タンザニア(14)ジャパニーズ・テーラー(偽)の腕の見せ所@ザンジバル
昨日はストーンタウンのショッピングを楽しみました。しかし、貧乏バックパッカーの私にはなかなか手が出ない価格帯のものが多く、見るだけで買えないという若干フラストレーションのたまる状況に。しかし、様々な文化が交錯するこの町、わたしけっこう好きでして、本日もここに滞在する予定にしております。
【現在地】ストーンタウン/ザンジバル島(タンザニア)
Stone Town/Zanzibar Island(Tanzania)
【気温】28度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】10タンザニアシリング=約5円
タンザニアの布に夢中です
ストーンタウンの町中でみかける、アフリカの布を使ったアイテムたち。洋服や小物など、センスの良い品物が揃っていてここがアフリカとは思えないくらい。おそらく欧米やアジアのデザイナーの方々の手が入っているので、洗練されたデザインに仕上がっているんですよね。
非常に素敵ではありますが、お値段は全然素敵ではありません。ワンピースなんて買おうものなら、平気で1万円超えてきます。
セーブマネーしなければならない私にとって、これは大金。非日常着であるチャラついたワンピースにここまでは出せないのです。こんなときは…
そうだ!! テーラーさん行こう!!
高額すぎてワンピースが買えないのなら、先日購入した布で作ればいいじゃない!! 一昨日、しっかりちゃっかり布の方は購入済み。(投稿はこちら)
テーラーさんてww
暇か!?
暇だ!!
というわけで、テーラーさん探し。ここザンジバルは、東アフリカの布、発祥の地と言っても過言ではありませんから、びっくりするほどたくさんの布が売られています。そしてその数に比例して、テーラーさんの数もたくさん!! 選び放題なのですが、本日の私のわたしの目標は…
「テーラーさんのミシンを使ってみたい」
やっぱ見てるとねー、どうしてもやってみたくなっちゃう。なかなか機会がなくて、ミシンを自分で操縦することができませんでしたが、ここストーンタウンならなんとかなるんじゃなかろうか。
まず、個人経営のテーラーさんで、お店にミシンが1台しかないところは避け、なるべく大手を探します。こちら個人事業主。
大手、つまり、店舗内に数台のミシンを所有し、複数の従業員が働いている比較的大規模な店舗。
さらに言うと、誰も使用していないミシンがあり、従業員が暇そうだとなおよい。ミシンは電動限定。できればやさしそうな店長希望。
そんな条件をもとに、迷路のような路地を歩き回っていると、発見しましたよ。よさげなテーラー。
入り口からさりげなく中を覗き込み、上記条件に当てはまるかを確認します。ミシンは5台ありすべて電動。店内にいる従業員は3人。
よしよし、ここならいけそうだ。
そして店長と思われるおじさんに勇気を出して聞いてみます。
「あのー、つかぬことを伺いますが、ミシン、使わせていただくことってできます? 」
「え、ミシン? 」
ざわつくテーラーさん一同。断られたくない私は必死でたたみかけます。
「そう!! ミシン!! 使いたいんです。だめですか? いいですよね? 使用料は払います!! いくらぐらいお支払いすればいいですか? 」
とここでなぜか慌てるテーラーさん一同。
「え、ちょ、ミシンは売れないよ!!
いくらかって言われても(汗)え? 欲しいの? ミシン」
えぇぇぇええっ!!! これには私も大慌て。
「いやいやいやいや、ミシンの値段を聞いたのではなくって(汗汗)」
いくらミシンを使ってみたいからと言って、さすがにミシンをお買い上げってわけにはいかないのです。
従業員さんたちは、外国人相手に仕事をしているわけではありませんので、基本的にスワヒリ語。英語はほとんど通じません。
「違うんです。違うんです。そうではなくって、ミシン、使いたい、ダダダーっと、ね? ダダダーっと。使うだけ。買わない」縫うジェスチャーをしつつ、一生懸命訴えます。
両者あわあわしながらいまいち意思の疎通ができていない状態ですが、ここでドレッドヘアーのイケイケな感じの若者登場。彼もこう見えてテーラーさん。英語を話せそうな彼に「ミシンを1時間ほど借りたいのですが…」と言うと、店長と思われるおじさんにスワヒリ語で聞いてくれました。
店長からの返事「おまえはこのミシンを使えるのか!? 」(訳:Mr.ドレッドヘアー)
やだー、何言ってるんですかー。当り前じゃないですかー。
「アイ・アム・ジャパニーズテーラー!!! (嘘)」
こうでも言わないと使わせてくれない気がしました。
Mr.ドレッドヘアーがこれを訳すと、店長は「そうかそうか」と満足そうにうなずいて、1台のミシンを指さし「使っていいよ」的なことをおっしゃいました(たぶん)。
私にあてがわれたのは左の一番手前のミシン。ミシンレンタル料金(糸代込み)は1時間10,000シリング(約500円)で業務提携が成立。きっと旅行者にミシンを時間貸しするのはこれが初めてだと思いますので、金額も適当な感じ。
念願のテーラーさんのミシン!!!
やったー!! うれしー!! なんて喜んでいられたのは一瞬だけ。
ふと我に返りよくよく考えてみます。
「これから私、服を1着作らなきゃいけないんだ。しかも1時間で…」
床に生地を広げフリーズ。勢いだけで行動し、あとで後悔するパターン(私あるある)。
アイロン無し、型紙無し、定規無し、採寸無し、待ち針無し、仮縫い無し、印をつけるのも無し。ほとんど何もありません。
あるのはジャパニーズ・テーラー(偽)としてのプライドだけ。
いきなり断裁、そのまま縫製。洋服づくりハードモードですが、自信満々にジャパニーズテーラーだと名乗った手前「やっぱ無理でした」というわけにはいきません。
念のため言っておきますが、今までテーラーという職に就いたことは一度もありません。
と、とりあえず切ってみようかな、生地。
えいやあとばかりに、フリーハンドでジョキジョキと断裁。もう後戻りはできません。あぁこれ専門学校の時の先生が見たらものすごく怒りそう。
印も付けないし、長さを測ったりもしないので、あっというまに断裁完了。
さあいよいよ縫製です。こちらのテーラーさんのミシンは電動ミシンで、足元のペダルを踏むとスタートするタイプ。ミシン自体はガチ工業用ではありますが、使い方としては家庭用と変わりません。
ところが…このミシン使ってみるとかなりのじゃじゃ馬。じゃじゃ馬どころか、
完全に、制御不能です!!
エントリープラグに座ったらいきなり全力疾走。このミシンと私、全くシンクロしていませんので、0.2秒くらいで暴走モード突入。
え、ちょ、ま…なにこれ。
うわぁぁぁこりゃ難しいわあ。ほんのすこーーーしペダルを踏んだだけで、とんでもないスピードでステッチがかかっていく。ダダダダダダって。
いや、ダダダダダダダって。
どこを探してもスピード調節ダイヤルなんてないし、ものすごく注意深く踏んでも、ゆっくりできやしない。シンクログラフはんてーん!! やってみてわかりました。
タンザニアのテーラーさんすごい。
暴走する初号機をやすやすと乗りこなし、華麗に使途を撃退。ほら、ゼルエルの腕みたいなやつ持ってる。
いやーこれにはびびった。ATフィールド中和しまくり。完全に職人技ですよ。
私、今まで日本の高性能なミシンに甘えてたなあ。
スピード調節ダイヤルもしくはレバーはデフォルト。さらに、繊細な脚の動きや角度に高感度で反応してくれるペダルまで付いて、至れり尽くせり。そりゃ縫い目もまっすぐ、ステッチ幅も均一にできて当たり前です。それに、ある程度誰がやっても仕上がりは安定するでしょう。
しかし、タンザニアのミシンはまるで暴走する初号機。
パイロット(テーラーさん)次第でパフォーマンスに大きく差が出ます。私じゃ全然言うこと聞かない。
簡単そうに見えて、このミシンの扱いはものすごく難しい。
集中しないと、指、縫っちゃう。海外旅行保険は、ミシンを使用した際の事故にも適用されるのかなあ。 そんな疑問が脳裏をかすめます。
と、とにかく集中集中。
そりゃね、髪の毛も乱れますよ。
バッサバサ。
ここはクーラーもないし、気を抜くと汗がこぼれ落ちる暑さです。しかし、テーラーさんの仕事の邪魔をしてはいけませんし、1時間だけという条件でお借りしているわけですから、手を休める暇はありません。
とにかく無心で作業に没頭。縫ったり、切ったり、生地を裏返したり、ひもを通したり、いろいろとがんばりました。集中していると、時間は光速で過ぎていくもので、あっという間に1時間。そして時間ぎりぎり、どうにかこうにか完成しました!!
渾身のワンピース。
写真暗いんですけど、生地はもう少し明るめの、青と緑の間くらいの色。オレンジの血しぶきみたいなやつがアクセントになっていますww
先日作ったワンピースの生地は2mしかありませんでしたが、今回は6mあります。たっぷりと生地を使えますので、ボリュームのあるゆったりワンピースに。リラックスー。
さっそく完成したワンピースを着用。すると、ずっと私に無関心そうに見えていたお仕事中のテーラーさんたちが作業の手を止めて褒めてくれました。スワヒリ語でしたので具体的になんとおっしゃっているのかはわかりませんが、親指を立てて「グー」っていうやつをやってくれたり、拍手をしてくれたり。
テーラーさん、私のわがままを聞いてくださってありがとうございました。今考えると、やりたい放題すぎなんじゃないかと思うのですが、素敵なワンピースを作ることができてとてもうれしいです。
私、日本に帰ったら、テーラーやろうかな。路上で。
いろんな意味でアウトー!!!!
タンザニア随一の観光地、リゾートアイランドの中心地「ストーンタウン」は、とにかく物価の高さが恐ろしすぎて、たくさんのお土産を買うのは難しいです。しかし、おかげさまでテーラーとして働くという新たな可能性について考えることができてよかったなあ。脳内でそんな楽しい妄想を繰り広げながら眠りに着きます。それでは本日も最後までお付き合いくださってありがとうございました。