メキシコ(12)ぜひおすすめしたいインテルカンビオの誤った利用方法
現在世界一周をしております私は、メキシコを旅しています。旅しています、というか、留学しちゃってます。なんせ私のスペイン語ときたら、それはもう絶望的で、どう考えても今後の旅に差し支える。このままではやばいと思った私は、オアハカという町にて、スペイン語の語学学校に通うことにしたのです。
【現在地】オアハカ(メキシコ)
Oaxaca(Mexico)
【気温】22度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1ペソ=約5円
インテルカンビオってなんですか
私が留学しているのは、オアハカにある「ICO(Instituto Cultural Oaxaca)」という学校で、参加しているのは「死者の日コース」。死者の日についていろいろ教えてくれる学校、ではなく、れっきとした由緒あるスペイン語の学校。詳細はこちらです。
私が参加しているコースは、1日1時間ほど「インテルカンビオ」というカリキュラムがあります。インテルカンビオ(Intercambio)。英語で言うとExchange Lesson(エクスチェンジレッスン)、日本語に訳すと言語交換。
つまり、オアハカ近郊在住で「日本語を学んでいます! 」って人をご紹介いただいて、「スペイン語を学んでいます! 」という私と
スペイン語×日本語の言語交換をしましょう、ということです。
トータル1時間のうち、30分ずつお互いの言語でカンバゼーションを行うのです。が、この時期メキシコでは「死者の日」というイベントがあるため、世界中から観光客が集まってきます。メキシコの中でもとくに「死者の日」を盛大に祝うオアハカですから、一時的に町の人口がぐっと増えるんですねえ。
当然日本からスペイン語を学びにいらっしゃる方も多い。そしてですね、オアハカそんなに大きな町ではないですから、「日本語を学んでいます! 」って人がそうたくさんいらっしゃるわけではないんです。
えー、残念ながら、私のお相手となる日本語を学んでいらっしゃる方、見つかりませんでした。
私の申し込みが遅かったのも原因だと思います。
じゃあどうするか、っていうと、代替策として「英語を学んでいます! 」って方をご紹介いただくことになりました。日本語がだめなら英語で。私としては、これとてもありがたくって。スペイン語の勉強に加え、英語の練習もできちゃう!
ただ、相手の方、ネイティブスピーカーでないどころかたいした英語力もない私をあてがわれても…
と心配しましたが、先生がおっしゃるには「相手の方も、ここで英語を教わるというよりも、英語を話す機会を求めて来てるから、大丈夫よ」だそうで。というわけで、相手の方には非常に申し訳ないのですが、
「スペイン語×つたない英語」でインテルカンビオ!!
そうして対面いたしました、私のパートナー・Perla(ぺルラ)ちゃん。
Perlaはスペイン語で“真珠”という意味。20歳の大学生です。英語を学びたくって、大学とは別に英語のスクールにも通っている彼女は、当然日本語なんて知らないし、日本に興味があるわけでもなく、それでも、私としては、やっと意思の疎通ができるローカルの方に出会えたもんで、うれしくてうれしくて。
「なんでオアハカに来たの? なんでスペイン語を学びたいの? 」というぺルラちゃんに、
「えー、だって、オアハカの雑貨、とくに先住民の方々の手作りの品々、ものすごくかわいいじゃん!! 」と答えつつ
「ねえ、やっぱお祭りとかでこういう服着るの? もしかして作れる? ねえ刺繍できる? 」と前のめりで質問し、日本から持ってきたオアハカの刺繍の本や、ネットで拾ったブラウスやワンピースの画像を見せて、「これ知ってる? どこで買える? 」と激しく詰め寄ってしまいました。
やや困惑気味のぺルラちゃんでしたが、「私の村はここからバスで1時間くらいのところにあって、そこでも作ってるわよ。私の村は、クロスステッチを使用してモチーフを表現している。お祭りのときは、みんな手作りのブラウスを着るし、私も習ったことがあるからできるよ」
なんと!! そんな村々をこれから巡ろうとしているんですよ私は。
「まじで!! いいなーいいなー。ほんとうにかわいいよねー。あ、かわいいってスペイン語でなんていうの!? 」
「ボニータ…」
結局1時間、英語を用いたふつーの会話で終わってしまいました。これ、インテルカンビオっていうか…
で、私は思いました。
英語(30分)×スペイン語(30分)で言語交換って言うけどさー、私のスペイン語、レベルが低すぎて30分ほぼほぼ無言で過ごすことになる…。
というわけで、方針変更。
今後も1時間英語でいきましょう。で、エクスチェンジするのは、スペイン語ではなく、「オアハカの文化や手工芸品などの情報」ということにしませんか、と。ときどき、「ねえ、こういうときスペイン語でなんていうの? 」っていうのは挟んでいきたいと思いますので、そんなときは教えていただくってことでどうでしょう。
こうして始まった我々のインテルカンビオ。これが本当に楽しくって。
翌日、ぺルラちゃんは、なんと、自分の村の伝統的な刺繍ブラウスを着て来てくれました。
オアハカの町のお土産屋さんでは、お花をデザインした刺繍が多く見受けられるのですが、彼女が着ているクロスステッチのほうが、カジュアルでシンプルでより私好み。絵柄にもちゃんと意味があり、下の帯状の部分は“家族”を表しているのだそう。
それから、村のお祭りの動画を見せてくれて、いろいろ説明してくれました。
このような伝統的な衣装、いくらオアハカっ子といえども、普段から着ているわけではありません。今ドキの女子大生ぺルラちゃん、いつもは日本にいる若い方々と同じようなカジュアルな恰好なんですよ。なのにわざわざ着て来てくださって…。
「超かわいいじゃん! 私も欲しい欲しい」と、学校帰りに連れて行ってもらったお店。
彼女が着ていたのと同じクロスステッチで絵柄がデザインされていて、彼女の村と同じエリアで作られているそうです。それを聞いて即購入。500ペソ(2,500円)。
刺繍がすごくきれいなんですねえ。
思い出の1枚となりました。
そして翌日。私も日本の文化を紹介できる何かを、と思ったのですが、
エヴァンゲリヲンのクリアファイル。
エヴァンゲリヲンのタオル。
エヴァンゲリヲ
ろくなもん持ってねーな。
なんとかぎりぎり持ってたのが、こちら。
そう、折り紙です。
そもそも別に日本に興味があるわけでもなく、日本の言葉や文化を学びたいわけでもなく、学びたいのは断然英語です、っていうぺルラちゃんといっしょに、折り紙をやってみよう! のコーナー。
そんなにいろいろ作れるわけではないので、定番の鶴。ここはひとつ、日本人の手先が器用なところを見せつけてあげようじゃないで
ペ、ぺルラちゃん、じょうずー!!
鶴、とてもきれいー!!
折り紙やるの初めてっておっしゃってたので、だいぶ高いところから「お手並み拝見といこうじゃないですか」的な気持ちでいた自分が恥ずかしくなるくらいのお手並みでしたー。
また別の日、こんどはぺルラちゃん、村に工場があるという手作りのソースをお土産にくださって。
日本のソースに少し酸味を足したような、メキシカンな味のソース。「自炊をする際には、ぜひ使わせていただきます!! ありがとうございます! 」と受け取りました。そして「オアハカの有名な食べ物っていうと、チョコレートとか、ケスィージョ(チーズ)とかがあるでしょ? このソースもオアハカ名物? あとほかに何かあるー? 」と聞いてみました。
すると、ぺルラちゃん、バッグの中から、おもむろに、白い紙にわりと厳重に包んだ何かをとりだし、そろりそろりと開けてくれます。
!?
こ、これは!?
ちょwwwぺルラちゃん、いきなりぶっこんでっきたぁぁぁ。
「これはチャプリーネス(Chapulines)というオアハカの特産品よ。mayumiにあげようと思って///」
この子はほんとうにいい子で、私ぺルラちゃん大好き。
いいでしょういいでしょう。私、虫は全然へいきなんだなあ。いただきまーす。
あー酸味のある味付けですねえ。なんというか、梅干しっぽい味? 梅味の干しエビ食べてるみたいな感じで、カリッとしてる。乾燥バッタ=チャプリーネス(Chapulines)は、スープなどの料理に入れたりもするし、サラダにかけたりもするし、そのまま食べることもあるそうです。
この日は二人してカリカリしておいしいバッタをつまみながら、オアハカのことや日本のことをお話しました。
地元っ子に聞く「死者の日」について
私が留学していたのは、メキシコの大切な行事「死者の日」という祝祭が開催される時期で、これについてもいろいろと知りたかった私は、またぺルラちゃんを質問攻めに。
メキシコの人々の死生観は、我々日本人のそれとはかなり違っておりまして…。なんというか、死は恐怖や悲しみの対象ではなく、誰しもいつかは死ぬんだから明るく笑って受け入れよう、的な。
11月1日、2日の「死者の日」には、亡くなった人々が帰ってくると言われておりまして、故人をあたたく迎えるために一晩中お墓で過ごし、それはそれは華やか&にぎやかなひとときを過ごすんですねえ。お墓で音楽を演奏する、お墓でお酒を飲みご飯を食べる、お墓をかわいく飾り付ける。私にとってはすべてが驚きの習慣。
“お墓参り=楽しい”を理解するのはなかなか困難で、ここに来るまで「ほんとうにそうなのかなあ」と疑問に思っていたのです。そうして勇気を出して彼女に尋ねてみました。
その結果がこちらの投稿です。
お墓参りは、本当に楽しい行事だそうで…。
こうやって私が死者の日、死者の日と騒ぐもんだから、「死者の日」には再びのプレゼントをくださって。
か、かわいい///
これね、死者の日にオフレンダ(祭壇)やお墓に飾るお菓子なんですって。
半透明のほうは、固い砂糖菓子で中にお酒(メスカル? )が入っています。ウイスキーボンボン的な感じ。果物の形のカラフルなほうは、カボチャを使ったスウィーツで、カボチャを茹でて砂糖を混ぜて練ったもの。日本にも、白あんで作る似たような和菓子があった気がします。
そして、ご自宅で作ったオフレンダの写真や、きれいに飾り付けられたぺルラちゃんの村のお墓の様子なども見せてくださって、一般のご家庭の死者の日の過ごし方をたっぷりと知ることができました。
こんなにいろいろいただいてしまって…。こうなってくると、私の大切なもの、例えばiPhoneとかラップトップとか、そんなんをプレゼントしたいぐらいの気持ちになりました。プレゼントしてないんですけど。
「死」は悲しくないっていったくせに
最初は、日本と中国と韓国の区別もあまりついていなかったぺルラちゃんですが、会う回数が増えるにつれて、ときどき日本について質問をしてくれるようになりました。
大きな目をキラキラさせて、唐突に「アイハブ・ア・クエスチョン!!! 」と言われるたびにドキドキしましたが、その質問は
「初音ミクは実在するのか」とか「カプセルホテルに泊まった場合、あんな狭いスペースで、荷物はどうするのか」とか「村上春樹作品の『1Q84』のタイトルの意味は? 」とか、どうしてそこに興味をもったのだろうという不思議なものばかりでしたが、それでも日本の文化を知ろうとしてくれたようで私はとてもうれしかったです。
そんな楽しい「インテルカンビオ」、本日が最終日でした。
死は悲しくないわと笑っていたくせに、「別れるのが悲しい。最後にいっしょにごはんを食べに行きましょう」と遅めのランチにさそってくれ、いっしょにタコスを食べました。いろいろいただきすぎてあれなんで、ぜひランチぐらいおごらせてくださいよ、と言ったものの、しかしタコスは1個10ペソ(約50円)。なんかお安くって、申し訳ない…。
「豚肉が乗っているのはコスティージャで、牛肉が乗っているのがアラチェラ。それから、オアハカで有名な飲み物といえば、オルチャタ(白いほう)とチラカヨ(茶色いほう)で、オルチャタの上に載っているのがTUNA。チラカヨはカラバサ(カボチャ)から作られているのよ」と、最後までいろいろ丁寧に教えてくれて、最後のランチ、とても楽しくって…
やだ悲しい。
メキシコやオアハカについて、私はとてもたくさんのことを教えてもらったし、オアハカに暮らす20歳の大学生の心がすごくすごく温かく、本当に優しくてかわいらしいということも教えてもらいました。おかげさまでオアハカの印象最高です。ありがとう。
そんなオアハカ滞在の一幕。学校の方がこのような現状を知ったら「スペイン語の語学学校なのに、2週間おまえはなにやってんだ」と怒られてしまうかもしれませんが、私は大満足です。お互いの言語を交換するはずの場で、言語ではないたくさんのことを交換させていただきました(ほとんどいただいてばかりでしたが)。
いればいるほど好きになるオアハカ。明日はそんなオアハカで「極上のリラックス気分が味わえて、美容にもよさげー」な場所をご案内したいと思います。それでは本日も最後までお付き合いくださってありがとうございました。
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