キューバ(2)旅人が知っておくべきキューバのお金のルール【CUCとCUP】
私にとって未知の国、社会主義国家・キューバ。旅行記というか、情報ブログを書く上で、お金の話ははずせませんので、まずはそのへんをご説明いたします。旅行記が始まるかと思ったらいきなりお金の話で、あまりおもしろくないかもしれませんが、いざキューバに行くぞってときに、困らないようにぜひ読んでみてください。
【現在地】ハバナ(キューバ)
Havana(Cuba)
【気温】28度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1CUC=約115円、1CUP=約4円
キューバには通貨が2種類あるってよ
渡航前にいろいろとキューバのお金事情を調べたのですが、なんとなくもやもやしたまま、はっきりとしたことが分からずやってきてしまいました。なぜもやもやしていたかというと、今までにない、かなりトリッキーな貨幣システムで旅行者を迎え打とうとしてくるんです、キューバは。
簡単に言うと、
「CUC」と「CUP」という2種類の通貨があり、臨機応変に使い分けるという上級テクが必要とされる。
と、こういうことなんです。
【CUC】
「兌換ペソ(だかんペソ)」peso cubano convertible
1CUC=1USD=約115円(2016年12月現在)
お札の真ん中にPesos Convertiblesと書いてあるほうがCUCです。描かれているイラストは、キューバの有名な観光スポット。
【CUP】(またはMN)
「人民ペソ」moneda nacional
1CUP=1/25CUC=約4円(2016年12月現在)
こちらは、キューバの歴史を語るうえではずせない重要人物のお顔が描かれています。
キューバを旅行された方のブログを読みあさってみて、なんとなく「CUC」が旅行者用で「CUP」がキューバ人用なのかなあとざっくり考えておりました。『地球の歩き方』にも、
主に観光に来た旅行者が使うのが、CUC。そして、主にキューバの人たちのための施設で使うのがCUP。
というようなことが書かれております。そして「CUP」で買えるものは概して高額、反対にCUPで買えるものは目や耳を疑うほどに激安。このへんの情報だけをくみ取っていた私は、
そりゃ観光客が落とすお金がキューバの大きな収入源になっているのは理解できますよ。でもさ、キューバの人用のお金で買えるものはすごく安くって、旅行者用のお金で買えるものはすごく高いって、なんかちょっと納得いかなーい!!! そんなのずるいよー。旅行者からばっかりお金とってー!!
なんて思っておりました。
アフリカで「なんで旅行者価格とローカル価格が違うんだ! そんなのおかしいよ!! 」なんてやいやい言っていたような気がするんですけれども、ここキューバに関しては、「いっそ旅行者用にレートを操作した通貨を作っちまおうぜ」と国家レベルでこれを容認、むしろ推進していらっしゃるというわけですか!?
と。観光に力を入れているはずなのに、なんかこのシステムじゃ我々旅行者とキューバの人々の間には見えない壁があるみたいで…。せっかく来たのに、なんだかおもしろくない。
しかしですね、ちょっと調べてみると、旅行者でもキューバ人用の通貨「CUP」を使えるというじゃないですか。
主に食事ですけれども、我々旅行者もCUPで買い物してよいんですって。また『地球の歩き方』情報ですけれども、
『人民ペソでキューバの生活に触れる』
なんていうコラムがあって、そこには、CUP(人民ペソ)であんなものやこんなものが買えるよ!! しかもこんな破格のお値段で! 的なことが書かれていて、ぜひ使ってみようとあおってくるような文章です。
え、そうなの!? 旅行者も使っていいの!? だったら旅行者用とかキューバ人用とか関係ないわけですね。ただ2種類お金があって、それぞれ使える場所が違うよっていう認識でいいんですね、
なんて思ったら大間違い。最後に
CUCに比べると10分の1以下で旅行者もMN(CUPのこと)を使用できるが、キューバの社会情勢を考えて、節度をもってキューバ人の生活に入り込むようにしよう。
という一文が目に留まります。
え、“節度”って、結局CUPを使うのはあんまりよしとされないことなの!? 旅行者がCUPを使うことを、キューバの人は快く思わないということなのですか!?
それから“社会情勢”って具体的になに!? どういうこと!? もうね、俄然わけがわからなくなってしまったわけです。
私にはこの二重通貨の意味が分からない。いや、レートとか仕組みはわかったけれども、両者の立ち位置というかそれぞれの存在理由、意義がいまいちわからない。
あまり頭の良くない私が必死でキューバの通貨についていろいろと調べてみました。
キューバの二重通貨制度まとめ
・1959年
キューバ革命を成し遂げる
まだお金は人民ペソ(CUP)のみ。
・1990年代はじめ
ソ連(キューバにとって最大の貿易国&最強の後ろ盾)崩壊、東欧の社会主義国家も崩壊。同じ社会主義国家のキューバは経済的に苦境に陥る。
国際社会における人民ペソの価値が大暴落。
人民ペソを使って輸入製品を買うのがキツくなる。そもそもキューバはサトウキビや葉巻の生産が主な産業で、ほとんどのものは輸入に頼っているような状態。全然ものが買えなくて、キューバの人々の生活はかなり苦しくなる。
・1993年
キューバ政府「こうなったら観光業に力を入れよう! 外貨獲得ー!! アメリカドルの所持解禁しまーす!! 」
★ここで人民ペソ(CUP)とアメリカドルの2種の通貨が流通するようになる
【当時の通貨の使い分け】
●キューバ人のお給料:人民ペソ(CUP)で支払われる
●農作物など国内で生産される最低限の生活必需品:人民ペソ(CUP)で購入する
(人民ペソ大暴落のあおりを受けずに済む品物は価格据え置き)
●海外からの輸入品(シャンプー・洗剤などの生活品、化粧品、石油などの燃料、電化製品等):ドルで購入する
●旅行者:ドルで支払う
こんなふうに始まった二重通貨制度。苦し紛れな気がしなくもない。それに、当時はまだキューバの一般の人々は自由に「人民ペソ」と「アメリカドル」を両替することは許されていなかったんだそう。深刻なモノ不足。みんながみんなドルを手にしてしまったら、完全に物資が足りなくなってしまうが故の措置。
そんな苦境に立ち向かうため政府が打ち出した外貨獲得の手段“観光業”。キューバの歴史や情勢を、他国からのイメージなんかを鑑みて、どうしてこのような選択肢が浮上してくるのか不思議でたまりませんが、意外にもこれは功を奏します。
青く美しいカリブ海と白い砂浜、それに緑豊かな渓谷もあり、自然的な魅力満載。
そして、文化的にも、スペイン統治時代の面影を残すコロニアルな建物や、アメリカと癒着していたバチスタ政権の遺物であるクラシックカーなど、ここにしかない景観を拝むことができます。
日本ではゆるキャラとか人気ですけれども、キューバには、まったくゆるくない、「チェ・ゲバラ」という最強のコンテンツがあります。こんな書き方をしたらおこられるかもしれませんが、街中に溢れまくっているゲバラさんグッズがそれを証明していると言えるでしょう。旅行者のほとんどは何かしらゲバラグッズ買うんじゃないですかねえ。私も買いましたけど。
これまでさほど観光開発に割く予算がなかったがゆえの“手つかず”の自然。スペインに征服されアメリカに支配された結果残された負の遺産。そして独立を果たすために流れた多くの血を刻む革命の遺物(建物など)。そして英雄たち。このへんを全部逆手にとり、すべてを観光資源とみなします。さらに世界に誇るミュージックと葉巻とラム酒をひっさげて観光大国へと邁進するキューバ。
たくましいです。
1990年代中盤、アメリカがキューバへの経済制裁を強化し、キューバは深刻な物資不足となっていきましたが、それでも観光業は順調に軌道に乗り、少しずつ外貨が国内に流通するようになります。
・1995年
CADECA(国営外貨両替所)開設
その流れで、CADECAという国営外貨両替所ができ、キューバの人々が自由に「人民ペソ」と「アメリカドル」を両替できるようになります。
人々は一生懸命働き、人民ペソを貯め、それをドルに両替してから輸入製品を購入していたそうです。
そうしてついに登場するのがCUC。兌換ペソです。
・2004年
ドル所持禁止と兌換ペソ(Pesos Convertibles)への一斉切り替え
このころには、アメリカドルと人民ペソ(CUP)のレートの開きが徐々に埋まりつつあり、アメリカドル所持解禁からわずか10年、急に所持禁止です。一党独裁というのはすごいもので、こんなビッグな変革があっさり行われてしまうのです。そして、アメリカドルを、新たな通貨CUC(兌換ペソ)に切り替えると。
理由としては、もちろん敵国アメリカの通貨が出回っているのは許せない、とか、米国政府による経済制裁の一環でドル流通の制限とかされちゃったら困るから、とかそのほかにもいろいろとあるのでしょう。
ここで理解しておきたいのが兌換ペソとは、という疑問。兌換ペソとはですね、外貨と交換可能なお金。両替所で日本円やドルやユーロなどなどいろんな国の通過と両替できるよという通貨。つまり、キューバに2種類あるお金のうち、
●CUC(兌換ペソ)は国際的に通用するお金
●CUP(人民ペソ)は国際的には通用しないお金
ということです。これが、CUCは旅行者用でCUPがキューバ人用と言われる所以。
【現在の通貨の使い分け】
●キューバ人のお給料:人民ペソ(CUP)で支払われる
●農作物など国内で生産される最低限の生活必需品:人民ペソ(CUP)で購入する
●海外からの輸入品(シャンプー・洗剤などの生活品、化粧品、石油などの燃料、電化製品等):CUCで購入する
●旅行者:外貨をCUCに両替し、CUCで支払う
上記が現在の通貨のすみ分け。外貨から両替できるのはCUCのみなので、日本円やドルやユーロを両替所や銀行で出せば、それと等価値のCUCをもらえます。ATMからもCUCが出てきます。
人民ペソ(CUP、MN)を入手したい場合は、先に登場したCADECAという国営外貨両替所に行けばよいのです。CADECAでは、外貨からCUCへの両替も、CUCからCUPへの両替もどちらも可能です。
さあ、これでキューバの通貨事情がお分かりになったかと…
いやーどうですかね。私はいまだによくわかりませんがしかし、暫定的に私が出した結論。
●CUP(人民ペソ)
キューバ人のお給料はCUPで支払われる。家賃、光熱費、電話代、バス代(ローカル)、新聞代などの最低限の生活費はCUPで支払う。輸入品でない農作物や畜産物を売る市場、小規模な人民ペソショップ、路上の食堂・ピザ屋・ジェラート屋などローカルなお店のみCUPで支払う。
CUPのお金の流れは、キューバに暮らすキューバ人の間だけで完結するわけです。外国の通貨や世界情勢の影響をうけないで済みますから、政府がコントロールして価格決定できる。だから安い。これはキューバ人のお給料の話とも関連してくるのですが、それはおいおい。
CUPを使える場所はかなり限られていて、食べ物に関してはまあ多少許されるにしても、そのそもモノが少ないキューバで何かしらの物資をCUPで購入するのははばかられる。安いからって爆買いなんてしちゃったらなんだか申し訳ない気がする。これがいわゆる“節度をもって”ってことなんでしょうね。
●CUC(兌換ペソ)
上記以外すべてCUC。油、石鹸、歯磨き粉、化粧品、衣類、電化製品などなどを買うスーパーマーケット(外貨ショップ)ではすべてCUC払い。(2016年12月現在、外貨ショップはCUP、CUC両方の値段が併記してあり、どちらも使えるようになっていますが、もともとはCUCのみ使用可能だったそうです)
つまり、「CUCで買えるものは高いなあ」と思いながらもしぶしぶCUCを使わなければならないのは、なにも旅行者に限った話ではないということです。「くそたけぇなあ、ヨーロッパ並みじゃん」と私も思うし、キューバの人々も思っている。お互い大変ですね、でもがんばっていきましょうね、と。
とりあえず、若干もやもやするものの、2種類の通貨のお話はこれで完結。最後にプチ情報ですが、CUCもCUPも「3」のお札にはチェ・ゲバラが描かれています。
正確には、下段は、サンタクララという街にあるゲバラさんの特大の銅像が描かれています。キューバのお土産として人気だそうですので、ぜひどうぞー。
明日は、なんで私がこんなにも通貨にもやもやしたのかをご紹介したいと思います。お金の話ばっかりで申し訳ないですが、お暇な方はぜひ遊びに来てください。本日も最後までお付き合いくださってありがとうございました。
■参考にさせていただいたサイト
私のブログより、よっぽど分かりやすい内容。かつもっとディープです。
コメント4件
兌換ペソですが、闇両替はないのですか?30年以上も前ですが、中国がそうでした。
もうキューバの度は終わったのですね。http://futarifurari.blog.fc2.com/category114-8.html しばらくは1位のブログでしたが、地元民といっしょの旅スタイルでした。ちょっと過酷のようですが、、、モネダでお支払いです。