団と木製の枕の寝心地の悪さにMPを削られ、テンション低めの朝をむかえました。
【現在地】トゥルミ(エチオピア)
Turmi(Ethiopia)
【気温】32度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1ビル(ブル)=約5円
美しいサンライズから始まるハマルの朝
いろいろと新しい発見がたくさんあった昨日はたいそう充実した1日でした。そして、調子に乗って自ら屋外で寝ることを選択し、すぐさま後悔するという残念な夜を過ごし、むかえた本日のサンライズ。さわやかですねえ。
昨日の投稿はこちらです。
6:30 ご家族の皆さんとコーヒー茶をいただきます。ハマル族は、コーヒー豆ではなくその殻を煮出してお茶にして飲む習慣があり、朝はこうして家族揃ってお茶を飲むことからはじまるのです。
コーヒーの殻。これを煮出してお茶を作ります。
お子様たちは朝から元気。
この家の若い女性に、民族衣装であるヤギ皮のトップスを試着させていただきました。
近頃は、私もなかなかワイルドになってまいりましたので、そろそろアシタカが迎えに来てもいいんじゃないかなあ、なんて。
毎朝、お父さんの判断で、本日の放牧は誰がどのあたりに行くかが決められます。そのミーティング風景。
牧畜を主な生業とするハマル族にとって、ヤギや牛などの家畜は、我々にとっての通貨と同じ。家畜の数が多ければ多いほど資産家ということになります。ただ、現金を全く使わないというわけではなく、家畜を売って得たお金は薬など自給できないものを買うのに使われます。
ちなみに、ハマル族は一夫多妻制を採用しています。男性が奥さんを何人持てるかは、所有している家畜の量に比例するそう。いくら現金をたくさん持っていても意味がないのです。
それから、いまいちどういう感覚なのか想像するのが難しいのですが、ハマル族には数を数える習慣があるありません。
ヤギや羊、牛の数は、柵の中に入ったときどのくらいの面積になるかで判断。家畜が子供を産み、柵の中で家畜たちの占める面積が増え、狭くなってきたなあと感じることで、その数が増えたと理解するのです。
数をカウントしてしまうと、その後に待っているのは失うことへの恐怖心。だから、彼らは数を数えることをしない。なんだか深いですねえ。
もともとは、ひとところに定住しない遊牧民族であったハマル族。しかし、あるときから定住し、家畜を育てることを覚えていったそうです。今は乾季・雨季の季節ごとに住む場所を変えるものの、住居ごと移動するのではなく、一部の住民はここに残り季節が巡るとまた家族そろって戻ってくるのです。
上半身は牛皮の衣類か裸だった女性たちは、今ではモダンなTシャツやタンクトップを着用するようになり、男性の中には携帯電話を持つ人もいます。
古くから伝統的な暮らしを営んできた彼らの生活は、少しずつ変化しているのです。
数年後、どうなっているかなあ。たぶん今のままの暮らしを続ける人は減っていくんじゃないかなあ。誰だって、便利で快適なほうがいいもんなあ。でもそれって悪いことなのかなあ…なんてことを思いながら、ハマル族村を後にしました。
ダサネチ族の村へ行ってみよう
本日は、オモバレー2つめの少数民族「ダサネチ族」に会いに行って参りました。エチオピアの中でも最も南に暮らす彼らの村を訪れるためには、まず「Omorate(オモラテ)」という町まで行く必要があります。地図でいうとこちら。
起点となるのはTurumi(トゥルミ)。しかし、トゥルミから南へと向かう公共交通手段は、残念ながら、ありません。というわけで、ヒッチハイク一択。
先日も説明した気がしますが、ここエチオピア南部のヒッチハイクは、ほかの国々で行われるヒッチハイクとは若干趣が違います。
このエリアでは、個人で車を所有している人は皆無。走っている車といえば、わずか4種類のみ。以下私が乗りたい順にご紹介いたしましょう。
- 公共のミニバス(ハイエースタイプ。安い)
- 通称「ガバメントカー」(公務員さんを乗せたダットサンみたいな車)
- お金のある旅行者を乗せたツアー会社の車(4WD車)
- 通称「いすゞ」(様々な荷物を運ぶ大型トラックの荷台。いすゞ製が大半を占めるのでこう呼ばれている)
つまり、どれも複数人でのドライブ。それなりに、安全。ちなみにすべて有料です。今回は1.公共のミニバスがありませんので、目指すはガバメントカー。
今朝まで滞在していたハマル族さんの村を出て、メインロードを歩いていると…
なんと来ました!!! ガバメントカー!!
ガイドのアスマモさんが車を停めてくれ、ドライバーさんに話をつけてくださいまして、なんと荷台ではなくちゃっかり内側に乗ることに成功。いやーラッキーだ。
しかも、ガバメント関係者のみなさまは、途中のトゥルミに寄って朝食を食べるとのことで、これまたちゃっかり私もごちそうになってしまいました。
インジェラの上に乗っている右側のやつ「ダガビノ」という豆をすりつぶしてペースト状にして味を付けたもの。とてもおいしかったです。この日は水曜日。ほとんどのエチオピア人にとって、水曜と金曜は”ファスティングデー”。つまり、肉や卵などを食べない日。魚は人によりけりだそうですが、そんなファステイングデーに食べられているのが「タガビノ」なんです。みなさまぜひお試しください!
朝食が済むと、いざオモラテへ。現在、オモラテから先に、ケニアに抜けるイミグレ用の道路を絶賛建設中とのことで、トゥルミ~オモラテ間は行政的にも大切なルートになりつつあります。
ですから、道路状況はかなり良好。ほぼすべてがコンクリートで舗装された道路ですので、交通手段さえゲットしてしまえば、意外とすんなりたどり着けてしまいます。車がなければ、バイクタクシーのチャーターでも行くことができると思います。トゥルミから約60分、オモラテ到着。ガバメントカー料金50ビル(約250円)。
ここは、ケニアとの国境が近いため、町に入るときにイミグレーションオフィスにパスポートを提出し番号もろもろを控えてもらう必要があります。
イミグレーションオフィスの場所はこちら。
(帰りは寄る必要ありません)
そうして向かうは船着き場。場所はこちら。
オモ川を渡った先に、ダサネチ族のみなさんが暮らす村があります。
歩き出して2秒ぐらいで暑さにへばりそうになります。オモラテ、くっそ暑い。砂埃たっぷり。そう遠くはない船着き場にたどり着くだけでかなりぐったりしてしまいます。ここでガイドを紹介してもらい、いっしょにダサネチ村へ。
料金はガイド料、ボート代などもろもろ込みで700ビル(3,500円)。くっそ高いんですけど、なにやらレシートを発行してくれて、さも正当な価格であることをアピールしてきます。
私だまされてんのかなあと思いつつも、これが公式な価格だからと言われれば払わざるを得ません。レシートの金額部分、好きなように書き込めるからあまり意味がない気がしますが、少数民族産業はとてももうかるということだけは分かりました。
川を渡るのは、このような、非常にシンプルなボート。
当然、写真左の白いボートではなく、真ん中の細いのやつ。トラディッショナルなスタイルだからと説明を受けますが、
そんなことよりこれ沈まないよねえ??
ダサネチ族の女性もボートに乗っていらっしゃいます。
真剣にドキドキしながら川を渡り切り、ほっと一安心。
ここから20分くらい歩いた場所に、ダサネチ族さんの暮らす村があります。
見えてきました!!
村に入ると、突如大勢の女性たちに取り囲まれます。何だろうとびっくりしていると、女性たちは口々に「フォト! フォト!! 」「5ビル!! 5ビル!! OK? 」とおっしゃいます。
あぁ、写真を撮れと。そしてそのチップとしてさっさと5ビル払いなさいよ、と。こういうことですね。
オモバレーに住む少数民族さんの中でも、おしゃれでユニークなファッションのダサネチ族さん。きっとたくさんの観光客が訪れ、そして写真を撮り、チップを払っていったのでしょう。
現在ではこのチップが彼女たちの大切な現金収入の一部を担い、生活を支えていることがうかがえます。
とりあえず、私来たばっかだし、村の中とか見たいよ。ファッションはすごくかわいいけど、そんなグイグイ来られても困ります。全員にお支払いできるほどのお金の余裕はありませんし、私にだって選ぶ権利はある。
そう思い、とりあえず村の様子を見始めるも、後ろからたくさんの女性たちが追いかけてきて、とてもゆっくり見られたものではありません。仕方なく、先に女性たちの撮影会。
ずらっと横一列に並んだ女性たち。そしてガイドさんから「どの子を撮りたいんだ? さあ選んで!! 」と急かされ、どんどん観光意欲が薄れていきます。いかがわしい風俗店のように、派手に着飾ったり、ポーズをつけたり「私を選んで」と必死でアピールするダサネチ族の女性たち。
なんだこの状況…。
すごくお会いしたかったダサネチ族ですが
私が最初にダサネチ族を知ったのは、ビール瓶の蓋で作ったヘッドアクセサリーをまとった女性の写真。何気ない生活用品をアクセサリーにし、古くから続く伝統に、新しいエッセンスを加えた非常に斬新なファッションだと紹介されておりました。
私たちがアクセサリーのパーツにしようなんて思いもしないアイテムをかっこよくアレンジして身に着けるその感性がすごく新鮮で、どんな人たちなんだろう、もっと知りたい、直接会ってみたいと思ったのです。
そこでガイドさんに、iPhoneに保存しておいた写真を見せながら聞いてみます。
「あのー、こういったビール瓶の蓋をかぶってらっしゃる女性はいないんですか? 」
「あー、これねー。はいはい。こういうやつねぇ、政府からNG出ちゃったんだよねー。だから、この村の偉い人も、住民にこういうファッションをすることを禁じてるんだよ」
なんと、このビール瓶の蓋をはじめ、伝統的なアクセサリーではないモダンなアイテムをダサネチ族が身に着けることを政府が禁止してしまったそうです。
少数民族産業はもうかるので、そこに新しい風を吹き込まれちゃ困る、と。その意図は分かります。
明らかに何百年も昔から使われているアイテムではありません。きっとここ数年以内に、町に行った誰かがビール瓶の蓋を持ち帰り「やだーかっこいい!! 」てな感じでちょっとしたブームになったのでしょう。
でもさ、それって悪いことですか? これこそまさに「流行」。日本でもたまにわけわかんないアイテムや着こなしが流行ることがあるじゃないですかー。もともとあるものに、なにか付け足したりアレンジしたり、そうして新しいものを生み出していくっていうのはすごくドキドキして楽しい。
その感覚は、少数民族さんも同じなんだなあと親近感がわいたのですが…。
今はもう誰もあれかぶっていないのか、とかなり残念に思っていると、どこからともなく現れた女性が、
か、かぶっている。ビール瓶の蓋の帽子。
間違いなく、私があれをかぶっている人の写真を撮りたいって言ってるのが分ったからです。
えっ、リクエストにお答えしてかぶってくれんの!?
当然チップ目当てにほかなりません。とにかくもうなんでもありのようで。せっかくかぶってきてくれたのですから、もちろんチップをお支払いし、写真を撮らせていただきましたが、ものすごく複雑。
それから、腕時計のベルトをアクセサリーにしていらっしゃる女性も。
こちらの若い女性のヘッドアクセはビーズで作られたもの。
髪は、泥で塗り固められています。
ちなみに、男性のファッションはこのようなスタイル。
羽根の飾りと、模様をあしらった髪の毛がとてもユニーク。
このあと家の中に入れていただき、内側がどうなっているのかを見せてもらいます。外から見たおうちの写真。
暑いのに、金属製のトタンを使用していて、いろいろ大丈夫かなと心配になります。
ちなみにこちらが食料貯蔵庫。
家の入口はとても狭い。
でも中は意外と広々としております。
牛のミルクを入れるポット。
ここは川に近いので、男性は漁も行います。こちらは漁に使う網。
この写真をとることで、5ビル×5人=25ビル(約125円)お支払い。赤ちゃんも1人とカウントされます。
お家から出てみるとびっくり。ビール瓶の蓋のヘアアクセサリーをまとった女性が増えた…。
私が余計なこと言ったからだ。これかぶっときゃ写真とってもらえるって勘違いさせてしまったかもしれません。
こんなに小さなお子様まで。
みなさん、ありがとう。ビール瓶の蓋をかぶってくれて。
とはいえ、ハマル族女性の着こなしは、やっぱりおしゃれでかっこいい。これは間違いないです。
たぶんね、私が来るのが数年遅かったんですよ。
ダサネチ村は今や”ダサネチランド”とかいうテーマパークと化していました。
ある意味カルチャーショックを受け、微妙な気持ちで村の中を歩いていると、いつまでも付いてきて離れない女性たちが叫びました。
「3人で10ビルでいいよ!! 」
「5ビル!! 5ビル!! ほら、私にっこり笑うからさ!! 」
グロス価格、笑顔のサービス…
はい、ダサネチ村しゅーーりょーーぉぉぉ。
暑さ+言いようのないがっかり感で、いろいろどうでもよくなり、早々に退散。何ここー!! ユニークな装いのダサネチ族の人々を見られたのはとても貴重な経験だったと思いますが、それ以上でもそれ以下でもなく。
彼らの何がわかったかというと、よく言えばサービス精神旺盛、そして、言い方を変えれば、ただただチップが欲しいんだなあということだけがわかりました。旅行者はただ、お金を落としていくだけの人。ここを訪れて、純粋に、楽しかった! すばらしい体験だった!! なんて思う人は果たしてどのくらいいるのでしょう…。
こうしてとぼとぼと川岸まで歩き、再びどこまでも危ういボートで川を渡り、オモラテまで戻ります。
ここでお昼ご飯。オモラテは川沿いですから、おいしいお魚が食べられます。
ナイルパーチという白身魚withインジェラ。
そして気温37度という驚きの暑さでへばりそうな今こそコーク!!
最高でした。
エチオピア人の足として活躍する「いすゞ」という乗り物
今朝、トゥルミからオモラテまでは運よくガバメントカーに乗せてもらうことができましたが、さあこれからトゥルミに戻るためには、どうすればいいんだろう。
ランチを食べた食堂の人に聞くと「いすゞ」に乗ればトゥルミまで行けると教えてくれました。ここオモラテは、エチオピアの南の端ですから、ここを出発する車は、とりあえずその先にあるトゥルミに行く可能性がかなり高いのです。
このエリアの情報を収集するにあたり、たくさんのブログで見かけた「いすゞ」という名の乗り物。ついに私もそれに乗る時がやってまいりました。
いすゞとは大型トラックのことで、荷物を運ぶのがメインですから、定時発車なんてものはありません。町の何か所かに停車しているイスズに立ち寄っては「トゥルミに行きたいので乗せてほしい」と訴えます。「出発は夜なんだよー」とか、「明日にならないと出発しないよ」とか、断られたりしつつ、やっとのことで「すぐに発車するよ」というイスズを見つけました。
さあみなさん、こちらが「いすゞ(イスズ)」。
ほら。
誇らしげに描かれた「ISUZU」のロゴ。これがそのまま大型トラックの総称として一般化しているんですねえ。
私の大切な友人の一人は元いすゞ関係者。彼女にもぜひ乗ってもらいたい。そして感じてほしい、いすゞの一体感。
トラックの荷台は、立っていると風びゅんびゅん吹いてきて気持ちいいー!!
そして砂埃と揺れ、ハンパなーい!! このありさまをご覧ください。
いすゞに揺られること1時間半。トゥルミに到着。料金100ビル(約500円)。ありがとうISUZU。
オモラテへのショートトリップを終えたところで、残念な事態に。愛用のTevaサンダル(くっそ汚い)が破損してしまいました。ソールがべローン!!!
しかーし、私はこんなこともあろうかと日本からスペシャルなアイテムを持参しておりました。それがこちら。
アロンアルファ プロ用。耐衝撃。(中粘度/ハイスピード)
いったい何に使うつもりなのかさっぱりわからないまま、とりあえず持ってくかとこれをバッグに入れた、世界一周出発前の自分を心から褒めたい。世界を視野に入れたバックパッカーさんはぜひアロンアルファをバッグの底にしのばせておくとよいでしょう。できればプロ用。いつか必ずやあなたのお役に立つこと請け合いです。
ものの5分で、絶望的かと思われたサンダルのリカバリーに成功。
【トゥルミ(Tuemi)のハニーワイン】
エチオピア全土で飲まれている「ハニーワイン」。蜂蜜たっぷりの優しい飲み口は、お酒に弱い私でもぐいぐいいけちゃう素敵な飲み物。各町や村でハニーワインのテイスティングをしようと決めておりまして、本日は、滞在中のトゥルミ(Turmi)にてハニーワインをいただきました。
一口飲んでびっくり!!
あまーい!! ハニーがたっぷり!!
今まで飲んだどの町のものよりもハチミツたっぷりでおいしい!! お酒が苦手な方には、トゥルミのハニーワインがおすすめ。たぶん、含有物ほぼほぼハニーです。いやー、これはいい!! 一番のお気に入りとなりました。
オモバレー南部では、9月は”フラワーシーズン”と呼ばれるくらい至る所にたくさんの花々が咲き誇っています。つまり、ミツバチさんたちも大喜びの季節。おいしいハチミツがたくさん採れるので、ワインにもたっぷり使用することができるんですねえ。こういった理由から、9月はハチミツの値段がもっとも安く、これから冬になるにつれてどんどん上昇していくそうです。
それでは本日の投稿はこれにて終了。最近、ひとつの投稿が長い気がするのですが、いつもいつも最後まで読んでくださってありがとうございますね。ではまた明日ー。あ、明日はカラ族の村に行きますよ。
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