メキシコ(8)オアハカ×お墓!! 幻想的な「死者の日」限定墓地巡りツアー
現在世界一周の途にありながら、メキシコ・オアハカに居座ってしまっております。それはなぜかと言いますと、そう、「死者の日」の祝祭に参加するため。日本のお盆と似ているメキシコの風習で、毎年11月1日、2日に、亡くなった人が帰ってくると言われています。その方々を明るく迎え入れるため、人々は数日、いやもっとかな、けっこう前から準備に励み、町は「死者の日」ムード一色に塗り替えられておりました。
【現在地】オアハカ(メキシコ)
Oaxaca(Mexico)
【気温】22度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1ペソ=約5円
死者の日限定! お墓をめぐるツアーについて
ブログの内容が前後してしまって本当に申し訳ないのですが、お墓巡りツアーに参加したのは2016年10月31日。昨日の投稿でご紹介したド派手な「死者の日」イベント、
これを翌日に控えた、大切な1日です。
メキシコでは、死者の日に向けて、年にたった一度帰ってくる死者のみなさんができるだけ楽しく過ごせるように、お墓もかわいくきれいに飾り付けます。亡くなった方々は、お墓を経由して帰省されますからね。お墓をかわいくしていいのか、と、私はそこらへんがちょっとよくわからない状態ではありましたが、とにかく、死者の日の一番のハイライト、と言っても過言ではない「お墓」。
その場所を訪問することで、よりこの国の人々の文化なり感覚なりを知りたいなあと思った次第です。
私が選んだのは、現在スペイン語留学をしているICO(Instituto Cultural Oaxaca)が主催しているツアー。夜9時に学校の前に集合し、オアハカ周辺にある3か所の墓地を訪問。翌3:00に終了。
いくら治安のよい町とはいえ、こんな時間に一人で墓地をうろうろするのはさすがにはばかられますので、私にとっては非常にありがたいツアーなのです。
【ツアー参加日】2016年10月31日
【訪問した墓地】※お墓はスペイン語でPanteones
・San Miguel en la Ciudad
・en Santa Cruz Xoxocotlan
・Atzompa
【料金】
320ペソ(約1,650円)
そして、このツアーとは別に、本日11月2日、もう一か所別のお墓に、こんどは一人で行ってまいりましたので、そちらも併せてご紹介します。
【訪問日】2016年11月2日
【訪問した墓地】
・Panteon De San Felipe
【料金】
墓地自体は無料。行きはタクシーで行きましてオアハカの町中から50ペソ(約250円)。帰りは歩いて帰りました。
死者の日前日の町の様子
朝9:00から夕方18:00までは普通に授業を受け、それから町の様子を見に行ってみます。
暗くなってもにぎわっているメルカド周辺。死者の日が終わると、次に控えているのはクリスマス。ですから、死者の日専用アイテムを売りつくしてしまいたいと、お店の人もがんばっていらっしゃいます。
死者の日の祭壇「オフレンダ」やお墓に飾るドクロの人形。
欲しいよう、欲しいよう。
でもこれ紙粘土と針金、とか陶器と針金とかそんなんでできていますから、どう考えてもバックパッカー向きのおみやげではないんですねえ…。無理やり購入して、すぐ粉々にしてしまって悲しい思いをするのもいやなので、ぐっと我慢。そうだ、写真を撮ろう! 買えないなら写真だけでも、と、死者の日を前にラストスパートをかける町のみなさま同様、こちらもシャッターを押す手がラストスパート。
町のメインロードでは仮装パレードが行われ、人々は早くもドクロのメイクで町を闊歩していらっしゃいます。先に死者の日本番を紹介しちゃってあれなんですけど、いやぁ、盛り上がってきてますねえ。
そうして夜9:00。学校の前に集合です。
さあそれでは、お墓参りツアーにレッツゴー!!
と、その前に…
オアハカのお墓の通常モード
実は、この前々日、10月29日(土)に、“通常モード”の墓地を見に行ってまいりました。縁もゆかりもない外国の墓地をうろうろすることに多少の申し訳なさはありましたが、死者の日モードの墓地がいかに特別かを知るためには、ノーマルな状態も知る必要があると判断したのです。
私が行ったのは、オアハカの町中からほど近い、「San Miguel en la Ciudad」という墓地。
本日のお墓参りツアーでいく3か所のうちの最初の1か所。ここだけなら、全然徒歩で行けます。
さあ、それでは普段の墓地の様子をご覧ください。
メキシコは国民の約9割がカトリック信徒。ですから、お墓もクリスチャンスタイル。
白を基調とした墓石で建てられており、形状は様々。中にはおうちといっても過言ではないほど立派なものもあります。墓地の内側に入っていくと、共同墓地のような建物もあります。
ひとつひとつに亡くなった方が眠っていらっしゃるんですねえ。
10月28日時点では、まだ何の飾りつけもされておらず、墓地は昼間なのにとても静か。
ちらほらと、準備をしていらっしゃる方や、
これから飾りつけにとりかかるであろう人々の姿も見受けられました。
それでも通常モードのお墓は、宗教は違えど、日本のそれと同様、死者が静かに眠る神聖な空気に包まれた場所でした。
通常モードを見ていただいたところで、いよいよ「死者の日ツアー」の様子をご紹介いたします。
お墓のイメージを覆す圧倒的な「華やかさ」と「温かさ」
墓地①【San Miguel en la Ciudad】
最初に訪れたのは、上で“通常モード”を紹介した「サンミゲル共同墓地(San Miguel en la Ciudad)」。死者の日の前は、静かで落ち着いた場所でした。しかしそれが、
なんということでしょう!!
……
あれ、そんなに変わっていない。
えー、そうなんです。こちらの墓地のみどころは、こういった戸建てのお墓ではなく、いわゆる集合住宅的な、
「ニーチョ」と呼ばれるお墓。死者の日前の写真はこちらです。
こちらの墓地が作られたのは1829年のこと。それより前は、亡くなった方々は墓地ではなく教会に埋められておりました。しかしこの年、天然痘という伝染病が大流行し、教会の敷地だけでは足りなくなってしまったことから使用が開始されました。
そして1833年、こんどはコレラが大流行。あらたに作った墓地もいっぱいになってしまい、とられた対策が、このような集合住宅タイプの「ニーチョ」というお墓。日本は、一家に一基というか、代々同じお墓に入りますが、こちらは一人一基ですからねぇ。
さあ、それでは、死者の日モードのニーチェをご覧いただきましょう。
なんだか幻想的。この狭いスペースの一か所一か所に、亡くなった方が入っていらっしゃるのです。
お墓なのに、“美しい”という表現がぴったり。
あたたかなろうそくの光に照らし出された集合墓地。
オアハカの町から最も近い墓地ということもあり、観光客もたくさんいらっしゃいますが、みなさん静かにお墓を眺めていらっしゃって、かなりボリュームを絞った状態のざわざわ音、という感じです。
そう多くはないですが、何基かは、きれいに飾り付けられたお墓もあります。
提灯が、やや和風な感じがしなくもない。
そして、インパクトのある仮装の方もいらっしゃって。
こちらのサンミゲル共同墓地(San Miguel en la Ciudad)では、おそらくお墓の周りに家族が集まって一晩過ごす的な“The 死者の日”な状態はあまり見られません。それでも、普段とは全く違う、ろうそくの光に照らし出される墓地は、なんだか心落ち着く雰囲気でした。
サンミゲル共同墓地の周囲には、墓石やさんが何軒かあります。ちゃんと売り物の墓石も飾りつけられていて、すごいなあ。
墓地②【en Santa Cruz Xoxocotlan】
次に向かったのは、「ホホコトラン墓地(en Santa Cruz Xoxocotlan)」。こちらの墓地は、かなり面積が広く、さらに、新しめのお墓が立つエリアと、古くからあるお墓のエリアとに分かれています。両方見て、それぞれを比較してみるのもなかなか興味深いのですが、どちらか一か所となると、古いお墓が立ち並ぶエリアのほうがおすすめです。
■まずは新しいほうのお墓エリア
墓地のゲートを入ってびっくり!! お墓とは思えないくらいたくさんの人がいらっしゃいます。そして、黄色やオレンジのマリーゴールドをはじめ、たくさんのお花で埋め尽くされていて、華やか!
お墓の周りに集まって、ここで一晩過ごされる地元の方々の姿も。
コミカルで愛嬌たっぷりのかわいらしいドクロを用いた飾り付け。
ここから古いほうの墓地へ徒歩で向かいます。道にはたくさんの観光客があふれていて、それに合わせた移動遊園地、食べ物屋さん、お土産屋さんが出ていますので、おそらく迷うことはないと思います。
途中で見かけた大きなオフレンダ。
■古いほうの墓地エリア
昔からある墓地エリア。こちらのほうが墓石自体が古いので、なんとも雰囲気がありますねえ。
仮装をなさったお子様もいらっしゃいまして、絵になりすぎてすごい…。
11月のオアハカは、夜中けっこう肌寒く、17度前後になります。そんな中、人々はお墓を囲み、一晩中故人を想い語らいます。
メキシコの楽団を模したカラベラ(ドクロ)。賑やかで楽し気です。
あたたかな光のろうそくと、たくさんのお花で飾られるお墓。
こちらのお墓は、とてもカラフル。
たくさんのドクロであふれかえっています。
こちらはドクロの結婚式。
お墓の上にこのようなかわいらしいガイコツフィギアを飾るなんて、なんというか、遊び心の境地。
どのお墓にもマリーゴールドが備えられています。
こんなにたくさんのマリーゴールドの花を用意する理由。死者は、マリーゴールドの花びらで作られた道をたどり、マリーゴールドの花の香をたよりに帰ってくると言われているからなのです。
墓地③【Atzompa】
最後に向かったのは「アツォンパAtzompa)」という墓地。ここの墓地の死者の迎え方は独特。マリーゴールドのお花やカラベラ(がいこつ)を飾るのはほかと同じなのですが、ここの特徴は、キャンドルです。
ゲートを入った瞬間に言葉を失います。
無数のろうそくがゆらめき、人々が静かにお墓のまわりに集まっている光景。信じられないぐらい、美しいです。
背の高いろうそくで、お墓の上や周囲を明るく照らし、一晩中その火が途切れることのないよう火をともし続けます。
キャンドルの明かりは、死者の道を照らす道しるべとなり、死者はこの光をたよりに帰ってきます。
たくさんのキャンドルの炎が揺れる、幻想的で神秘的な空間。
本当に別世界に来てしまったような感覚に陥ります。お墓の周りに集まる人は、ときおり笑顔でおしゃべりしたり、お酒を飲んだり、ご飯を食べたりしていらっしゃいます。
ここがお墓だということを忘れてしまうほどの素敵な場所。
これほどまでに美しく楽しくお墓をかざり、そして生前親しかった人たちが集まってくれれば、亡くなった人もさみしくないかもしれません。本当に、最高のおもてなし。
墓地④【Panteon De San Felipe】
「サンフェリペ墓地(Panteon De San Felipe)」に行ったのは11月2日のこと。死者の日、最終日です。11月1日に子供の魂が帰ってきて、2日は大人の魂が帰ってくると言われています。
死者を喜ばせるために、精一杯の飾りつけをし、そして家族みんなでお迎えをします。
こちらのお墓は、飾り付けがかわいらしい。
バンドの演奏も一晩中行われ、不思議な盛り上がりをみせる墓地。
サンフェリペ墓地は、どこよりも、お花の良い香りが漂っていました。マリーゴールドだけでなく、様々なお花で墓地を飾り付けています。これだけいい匂いの花々で満ちていれば、きっと、亡くなった方も全然迷わずに帰ってこられるんだろうなあ。
11月2日が終わると、死者は再びこちらの世界から去って行ってしまいます。また1年後、帰ってきてくれる日を楽しみに、残されたものは、その生を満喫し、精一杯生きるのです。
お墓に行って写真を撮られる際には、撮る前にお墓の周りにいらっしゃる方に
写真を撮ってもよいですか?
Puedo tomar fotos? (プエド トマル フォトス? )
と声をかけるのがよいでしょう。そして撮り終わったら「グラシアス」とお礼を言うといいかと思います。
これが死生観の違い…?
私もね、事前にインターネットで死者の日のお墓参りについて調べたんですよ。そうすると、どのサイトを見ても、
楽しいとか盛り上がるとかにぎやかとか、
私が知っている「お墓」のイメージとはおおよそ結びつかないワードばかりが出てくるじゃないですか。「え、お墓ってそうだっけ!? お墓参りって、どうしても悲しくてしんみりしてしまうもんなんじゃないのー? 」と。なんだかそこらへんがちょっとよくわかんなくて。
言い方がおかしいかもしれませんけど、
メキシコの人々は、亡くなった方を思い出すとき「悲しい」という感情を伴わないのか。
という疑問。
話がいろいろ前後してあれなんですけど、留学中のスペイン語学校のカリキュラムに「インテルカンビオ」というのがあります。インテルカンビオ(Intercambio)。英語で言うとExchange Lesson(エクスチェンジレッスン)、日本語に訳すと言語交換。
このおかげで毎日現地の方とマンツーマンでお話をする機会がありまして、そこらへんの話はおいおいご紹介したいのですが、私のインテルカンビオのパートナーはPerla(ぺルラ)ちゃんという20歳の大学生。(このお名前の発音は、RとLの音をなかなかうまいこと出せない私としてはけっこう難しいのです)オアハカ近郊の村出身です。
言葉が通じるのをいいことに、私は彼女に、死者の日、およびお墓参りについて尋ねてみました。
「死者の日って、祝祭でなんかこうパーッとお祝いするんでしょ? ぺルラちゃんは誰と過ごすの? 友達? あ、もしかして彼氏? (ニヤニヤ)」
「家族よ」(即答)
だ、だよね。なんかごめん。
「11月1日の夜は家族で、お墓に行って、そこで一晩中過ごすの。今年おばあちゃんが亡くなったから、おばあちゃんのことを思い出しながら、お墓で食事をしたり、歌を歌ったリ。楽器を演奏しているひとたちもいるからお墓がすごく賑やかになって楽しいのよ」
「へー!! 日本にも、似たような習慣があって、8月に死んだ人が帰ってくる“お盆”というのがあるよ。でも、日本のお墓参りはもっとこう、静かで、どっちかというと悲しい雰囲気で…。私はお墓で食事をしたこともないし、お酒を飲んだこともないし、私にとってお墓というのは“楽しく過ごす場所”ではないんだよねぇ…。
ちなみに、そのー…“楽しく”っておっしゃいますが、ほんとのところはどうなの?
んー、なんていうか、ほんとはつらくて悲しいと感じているんだけど、明るくふるまうことで、気持ちも明るいほうへ持っていこう、みたいなこと?? それとも、純粋に“楽しい”と感じるの?? 」
うーん…としばらく考えた末のぺルラちゃんの答え。
「“Fun”ね!! 楽しいイベントなのよ」
そう言ってほほえむ彼女を見て、はっきりと我々の“死生観”の違いを実感しました。
ここに来る前に何かのサイトで見た、
メキシコの人々は死を「恐怖」や「悲しみ」の対象ではなく、「明るく楽しんだり、笑ったりする身近なもの」としてとらえている。
なんていう文言。ほんとに? ねえほんとにそうなの? といまいち信じられませんでしたが、
「実際そうなんだ…」
そして、「生と死は近いもので、うーん、例えるなら表と裏? 人はみんな死ぬ。だから、死んだ人を明るく迎え入れ、生きている者はその“生”を楽しもう、というのが死者の日なんだと思うわ」というぺルラちゃんの言葉を聞いて、私は思いました。
この感覚はすごくうらやましいなあと。
はっきり言って、33年生きてきた私の死生観は今さら変わらない気がします。私にとって、身近な人の死は、やっぱり悲しいしさみしい。いくら「人はいつか死ぬんだから、明るくとらえましょう」とか言われても、それは無理です。
でも、「人はみんないつか死ぬんだから、せっかくなら“生”を楽しもう! 満喫してやろう! 」という考え方は、ぜひ採用したいと思います。
本日は、死者の日を翌日に控え、死者をお迎えする準備が整ったお墓の様子をお届けいたしました。それでは本日も最後までお読みくださってありがとうございました。
MAYUMI様
はじめまして!
死者の日ドクロ祭り、俄然興味が沸きました(^^)
一昨年、メキシコ~南米の有名所を巡ってきました。
中でもメキシコがダントツに好きで、次回はメキシコを細かく
巡ってみようと思っていたので、オアハカ死者の日目指します。