レソト(1)毛布の民に会いたくてレソトを突っ切ることにします
ビクトリアの滝を昼夜合わせて4度満喫した私は、次なる目的地に向けて移動を開始しました。目指すはレソト王国。周囲を南アフリカに囲まれた小さな国ですが、自然が美しいことから「アフリカのスイス」なんて呼ばれるほど。
そもそも私は、当初この世界一周でレソトに行く予定はありませんでした。あまり情報もなく、小さいし、別に行かなくていいかな、なんて思っていたのです。南アやらナミビアやらザンビアやらジンバブエやらの情報が掲載されている『地球の歩き方』に、ひっそりと入っているレソト。行く気はないですけれども、何の気なしにこの国のページを見てみると、
扉ページのこの写真。
伝統的な衣装を身に着けたソト族の男性。
やだかっこいい。
レソト部分の一番最初のページに目が釘付けになりました。
私は、洋服とかファッションとかそういったものに興味がありまして、世界各地の「民族衣装」とか「伝統的な衣装」とか、そういったものにいちいちグッときてしまいます。代々受け継がれてきたその土地に昔から伝わるアイテムやコーディネートを、今なおまとっていらっしゃる、というのはとても素敵なことなのです。
しかも、それらのアイテムは、往々にしてオリジナリティに溢れ、とんでもなくかわいくて、それを毎日見に着けて暮らせるなんて、うらやましくて仕方ありません。
そして目にした、伝統的な衣装を見に着けたレソトのおじさんの写真。
“伝統的な衣装”っていうか、毛布だよねこれ。
雰囲気のある大自然を背景に、粋に毛布をまとうクールな姿。
毛布をファッションアイテムとして取り入れる高難度なスタイリング。にも関わらず、何の違和感もなくさらりと着こなすこのレベルの高さが分かりますか?
この毛布、欲しいなあ。
そして、ぜひ私も毛布をおしゃれに着こなしてみたいなあ。
毛布と私の切っても切れない関係について
私と毛布の関係は古く、まだ保育園に入るか入らないかの頃まで遡ります。
みなさんは子供の頃、肌身離さず持ち歩いていたものはありますか? どこへ行くにもいっしょ、寝ても覚めてもいっしょ。これがないと不安で不安でたまらない。そんなアイテムです。
おそらくぬいぐるみのパターンが一番多いと思うのですが、私にとってのそれは、何を隠そう毛布でした。
正確に言うと、毛布というより、毛布のカバー。
ガーゼ素材で作られている真っ白なカバーです。その毛布(のカバー)に私の母が「好き好き毛布」と命名し、さらに、それを略して「きーもーも」と呼んでおりました。
その秀逸なネーミングセンスと略し方は、今思うと若干「? 」ではありますが、とにかく私はこのきーもーもが大好きでたまらなく、昼夜問わず、屋内外問わず、TPOなど一切気にすることなく、常に携帯していたと言います。
そんな状態ですから、当初真っ白だったきーもーもは、あっという間に汚れていってしまいます。
鼻水垂らしながら薄汚れた毛布を引きずって歩く幼児のみすぼらしさったらないですが、視界からきーもーもが消えた途端「きーもーもがないー」と言って号泣する私をなだめる術はほかになく、しかたなく放置していたようです。
このように、物心つく前から、毛布にご執心だった私は、33歳になった今も、毛布の魅力に取り付かれたままでおります。
今回の世界一周旅行にも、お気に入りの、インドで買った毛布を持参。冷房の効きすぎた夜行バスの車内や、暖房のないゲストハウスでのリラックスタイム、極寒のテント内など、かなり頻繁にお世話になっています。
しかし、毛布というものは、寒さをしのぐためだけに存在するのではありません。
毛布にくるまる安心感に勝るものなし。
今の私にとっての、精神的な支えと言っても過言ではないのです。
そんな私が、いにしえより伝統的に毛布にくるまってきた人々の国をスルーしていいわけがありません。
防寒、安心感、そしておしゃれ。毛布の魅力を最大限に生かした着こなしを「毛布の民」から伝授してもらわなくては。
「そうだ! レソト行こう! 」
そう思った私は地図を確認。
私のこの先の目的地は、南アフリカのポートセントジョーンズ。
ケープタウンをスタートし、順調に北上してきたのに、まさかの南下。効率でいうと最悪なこのふざけきったルートは、実は出発前から予定していたものです。
で、これ見ていただくとすぐにお分かりだと思うのですが、ビクトリアフォールズからだったら、
レソト、突っ切って行けばちょうど良くない?
というわけで、ジンバブエ・ビクトリアフォールズの町からレソトを抜けてポートセントジョーンズへ。国境を無視した鬼のような長距離バス移動となりますが、がんばって行きましょう!
ビクトリアフォールズからブルームフォンテインへの行き方
昨日の早朝、ジンバブエを出発した私は、バスを乗り継ぎ乗り継ぎ2日かけて、レソトへの玄関口、南アフリカの「ブルームフォンテイン」まで来ております。以下、移動の詳細を記しますが、果たしてこの先、このルートを通られる方がいらっしゃるのでしょうか。
絶対に飛行機でぴゅーんとレソト入っちゃった方がいいと思うなあ。とはいえ、せっかくなので、その奇跡を記します。
≪昨日の朝≫
7:30ビクトリアフォールズ(ジンバブエ)発〜13:00ブラワヨ(ジンバブエ)着
長距離バス(インターケープ)
216ランド(約1,512円)
に乗る予定が、朝一メールをチェックすると、便がキャンセルになりましたの旨が届いている。
おいぃぃぃ!
インターケープさんよお、私これから怒涛の移動でして、これ1発目崩れると、あと全部台無しなんですけどー!!
6:45インターケープバスの時間に合わせて、バスターミナルまで連れて行ってもらうことになっていたタクシーが迎えに来てしまいます。仕方がないので、ドライバーさんに相談。
「乗ろうと思っていたバスがキャンセルされてしまいまして、ブラワヨにどうしても今日行きたいのですが、どうしたらよいですかね? ブラワヨ発16:00のバスに乗らなきゃいけないんです(涙目)」
「ローカルバスで行けばいいよ」
あぁ、その手がありましたか。ローカルバスといえば、地元の方々が利用されるバスで、長距離ではなく短距離利用者が多いため、村ごとに停車&人の乗り降りを繰り返し、たいしたことない距離を異常に時間をかけて移動する乗り物。
定刻の発車時間などなく、人がいっぱいになった時にのみ目的地へと向かうことが許される。往々にしてハイエースタイプの車体で、間違いなく狭小シート。
「いいですね、ローカルバス。しかし、その方法でブラワヨに向かうとなると、かかる時間はいかほど? 」
「だいたい6時間から8時間だな」
インターケープの直行バスなら5時間半の距離。まあローカルバスなら仕方ありません。
「では、インターケープのバス乗り場ホテルではなく、ローカルバス乗り場に連れてってください」
ということで、ビクトリアフォールズの町のローカルバス乗り場へ。
■ビクトリアフォールズからブラワヨの行き方
ビクトリアフォールズの町のローカルバス乗り場
【乗り場の名前】Chinotimba(シノティンバ)
タクシーのドライバーさんに「ブラワヨ行きたいからバス乗り場へ行ってください」って言えば大丈夫と思います。いろいろなローカルバスが発着しています。
場所はこちらです。
-17.942204 25.827144
【料金】ビクトリアフォールズからブラワヨまで13USD(約1,365円)
【時間】6~8時間
私がバス停に到着したのが朝7:00ごろ。その時間にはすでにけっこう人が集まっておりました。
到着すると、入り口付近、一番目立つ位置に大きな青いバス。
タクシーを降りてチケットをさばいている風のおじさんにブラワヨ行きはどれか尋ねます。
「このバスだよ! 値段は13ドル」
わあ! もしかしてこれ直行バスなんじゃないの! でかいし、なんかちゃんとしてる!
想像していたローカルバスと違うことに喜びをおぼえ、おじさんに尋ねます。
「バスは何時発ですか? 」
「人が集まったら出発だから、乗って待ってなさい」
ですよね。やっぱりそのパターン。
「わかりました。だいたいでいいんですけど、何時ぐらいにブラワヨに着きますかね? 」
「さあ〜。15時から17時くらいかなぁ」
私の乗り継ぎバスの出発時刻は16時。
15時ならセーフで17時ならアウト。
まあ他に手段はありませんので、運に任せてみることにします。
バスが満席になり発車したのが8:00。バスが大きいからって直行だと決めつけるのは大きな間違いで、これはただの大きなローカルバス。通り過ぎる村ごとにたくさんの人が乗り降りし、むしろ始発から終点まで乗る人はごくわずか。
国一番の観光地ビクトリアフォールズを出るとそこはもうただののんびりとした田舎が続きます。
ローカルバスのよいところは、停車するごとに、車窓から行き交う人々をながめたりできること。これはとてもおもしろいです。ダイレクトでびゅーんと行ってしまうバスでは見ることのできない、人々の日常が垣間見えます。
ちなみに、この大きなローカルバスには、USB充電ができる機能が搭載されておりました。電池の減りを気にすることなくiPhoneで音楽を聴くことができたのは、地味にありがたい。こうして音楽を聴いたり寝たり起きたりお菓子を食べたりすること7時間。
15:00ブラワヨ(ジンバブエ)到着
間に合いました!
バスを降りるとタクシーをつかまえ、乗り継ぎ先のインターケープバスオフィスに向かいます。
バスを降りた場所からインターケープオフィスまで、タクシー2ドル(約210円)。インターケープのオフィスで、キャンセルになった便のお金を返してもらい、これで完全にリカバリー成功。
さあ続いては、南アとの国境越えを含む夜行バス。ケープタウンに続き、この旅2度目の南アです。
【時間】16:00ブラワヨ(ジンバブエ)発〜翌5:00プレトリア(南アフリカ)着
【手段】バス(インターケープ)
【料金】600ランド(約4,200円)
乗る予定だったバスがキャンセルされたことで、「がっかりバス会社」認定しかけていたインターケープですが、このブラワヨからプレトリアまでのナイトライナーはものすごく快適で、席が広く、足も全力で伸ばせ、普通に横になって寝ることができました。
足が短くて良かったなあ。
20:30ジンバブエと南アフリカの国境に到着。ジンバブエを出国し、南アフリカに入国。ここは、バスの乗客全員の荷物検査がありました。
翌5:00プレトリア(南アフリカ)到着。
次の乗り継ぎバスは、9:00発。ここで4時間待機です。
行政、司法、立法の首都を3か所に分けている南アフリカ。プレトリアは、行政をつかさどる首都です。昼間の治安はあまり良くないと聞きますがどちらにしろ早朝で真っ暗ですので、周囲をうろうろしません。
プレトリア駅のバスターミナルは、インターケープをはじめ大手バス会社の乗り場が一箇所に集まっていますので、違うバス会社間の乗り継ぎもスムーズ。これはありがたい。
コーヒー7ランド(約50円)で温まりながら、じっと出発を待ちました。あともちもちでおいしくてあったかいドーナツも食べた。二個3ランド(約20円)。
8時45分ごろ、バスがターミナルにやってきて乗車。ここプレトリアから、次の目的地ブルームフォンテインへと向かいます。
【時間】9:00プレトリア(南アフリカ)発〜16:30ブルームフォンテイン(南アフリカ)着
【手段】バス(エルドコーチス)
【料金】430ランド(約3,010円)
プレトリアからヨハネスブルグまでバスで約1時間かけて行き、乗り換えがあります。ヨハネスブルグに着いたら、おそらく降車場所からそう遠くない場所で待っていれば大丈夫と思います。
このバスの終点はケープタウン。ブルームフォンテインの人は、途中で降車することになります。
16:40ほぼほぼ定刻で、ブルームフォンテインに到着。
こうして33時間半かけてたどりついたブルームフォンテイン。ここもまた3つある南アフリカの首都のひとつ。司法担当らしいですよ。
宿は、事前にBOOKING.COMで予約済み。想像していたより大きな都市で、到着してから適当に宿を探そうとすると、なかなか大変だと思います。車社会で、どこへ行くにもそこそこの距離があります。
とりあえず、移動の中継地として選んだ宿でしたが、宿というより普通のおうちっぽくて、そこのおばさまがとても親切でした。
スーパーまで歩いて向かおうとしていると、暗くなると危ないから、と車で連れて行ってくださいました。きれいで快適で、久しぶりにシャワーが室内にある場所に泊まったなあ。
ふかふかのダブルベッドを広々と使い、ぐっすり眠ることができました。
本日はこれにて終了です。後半、この地域に興味がない方は、まったく不要な内容だったと思いますが、最後までお付き合いくださってありがとうございました。明日はついにレソトへと入国いたします。
■ブルームフォンテインおすすめの安宿・ゲストハウス
Gastehuis17
住所:17 Jan Enslin Street,Fichardpark,Bloemfontain
宿泊日:2016年6月23日~6月24日
部屋の種類:ダブルルーム
料金:335ランド(約2,345円)
【設備】
- Wifiなし
- バストイレ室内にあり、お湯もたっぷりです
- 共同で使用可能なキッチンがあります。
- スーパーまでは徒歩20分くらいと、けっこう遠い。
【個人的な感想】
普通のご自宅の数部屋をゲストハウスとして使用している感じです。Wifiはありません。どうしても必要な場合、徒歩20分くらいの場所にケンタッキーがあり、そこで1日200MBまで無料でWifi使えましたのでぜひどうぞ(2016年6月現在)。
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