送別会で感じた「復元できない恐怖」いやiPhoneの話ではなくって。
いつも会社を辞めるときに思うんですけど、あ、そんなに転職を繰り返してるわけじゃないんですよ。でも会社を辞めるのは、今回が初めてではない。辞めるタイミングでいつも考えるのは、人間関係のことだけ。辞めるのを決断する前に、少しだけためらわせるのも人間関係ってやつだ。
仕事に関しては、言ったらもうだいぶ飽きちゃってますから、全然心残りはない。会社の圧倒的な安定とたいして頑張らなくてもお給料をいただける素晴らしい労働条件はかなり惜しいなーとは思ったけど、もう吹っ切った。今となってはこの大企業というものにもさほど未練はない。
でも人間関係だけはそうも言ってられない。今は毎日会って、くだらない話とかして、たまに真剣に仕事とかして、いっしょに飲みに行ったり、休みの日に集まったり、そんなことをしてる人たちと、もう同じ空間で働くことは無くなるんだなーって。さすがにね、これに関しては「心残りも未練もないっすー」つって笑い飛ばせない。
そうやって私の後ろ髪を執拗に引っぱってくる人たちが昨日送別会をしてくれた。
普段から、人は人、自分は自分を頑なにつらぬき、決して愛想がいいとは言えない私。
信頼関係があればベタベタしなくていいと思っているので、好意とか信頼してる感は伝わりづらかったかもしれません。
「頼りにしてますぅ」とか言ってキャッキャしながら近づいていくわけでもなく、自分から飲みに誘うことも皆無、キャリア浅いくせに偉そうに自分の意見を押し通す私は、扱いづらいことこの上なかったでしょう。
なにをするにも他人に厳しく自分に甘い性格なので、仕事でからむとホントめんどくさかったと思います。プレゼン苦手、得意先に行くのも大嫌いなくせに、社内では異常に気が強く「自分は間違ってない」と判断すると絶対に譲らない頑固なスタイル。つまり、可愛げのない微妙なお年頃の女性社員。ちょっと絡み辛かったかもしれません。
でもなぜかよくしてくれた人たち。
みんな年度初めのバタバタですごく忙しいはずなのに、なんと参加者が全員揃った状態で会をスタートできるという奇跡。こういうのって何人か遅れてくるのがデフォルト。ほんと、ありがたいことです。
おしゃれなイタリア料理屋さんで、おいしいものをたらふく食べて、みんなはおいしいワイン、私はおいしいカシスウーロン(安定の)でいい感じに酔っぱらった。海外旅行好き、そして海外に詳しい方々も多いので、思い出話というよりは、この先私が行く国々の話や、みんなが今まで行ってき場所のことなど、素敵な話に花が咲いた。
この日私は、どうしても一言モノ申したい人がいた。隣の課の課長。直属ではなく隣。親戚のおじさんぐらいのポジション。でも、直属の100倍、いや1000倍、人としてまともだし信頼できる。そして図らずも、世界一周への決意を固めつつある私の背中を、けっこう序盤に押した人だ。
まだ自分の中での決心も固まっていない半年前。世界一周をにおわせるあやしいそぶりなんて見せてないし、世界一周しちゃう感じがあふれ出てる段階でもなかった。
そんなときに、突然呼び出され、めずらしく一緒に外出することになった。仕事関連の大規模な展示会に行ってみようぜ、的な。暇だから、的な。その車中で、彼が突然言い出した。
「俺さー、女性はもっと自由に生きていいと思うんだよなー。いや、男とか女じゃないとは思うんだけどさー。俺の奥さんもね、かなり自由に好きなことやってんだよ。で、そこからの収入っていったらそう多くはないんだけど、そのぶん俺がこうやって、とりあえず安定したとこで働いてるわけじゃん。そうしたら、2人で生活していくぶんには全然困んないし。俺は奥さんがやりたいことやってんのすげーいいと思う。だからそういうパターンもあるんじゃない? っていう話。
おまえさー、自分一人で生活していかなきゃって思って一生懸命やってるかもしんないけど、そういう旦那さんを見つけるっていうのも一つの選択肢だと思うよー。そこはある意味女性の強みなんじゃねーの」
え、この人なんか知ってんの…!?
って思った。私自信、まだ仕事辞めて世界一周行くって決め兼ねてるのに、なんでこんな意味ありげなこと言ってくんの!? って若干怖くなった。
このとき私は、世界一周と退職に関してすごく悩んでいた。こんなに安定感のある一部上場企業を辞めるなんて、常識で考えたらありえない。給料は高くないけれど、病気をしたりケガをしたときしっかり助けてくれる制度があるし、結婚や出産、子供の学校入学などいろんなタイミングで祝い金なんてものをいただける。あと家を借りるとき、会社名を書いとけば超すんなり審査通るし、マンション買うんだったら銀行からの融資もものすごくスムーズに受けられるらしい。
あたたかな家庭を持ちそれを支え、さらには立派に子育てもする、みたいな何かしら守るべきものがある人にとって、ここは最高の場所。それは私にも分かる。
今ここを辞めたとして、こんな立派な会社には確実にもう入れない。言い切れる。仕事辞めて世界一周はいいけど、帰ってきてからどうすんの? もはや会社の規模とか労働条件とかにこだわってらんなくなるんだよ。雇ってくれるところがあれば御の字。手に職もなければ、自慢できる特技もない。そんな住所不定無職の30代中盤。この先就職できるかどうかもあやしい。そうなったら、どうやって生きていくの? 仕事もなくて、家もなくて、路頭に迷うかもしれない。最終的にはブルーシートと段ボールでできたおうちに住むことになるんだ…。
このように、将来の仕事や収入に関して強い不安を抱いていた私は、彼の言葉で急に視界が晴れた気がした。
さすがに、全力で人にすがって生きていこうなんて考えてはいないけど、たった一人で生きていかなきゃいけないわけじゃないってことに気付いた。
「mayuが楽しんでやってるんだったら、収入なんかなくっても俺は応援するし、支えていくよ」みたいな素晴らしい旦那さんを見つけられるかどうかはちょっと自信がないですが、そこまでいかなくても、最悪実家に帰れば私は路頭に迷わない。少なくとも、住む場所は確保できる。あ、これなんとかなるなーって。もうちょっと気楽に考えていいんじゃねーの、って。
「本当に困っています」って真剣に頭下げたら、知り合いの一人や二人「しょーがねーな、結婚してやるよ」みたいに言ってくれるかもしれないし(言ってくれるわけがない)。
そうやって、図らずも背中を押した課長にお礼を言った。「あの時はありがとうございました。何か知ってたんですか? 」
「ぜんっぜん知らねーし。知ってたらむしろそんなこと言ってねーし」って。
そりゃそうだ。管理職が(しかも隣の課)、辞めるか辞めないか瀬戸際の人の背中を力いっぱい押すような真似、しちゃいけません。でもしっかり押したということをここに明記しておきます。
餞別の品として、私が世界一周に持って行きたいと思っていた「ガミラシークレット」の石鹸をいただきました。
びっくりー! よく分かったねー! 私が欲しかったものー。だって、全力で「よこせ」ってブログに書いたもんねー。
この会のメンバーに1名ほど私のブログの読者が紛れ込んでいました。不器用だけどがんばりやさんなかわいい妹的存在。送別会の数日前にね、「mayumiさんがブログで紹介してた石鹸って、どこで売ってるんですか? 友達にあげようと思って…」って聞いてきました。
「うん、知ってる知ってるー、もうすぐ私の送別会だもんね! 石鹸くれるんだね! うれしい! 」って内心思いはしたものの、全くの平然を装って「伊勢丹とかルミネに売ってたような気がするー」つって返しましたけどね。
そういう子なんですよ。本当、いとおしい。このくだりまるごとワンセットでキュンとする。わざとやってんのかなー。
で、餞別をいただいたあとは、やっぱこう最後に辞める人から一言みたいなのあるじゃないですか。私は人に注目される中でしゃべるのとかものすごく苦手ですから、これほんとに緊張していて。でも避けては通れないわけです。だって本日の主役は私。しっかり感謝を伝えなきゃなーみたいな気持ちでいっぱいです。
今日は私のためにこのような会を開いてくださってありがとうございます。
「ちょwピ――とかやめろってーwww」
思い返せば、入社してもう6年が経ちます。
「ピ―――――――――つってさww」「ピ――とか、まじもうピ―――www」
辛いこともありましたが、そんなとき支えてくださったのは、
「ピ――――とかやべーww超うけるーwwww」
みなさんと出会えたおかげで、
「ギャハハハハハじゃあピ―――は? ピ―――つってねw」
はい、これね、下ネタの応酬。激しく飛び交う卑猥な言葉の合間に、耳をすませばかすかに退職の挨拶が聞こえてくるぐらいの感じ。あ、そういう感じ? 今日これそういう感じの会?
下ネタというのはどう転んでも盛り上がってしまう最強のコンテンツですから、一向に終わりが見えません。
で、「ちょっと私タバコ吸ってきます」(席を離れる)
↓
戻ってくる
↓
みんなコートとか着始めちゃってる
おいぃぃぃ!!!!
まあいいでしょう。別れとはかくあるべき。準備ブログでよく見るやつとは全然違う感じの送別会でした。泣いた場合を想定して、ポケットにハンカチをしのばせていた意味。
たまにさ、iPhoneおかしくしちゃって初期化することってあるじゃないですか。あんまりないですか。私はたまにあるんですけど。よくわかってないのにけっこう積極的な行動にでちゃって、知識が浅すぎて途中であきらめるパターンのやつ。
iPhoneがおかしくなってにっちもさっちもいかなくなった場合、一旦初期化して、出荷時の状態に戻してからとってあったバックアップ使って復元するんです。
やったことある人は分かると思うんですけど、これやるときね、かなりドキドキする。
ほんとにちゃんと復元できるかな
って。失敗すると、電話番号も写真もメールの履歴もメモも、何もかもが消えてしまう。
この瞬間は恐怖でしかないんです。
今の心境はこれと似ている。
一旦初期化(=退職、そして長期間海外へ)しちゃったら、ちゃんと復元できるかなーって、ここで得た人とのつながり。
私は、大人数とか苦手ですし、知らない人も苦手ですから、広く浅い付き合いというものができません。私の持っている人間関係はものすごく狭いですけど、そのぶん、大切にしたいという気持ちは強い。だから、
これは困る。まあ、でもね、似てはいるけど、iPhoneのほうが100倍深刻。だって、この人たちだったら大丈夫。
駅までの道すがら、10月の一時帰国の際はまたみんなでごはん行こうねってちゃんと約束しましたから。ほら、もうこれで完全に大丈夫。何も心配いりません。ほんといい人たちだったなあ。一生忘れません、ありがとう。
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