マラウィ(12)笑っちゃうくらい絶望。過去最高に辛い移動はこちらです。
現在世界一周の途にある私は、アフリカ大陸の真ん中あたりでくすぶっています。昨日の深夜、マラウィのムズズからタンザニアのムベヤという町までやってまいりました。短い時間ではありましたが、ムズズ滞在を満喫し、真夜中発のムベヤ行きバスを待つ時間も、それなりに楽しく過ごすことができました。昨日の投稿はそこで終わったのですが、そのあとがね、なかなか刺激的な移動となったのでございます。
【現在地】ムベヤ(タンザニア)
Mbeya(Tanzania)
【気温】24度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】10タンザニアシリング=約5円
ムズズからムベヤへの行き方(夜行バス)
バスのチケットは、朝すでに買ってあります。ムズズからムベヤまで15,000クヮチャ(約2,250円)。真夜中、00:30、バス会社のオフィスでバスを待っていた私をスタッフさんが呼びにきました。
「ムベヤ行きのバス、もう近くまで来てるから、乗り場にいくぞ。荷物を持って」
おー! やっと来たかと立ち上がり、重い荷物を持ってスタッフさんの後についていきます。バス乗り場はバスターミナルから10分ほど歩いたところにあるガソリンスタンドでした。ほどなくしてバス到着。
わあ!! バス、思ったよりちゃんとしてる!!
意味不明なデザインですが、こんな大きなバスとは思っていませんでしたので、かなりテンションアップ。
バスの荷物入れに大きいバッグを入れて、ガソリンスタンドの売店でお菓子を購入。バスに乗ってすぐ寝られるかわかんないから、お菓子食べたり音楽聴いたりするのもいいよね、なんて。そうしてバスに戻り、いそいそと乗車。座席の指定なんてありませんから、空いている席を探します。
空いている席、空いている席、空いている席、空いて
ないね。
一番後ろまで歩いてみましたが、空席は見当たりません。
あれあれ、私の探し方が悪かったかな? と思いつつ、バス会社の人に尋ねます。
「席が空いていないように思うのですが、これはいったい…」
「通路だ」
は?
「通路の床に寝るんだ」
チョットナニイッテルカワカンナイデス。
「他にも寝てる人がいるだろ。通路に寝るんだよ」
…嘘でしょ!?
旅を始めて3ヶ月半、それなりに大変だった移動もありました。しかし、それもまたいい経験だとふんばってまいりましたが、
今回ばかりはそうも言ってられません。
私ちゃんとチケット代払ったのになんで床に座らなくちゃいけないの!?
日中のちょっとした移動で席なくて立ってろ、ならまだ分かるんですけど、夜行バスでこれはない。
ふつふつと怒りがこみ上げてきます。
これがマラウィのやり方ですか。
バス会社の人、席確保したって言ったじゃん。席って通路のことだったの? 「あー窓側の席いっぱいなんだー。景色とか見づらいけどしかたないか、通路側で我慢します」とかじゃないですから。
通路側ではなく通路。
これは事前に報告の義務があるでしょう。
「床だけど、いい? 」って。
それで私がどう判断したかは今となっては分かりません。「えーじゃあ乗らない」と言ったかもしれないし「それでもいいから乗ります」と言ったかもしれない。でも、なにも知らずにいきなり床は嫌です。マラウィでは報告、確認の必要もないくらいこれが普通? だったら正規料金の半額くらいでいいんじゃないでしょうか。
「こんなん乗れっかー!! 」バスを降りたい気持ちでいっぱいでしたが、真夜中に町外れのガソリンスタンドにひとり放り出されても、行くところがありません。それに、タンザニアでもいろいろ行きたいところがあり、時間を無駄にしたくない。これに乗ってくのが最善って分かってる。分かってるけどでも
腹がたつぅぅぅ。
関係者全員に騙された気分。せめてバスに乗りこむ前に教えてくれれば、荷物入れのバッグから毛布なりいっそ寝袋なり取り出しておいたのに。
AM1:00 それでもバスは容赦なく発車し、私は仕方なく真ん中やや後方の床に座り込みます。
ここが私の指定席。
ってか痛ってぇぇぇお尻痛いお尻痛い。
振動がダイレクトー
あたりまえですが、日本の観光バスみたいにふかふかじゃないですからね。
アルミ? スチール? なんらかの金属です。お尻の痛さがハンパない。
脳までシェイクする瞬間的なマグニチュード10の縦揺れが、絶え間なく襲ってきます。
舌噛む舌噛む。
真横に座っていたおじさんが、自分のシートに寄りかかっていいよ的なことを言ってくれましたが、キーーーとなっている状態の私には、もはや、焼け石に水。寄りかかるとかじゃなくて、その席をよこせ。と内心思いはしましたが、
「大丈夫です。ありがとうございます」と答え、通路にあぐらをかき買ったばかりのビスケットを貪り食います。
今の私はこのビスケットの空き箱に等しい。
しばらくすると、私の前に座っているかなり体格のよいおばさまが眠りに落ちたよう。全体重が私の膝から下にかかってきてもうなんなんだこれは。こんな状況で寝られるとかあなたは神か。
バスの中で流れている大音量のアフリカンなミュージックにもイライラし、すぐさまイヤホンを耳に。
こんなときはJ-POP。昭和の応援ソングです。
『ファイト』中島みゆき
選曲間違えたあぁぁぁあ泣いてしまう泣いてしまう下手したら嗚咽。
『負けないで』ZARD
こんなに爽やかに応援してもらうのが申し訳ないほど、どろどろとした負の感情が煮えたぎっています。
『人にやさしく』THE BLUE HEARTS
き が く る い そ う。
あー、これだわ。ぴったり。今の状況にすごく合ってる。夜行バスで床に座る羽目になったときのテーマソングに認定。
ガタガタガタガガガガと揺れるバスの床で昭和の応援ソングメドレーをエンドレスで流すことで、なんとか耐えること5時間。お尻の痛さと疲れと眠気と、なんとも言えない屈辱感。ほんときがくるいそう。
4:00ボーダー着
外はまだ真っ暗ですし、ボーダーのゲートオープンは6:00
タバコを吸いに外へ出ると、中で待ってろと言われる。そんなこと言われても私の指定席は床なので、ちらほら出入りする乗客の邪魔になるだけ。無視して車外に出ます。
バスの外ではよく分からない人たちがうろうろしており、用もないのに無意味に「ヘイ、チーナ」とか言ってくる。いつもなら別に気にならないんですけども、このタイミングで言われるとほんとにイラっとします。「うっせーな」と日本語で返答。
少し明るくなり始めると、どこからともなく闇両替屋がやってきて、マラウィクヮチャからタンザニアシリングに両替しないかと言ってきます。1クヮチャ=2.7シリングとのことで、あんまよくないなと無視していたら、
1クヮチャ=2.9シリングと言いだした。これは今現在なかなか悪くないレートなので「あ、じゃあ両替するよ」と言って残っていたクヮチャを手渡すと、だいぶ安い金額のシリングを差し出してきて「2.9じゃなくて2.09だ」と言う。「ふざっけんな、返せよ」と日本語で怒鳴りお金を取り返す。
今の私はとてもとても機嫌が悪い。
6:15 マラウィ側のイミグレがオープン
パスポートと出国カードを出すと、パスポートに入国スタンプがないからと別室行き。
ビザのシールの真上に押されたスタンプが入国スタンプだと何度説明しても「これはビザのスタンプでしょ」と言って聞く耳持ちません。
「なぜ入国スタンプがないんだ」という質問ばかりを繰り返されますけども、
知らねーよ、こっちが聞きたいよ。あんたんとこの空港職員が押したんでしょうよ。
もういいからさっさと出国させろよという気持ち押し殺しつつ、押し殺せてなくて前面にだしつつ露骨に不快感を表す私。「だーかーらー、スタンプの日付よく見てごらんなさいよ」
結局スタンプの日付が入国の日付で間違いないことが分かり、無事出国。
ぁあーもうめんどくせえなあ。
徒歩でタンザニア側にむかいます。
はい、さよならマラウィ。
はじめまして、タンザニア。
タンザニア側のイミグレで、入国カードを記入。ビザを50ドルで購入。残っていたマラウィクヮチャは結局タンザニアに入ってすぐ右手の、ATMの近くにある銀行で、正規ルートでタンザニアシリングに両替。レートは闇両替屋が提示したのと同じでしたが、これはもう気持ちの問題なので。
タンザニア側のイミグレオフィスで、荷物チェック。これはもれなく全員でした。
なぜか私のバックパックが執拗に調べられ、中身をぜーんぶ出してさらにそれをひとつひとつ開封・開梱させられます。
これ詰め込むのどんだけ大変か、ちょっと想像してみろ。
そして、
これはなんだ。塩です。
これはなんだ。風邪薬です。
これはなんだ。洗剤です。
あらゆる白い粉末状のものに対する問答は、これ意味あんのかな。
最終的にイミグレのスタッフは、ダイビングのマスクとダイビングコンピュータが入ったプラスチックのケースがとくに気になったようで、大事そうな書類が積み重ねられているメインのテーブルにわざわざ運んでいき、私にふたを開けさせます。
すると、ここで
ありんこ爆弾炸裂。
小さい蟻めっちゃでてきたーザマァ。
大慌ての職員さんたちを前に内心ほくそ笑む私。あはは。マラウィ湖からついてきたんだねー!! さーせんっwwしてやったり、と非常に満足感を覚えました。
そうこうしているとバスのドライバーが私のところにやってきて「お前待ちだぞ」的なとこを言ってきます。腕時計を指すジェスチャー。イラっとするわぁ。
知ったことか。
もの凄く時間をかけてゆっくりゆっくりパッキングしてやりました。
今の私はいつもに増して性格が悪い。
こうしてマラウィとさよならし、タンザニア入り。
私、マラウィ全然はまってなかったなあ。もちろん良い部分もたくさんあったのですが、また来たいかっていうと、そうでもないです。今日の仕打ちを抜きにしても、あんま好きじゃなかったです。なんでしょうねー。なんだかいまいちよく分からない国でした。
さあ世界一周11カ国目となりました。
タンザニア。
タンザニアでの最初の目的地は「アルーシャ」。まずはサファリツアーに参加しようと思います。サファリのこと、あんまり詳しくない私がインターネットで調べた情報によると、タンザニアでのサファリは、アルーシャで手配するのが一番オーソドックス。
ンゴロンゴロ保全地域、セレンゲティ国立公園というサファリスポットに一番近いそれなりに大きな町です。
というわけで、目指す目的地は「アルーシャ」。タンザニアってものすごく広いですから、1日ではたどり着けません。地図はこちら。
マラウィから北上なさる方は「ムベヤ」にてバスを乗り換える必要があります。そしてムベヤからアルーシャは、なんと、ダイレクトバスが走っています!
国境を越えてからは、床に座らず、ずっと立っていましたが、ガタガタと揺れるバスに4時間立ちっぱなしはなかなかに体力を削られます。早くムベヤについてくれと願いながら、イヤホンから流れる大音量のブルーハーツに集中。
ムベヤまではマラウィとの国境から約4時間。
11:00過ぎにムベヤの町到着。到着したのは、バスターミナルではなく道路沿い。バスターミナルからはかなり距離があります。
どこまでもメリットないなあこのバス。
バスを降りるとたくさんの人が集まってきて、タクシータクシーと呼びかけられます。タクシーは乗りたいんだけど、果たして私はどこへ向かうべきなのか…
タクシーのドライバーさんに、今日アルーシャ行きのバスが出ているか尋ねます。夜行バスがあるなら乗っちゃおうと思ったんですがね。
しかし、バスは毎日早朝出発とのこと。途中のドドマとかもないの? と聞くと「タンザニアでは、夜行バスは禁止されてるから、それなりに距離がある町まで行くバスは、基本朝発になるんだ」と教えてくれました。
そして「アルーシャ行きのチケットを買うならバスターミナルだな。すぐチケットが買えるように近くの宿を教えてやるから」と。ムベヤのことがなにもわからないですから、このタクシードライバーさんを信じてついていくことにしました。
私がドライバーさんと話しているあいだに、ドライバーさんとは別の男の人が私の荷物を勝手に車に運び入れてくれていて、それはありがたかったのですが、3,000シリング(約150円)払えとおっしゃいます。この金額は、町中をタクシーでどっかまで移動できる額です。
「数メートルの移動、しかも勝手にやっといてそれはないだろ。こっちがここに来るまでどんだけ大変な目にあったか分かってんのか」と無性に腹が立ち、「今着いたばっかで現金ないんだよね」と答えるとそれでも払えと引きません。
無視してタクシーに乗り込みますが、男の人はドアを手で押さえて閉めさせないようにしている。
「3,000シリング!! 」「アイドントハブ、キャッシュ…」それなりに申し訳なさそうに。
「3,000シリング!! 」「ソーリー、ノーキャッシュ」めんどくせぇなあ。
「3,000シリング!! 」「ノーキャッシュ」少し怒
「3,000シリング!! 」「ノーキャッシュ」わりと怒
「3,000シリング!! 」「ノーキャッシュ」はっきり怒
「3,000シリ「金がねーっつってんだろ!!!!!」
見かねたドライバーさんが男の人にもうあきらめろ的なことを言ってくれ男の人はしぶしぶドアから手を離し去って行きました。
3,000シリング、あったんですけどね。今の私はいつもに増していじわる。
途中でATMに寄ってもらいつつ、タクシーで走ること20分、ムベヤの長距離バスターミナルに到着。場所はこちらです。
タクシーを降りると、ものすごくたくさんのバス会社のチケット売りが集まってきてみなさん口々に「どこ行くんだ」と問いかけてきます。
その勢いに圧倒されていると、タクシードライバーさんが車から降りて私の先に立ち、そこらへんの客引きをすべて無視して、アルーシャ行きのバス会社のオフィスまで連れて行ってくれました。
オフィスでアルーシャに行きたいと言うと、座席表を手渡され「好きな席に名前を書いて」とのこと。
イ、イスに座らせてもらえるんですね。
この喜び、わかりますか?
空いていた窓側の席「座席番号9」に名前を書いてお金を払います。
ムベヤからアルーシャまで56,000シリング(約2,800円)。そしてチケットを手渡され、バスの予約完了。次はイスに座れるという喜びを噛み締めながらタクシードライバーさんにお礼を言い、バス停からすぐの宿に向かいます。
ムベヤの長距離バスターミナルから道路を挟んですぐ向かいには「New Millenium Inn(ニューミレニアムイン)」という安宿があり、便利な立地なのでここに泊まる方が多いみたいです。
旅の先人の方々のブログでそれを知った私もそちらに歩いて行ったのですが、
ここでふとミレニアムのすぐ後ろにある宿に目がとまります。写真右のやつ。
身も心も疲れ果てて、普通の精神状態じゃないですからね。こんなんを見て、
わあーこちっちに泊まってみよう、なんて思ってしまったわけです。なんでしょうね、これ。あまりにゆるい。
怒りとイライラでこわばっていた気持ちが一気にほどけてゆきました。宿の名は「Mkewzulu Hotel」。(ダブルルーム1泊30,000シリング:約1,500円)敷地内にはゆるくて意味不明な脱力オブジェが満載です。
私は先日訪れたマダガスカルで「タクシーブルース」という公共交通手段に出会いました。それがまあなかなかにエキサイティングな乗り物で、正直、
「これ経験したら、この先どんな乗り物でも全然大丈夫でしょ」
みたいな自負がありましたが、まだ上がありましたね。あ、上っていうよりむしろ下。
やれ座席が狭いだのやれ座席が汚いだの足元窮屈だの三人掛けなのに四人座るだの、
そんなことは問題ではありませんでした。
少なくともそこに座席はあるのだから。
本日の貴重な経験により、座席がない可能性について考えることができるようになった今、またひとつレベルが上がったなあとしみじみ感じます。
この先どんな状態の乗り物に乗ることになろうと、私は笑顔でそれを受け入れることができるでしょう。
最後に、このルートで私のとった方法は、誰にもおすすめいたしません。勝手にリンク貼りますけど、こちらの方が、ダイレクトではなくミニバスを乗り継いで行かれてますので、ぜひこっちを参考にしてください。
ただ、中には怖いもの見たさといいますか、そんな言うならちょっとやってみようかな、なんてドM心がむくむくと湧き上がってこられる方もいらっしゃるかもしれません。そういった方は、ぜひチャレンジしていただいて、もしよければその感想を教えてください。
それでは本日はこれにて終了。とりあえず寝ます。
荒れに荒れたこの投稿。初めて当ブログを訪問なさった方、違うんですよ、いつもはこんなんじゃないんですよ。本来はもう少し穏やかでほんわかした、ことリップのようなブログなんです。
最後に、すさんだ心を見事に中和してくれる、素敵な宿のオブジェで締めくくります。にゃー
終わりよければすべてよし。ありがとうございました。
マユミさん、いつになく荒れてらっしゃいますね・・・。
バス移動、かなり過酷だったようでお疲れ様でした。
ただ、その他のこまごまとしたトラブルについては、
普段のマユミさんならスルーされてそうなものなので、ちょっと意外です。
きっと、アフリカでの長旅の疲れがここで出てしまったんですね。
とはいえ、こういう赤裸々な気持ちを書いてくれるのも一読者としては嬉しかったり。
素敵な宿で疲れを癒やして、心機一転、
タンザニアを楽しんでいらっしゃることをお祈りしています。