マダガスカル(3)私のお尻の痛みを無視してブルースは加速してゆく
「弱い者たちが夕暮れ さらに弱いものをたたく その音が響き渡れば
ブルースは加速してゆく
見えない自由が欲しくて 見えない銃を撃ちまくる 本当の声を聞かせておくれよ」
THE BLUE HEARTSの『TRAIN‐TRAIN』より引用させていただきました。別にヒロトはこの歌に、マダガスカルの長距離移動に対する憂いや苦しみを込めてはいなかったと思いますが、今日は記念すべき私の初めての「タクシーブルース」ですから、大好きなこの歌でブログを始めてみました。
【現在地】モロンダバ(マダガスカル)
Morondava(Madagascar)
【天候】晴れ
【気温・湿度】
24度・70%(朝)、35度・35%(昼)
【為替】100マダガスカルアリアリ=約3.4円
昨日2016年5月7日夕方、マダガスカルの首都アンタナナリボから夜行タクシーブルースに乗ってこちらにやってきました。
“タクシーブルース”
初めて耳にされる方もいらっしゃると思います。このどこかハードボイルドで哀愁漂う渋い感じの名前の乗り物こそが、マダガスカルの主要長距離移動手段。過去、ここマダガスカルを訪れた数々の旅行者をげんなりのどん底に陥れたそれはもう「つらい」ことで有名な乗り物です。今まで何回かこのブログでも紹介したことがあるのですが、本日ついに、自らのカメラに収めることに成功しましたのでその写真をどうぞ。
わあ、インターネットで出てきた画像と寸分たがわず、どうみてもつらいよねっていう「タクシーブルース」を目の当たりにし、原因不明のドM心が開花。
「は、早く乗りたいハアハア」
前日に、標準価格より少し高めでチケットを購入しておいた私は、14時にターミナルに来いと言われましたので、13時にゲストハウスを出発しました。
あ、その前に、宿の近くのマーケットでお昼ご飯を済ませておきました。
こんな感じで、地元の人がたくさん集まるご飯屋さんは、ほぼ100%「おいしい」と相場が決まっております。
たくさんのおかずの中から、食べたいものを選んで、大量の白米の上にのっけてもらうというスタイル。
どれだけ眺めてみても、結局何がどのような味なのか一切分かりませんから、適当にソーセージみたいなのと野菜をチョイスしてみました。
あ、これおいしいわ。これで2,000アリアリ(約68円)。
お店の人も、お客さんも、これを食べている私の様子が気になるようで、何度もおいしいかどうか聞かれました。いやほんとおいしいっすよ。
腹ごしらえが済むと、ちょっと優雅に食後のコーヒーです。私のお気に入りは、路上で売ってる17円コーヒー。
わずか500アリアリです。コーヒー+砂糖+練乳という最強コンボで、頼み方のコツは「プチ、リトル、少し」みたいな感じで必死で甘さ控えめをアピールすること。そうすると、私好みのほんのり甘くてマイルドなコーヒーが出来上がります。
そうやってちんたらやったあとは、タクシーブルースターミナルへ向かうわけですが、私は前日に1度チケットを買いに同じ場所に出向いています。その際に、往路はタクシーを使い約400円、復路はローカルバスを使い約13円という驚愕の金額差を知ってしまっておりました。
それからというもの「贅沢は敵=タクシーは敵」という考えが植え付けられてしまっていて、今回は迷わずローカルバスをチョイス。ローカルバスこそが貧しい私の味方なのです。
私の分と、私のバックパックの分と、2席購入しても800アリアリ(27円)。安い。まあそのぶん、車内はかなりぎっちぎちなんですけどね。
ターミナルについてバスを降りると、前日同様、たくさんの男の人たちが集まってきて、勝手に私を案内しようとしてきます。
「私、チケットあるんで大丈夫です」なんて言っても聞く耳持ちません。これどうせ目的地に着いたら「案内してやったんだからお金をよこせ」とかいうパターンでしょ。
私がチケットを買った会社の前に着くと案の定「案内してやったんだからお金をよこせ」が出ました。ほらー。私案内してって言ってないじゃん。昨日も来てんだからここの場所知ってたもん。こんなときは、
「チョットナニイッテルカワカンナイデス」
で押し通します。
事務所の中に入ると、これまた昨日同様たくさんの男の人がいて、わあわあ言ってきます。私、言葉分かんないから勘ですけど、
男A「今日タクシーブルース無いってよーギャハハハ。残念でしたー」
私「は? 」
男B「いやいやちゃんと教えてやれよ」
男A「もうバス行っちゃったんだよねーさあどうする!? 」
一同爆笑。異常に盛り上がる。
私「はいはいわろすわろす。そういうのいいから。私今30kg背負ってるからさ。肩ちぎれそうでそれどころじゃないんですって。御社のタクシーブルース、ないならないで振替先のタクシーブルースに案内してもらっていいですか? 」
ということで、当初チケットを買った会社から他社のバスに振替えられました。席は、チケットを買った際に私が希望した席のままで。
私が希望したのは、一番後ろの一番端っこ。
こういう隅っこがやっぱり一番落ち着くんですよ。いろいろな方のブログを調べた結果、ベストはドライバーの真後ろの席だっていう意見がもっとも多かったのですが、まあとりあえずファーストタクシーブルースですから、自分が一番落ち着く座席をチョイスします。座席はこんなふうになっています。
これね、座席と座席の間に通路とか無いんです。だから、私がバスから降りることができるのは、全員が降り切った後。車内はこんな感じです。
乗り込むと、とてもラッキーなことに、一番後ろの列は4席あるのに私含め3人しか座らないようです。
「もしかして私勝ち組じゃないですかー。みんなタクシーブルースつらいつらいっておっしゃってましたけど、私これ全然よゆうですわー」
何も知らないバカな私を乗せて15時30分、タクシーブルース発車。
走り出して数十分後、お尻の異変に気が付きます。異変っていうか、普通にお尻が痛い。お尻のほっぺた? っていうんですかね? そこがとにかく痛い。シートも布張りでそれなりにフカフカなのに、なぜこんなに痛いんだろう。
私、勝ち組なんかじゃなかった。人と比べてどうのこうのじゃなかった。完全に自分との戦いだ。
他の方々のブログを読むに、「予想されるタクシーブルースのつらさ」といえば、長時間、長距離、悪路にともなう激しい揺れ、古い車体ならではの予期せぬ故障、デフォルトで定員オーバー、人々の体臭、他人との密着。こんなところだったと思うのです。
誰もお尻の痛みについては触れていなかった。完全に盲点でした。
バスが出発してから約4時間後、「アンツィラベ」という町で晩御飯休憩です。町中の食堂で各自ごはん。
私はメニューもよく分からないので、適当にそこらへんの人が食べているものを指さして「あれと同じやつ」的な感じで注文します。出てきたこの料理を見てちょっと後悔。
「あーなんかこれ臓物系ですかね。こんなこというのなんだけど、あんまおいしそうではないですね」
ところが、一口食べてびっくり!
「なにこれ超おいしいじゃん。あ、これ牛タンだ」
でっかい牛タンのトマトソース煮込みみたいな感じです。マダガスカルは日本よりも、一人当たりの米の消費量が多いそうで、おかずとご飯の割合が若干日本と違います。ほら。
この牛タンのトマトソース煮込み定食は3,500アリアリ(約119円)。
再びバスに乗り込みしばらく走ると、また痛みが襲ってきます。意を決して、ネックピローをお尻の下に敷いてみます。でもしばらくたつとまたぶり返す痛み。おかしいなあ、こんな情報どこにもありませんでした。頻繁にもぞもぞと体勢を変える私を周りの人もいぶかし気に見つめてきます。っていうか、どうしてみなさん痛くないのですか?
この先、タクシーブルースという乗り物に万が一乗車予定の方がいらっしゃったら私は言いたい。
なによりも、お尻の痛みに対する対策を怠らないでほしい。アンタナナリボ~モロンダバ間に関しては、ほかのことはたいした問題ではありません。結局は自分自身との戦いなのです。たぶん男の人は私よりもっとお尻の脂肪が少ないと思いますので、心してかかったほうがよろしい。
「無理やり睡眠をとり、お尻の痛みで目を覚ます」を何セット繰り返したことでしょう。夜中の2時半、もう何度目かもよく分かりませんが、私は再びお尻の痛みで目を覚まします。ドライバーの仮眠なのか時間調整なのか詳細不明ですが、タクシーブルースは停車していました。
エンジンを切った真っ暗な車内から聞こえるのは、たくさんの人の寝息。
周りの人を起こさないようにしながら、タバコを吸おうと窓から身を乗り出すと、目に飛び込んできたのは尋常じゃない状態の夜空の星。
なにこれ、やばいじゃん。
星には全く詳しくないのですが、まずここは南半球なので、いつも東京で見ていた配置と全く違うはずです。さらにその数と明るさが、異常。星の一粒一粒が大きい気がします。
慌ててカメラを取り出して撮影するも、全然きれいに撮れません。窓から無理やり上半身を出して体を上にむけるという苦痛を伴うイナバウアースタイルですし、三脚もありませんからね。でもすぐに、
「あせることはないんだ」
ということに気が付きます。これからしばらくは、こんなに必死にならなくても毎日この星空が見られるんでした。
この贅沢がうれしくなり、ひとり大満足の私。午前3時40分、再びタクシーブルースのエンジンがかかります。そっと窓を閉めて再び眠りにつき……
目を覚ますとそこはモロンダバでした。
なんて端折れるほど、世の中甘くはなく、このあとも泣きそうなくらいお尻のほっぺが痛くて何度も目を覚ましました。結局モロンダバに到着したのは午前11時。
アンタナナリボを発ってから、約19時間30分後。最後に降車してから15時間30分後。長い長い戦いでした。つーかこの間、トイレに一回も行かなかった私の忍耐力ハンパないよねって誰か褒めてほしい。
ということで、本日は「お尻」と「痛い」しか言ってませんでしたが、最後までお付き合いいただきありがとうございました。明日からはモロンダバライフをお届けすることになると思います。
移動情報についてまとめたページはこちらです。
コメント4件
ひゃー!!
痔持ちのわたしに耐えれるだろうかと、、、かなりこれは深刻な問題になりそうです!笑
尻元情報ありがとうございます!
ごぶじでなによりです!
幹がぽっちゃり、水分たっぷりのあの木!
たのしみにしてます♡♡
私も世界一周中にバオバブ見に行きたいのです!!
同じ名前と年でほんと親近感わきます!
ってか、私トイレ近いからどーしよ。
みんな行かないのですか?その席だから行けないのですか?ローカル飯でお腹壊したらトイレどーしようっていう心配がめちゃあります…f(^_^;