マダガスカル(17)さよなら天国。そして2,000kmドライブ開始!
朝起きて部屋のドアを開けると、ホテルで飼育している犬のクレッシーさん(メス・2歳)が私の起床を待っていてくれました。あーあ、せっかく仲良くなったのに「私もう行かなきゃ…」。そうなのです、3泊4日のマダガスカル・アナカオ滞在を終え、私は今日トゥリアーラに戻ります。そしてここからマダガスカル島の北へ北へと大移動を開始していくのです。
【現在地】アナカウ(マダガスカル)
Anakao(Madagascar)
【天候】晴れ
【気温・湿度】25度・65%(昼)
【為替】100マダガスカルアリアリ=約3.4円
癒されまくったホテル「Atlantis」ともお別れ
犬のクレッシーさんに見つめられながら
海を見ながらの朝食。
ホテルのオーナー兼ダイビングのインストラクターのルホンさんは、もともとはパリでジャーナリストをやっていたフランス人。元編集者だった私と近いものがあります。「やっぱフランスでもジャーナリストとかそういう仕事ってめちゃめちゃ忙しかったですか? 」と聞くと。「もちろんよ。あなたもわかるでしょ? 」と。
わかりますとも。
で、「そんな忙しい仕事から、こんなのんびりとしたところにやってきて、まったく違う環境だと思うんですけど、どうですか? 」と聞くと「そんなに違いはないわ。私は人と接するのがすごく好き。だからいろんな人と接して刺激を得られることをやっていたいのよ。そういった意味ではジャーナリストも今の仕事も大差ないと思うの」
なるほどね。確かに、“何”をやって生きていくかも大事だけど“どのように”生きていくかもすごく大事。
2年前にジャーナリストを辞めて、パリからここに移って来たルホンさん。それはもう考えられないくらい人生の大きな方向転換だったと思いますが、「今すごく幸せよ」とにっこり笑う横顔に後悔は微塵も感じられなくて、私はすごくうらやましく思いました。
マダガスカルに行かれる際は、ぜひ「アナカウ」の「Atlantis」どうでしょう? ルホンさはフランス人。つまり我々日本人と同じように、英語が母国語ではありません。だから、すごく聞き取りやすいし、ゆっくり丁寧にしゃべってくれます。お互いに知らない単語があると、一生懸命ほかの言い方を考えてどうにか伝えようとする感じがおもしろい。
私が「日本には、マダガスカルに興味がある人はわりとたくさんいるみたいなんですけど、あんまり情報がなくって。それに、私も含め、いかんせん英語力に自信がない人が多いんですよね。でもさ、とりあえず、来たい日にちと、人数と、泊数がわかればOKですよね? 」と聞くと「もちろん。英語もフランス語も喋れなくて大丈夫よ。私だって日本語しゃべれないもの。日本からのお客様、大歓迎よ」とのことでございました。
アナカウへの行き方はこちらのページをご覧ください。
ホテル情報の詳細はこちらです。
とりあえず、基本的には
「アイ・アム・ダイバー!! アイ・ワナ・ステイ・ヒア!! 」
でOKだと思います。あ、ダイビングやらない人ももちろん滞在できますし、スノーケリングツアーもやってくれますよ。
アナカオのお土産。砂浜で拾った貝殻。
プ、プライスレス?
朝7時50分、時間通りに「Anakao Express」がホテル前のビーチに迎えに来て、いよいよ出発です。砂浜から手を振ってくれるみなさん。
砂浜から、ボートから、お互いが見えなくなるまで手を振り続け、世にも素敵な天国を後にしたのでした。
2,000kmの移動とかうける。
ボートは、アナカウから北に45kmほどのトゥリアーラという町に戻ります。待っていたのは、乗り合いタクシー。実は、私はここからマダガスカル旅が始まって以来最も長距離の移動を控えています。
地図で言うと、このような道のり。
アンタナナリボを経由して南の端「トゥリアーラ」から、北の端「ディアゴスアレス(別名アンツィラナナ)」まで。
1,000km×2セット
うけるー。悪路で有名なマダガスカルで約2,000kmの移動。これはけっこうハードモード。だいたい1,000kmにつき20~40時間かかると思ってください(道路の状況次第)。こんなこと普通やったらダメだと思うのですが、時間も金も限られている私は、どうしてもこうするしか手がありません。
そういえば、つい先日、私が尊敬してやまない世界一周準備中のブロガーさん「モーストリー・サンダーストーム・ぷりこーしょん」の中の人も、ついにサックスの演奏で路上でビューを果たされました。それを知った私も、遠い遠いマダガスカルで意味不明なやる気に満ち溢れているのです。
面識はないのですが、なんかうまく言えないですけど、とにかく言葉に対するセンスが別次元。いつだって私の憧れです。そんな彼が深夜の公園から深夜の路上に活躍の場を移されて、カナブンみたいな虫とかその他いろいろな障害と戦いながらひたすらサックスを練習なさる姿は、想像するだけでかなり胸を打つものがあります。
それに比べると、私の2,000kmなんて全くたいした問題ではなく、こんなささいな移動距離で不満を漏らすわけにはいきません。
ということで、南西部にあるここトゥリアーラから、首都アンタナナリボまでの前半の1,000kmは少しだけラクをしようと思います。いきなりごめんなさいね。
マダガスカル定番の長距離移動手段「タクシーブルース」を使うのをやめました。
私が使ったのは、こんな普通の車。
これに最大5人くらいが乗車してタナ(アンタナナリボ)へと向かうのです。ぎゅうぎゅう詰めで体を動かしたり足を伸ばしたりすることもままならないタクシーブルースだと65,000アリアリ(約2,210円)。これが乗り合いタクシーだと150,000アリアリ(5,100円)。倍以上しますけど、でも、普通に助手席ですから、乗り心地は雲泥の差です。
あと、トイレが近い方は、これだとすごくいいですよ。自分がよさげだなと思う草むらを発見したら「ここで止めて! トイレ行きたい! 」といえば、お好みの場所で用を足すことが可能になります。
アンタナナリボから先は、おとなしくタクシーブルースに乗りますので、前半はいいでしょ、ということで。ちなみに、タクシーブルースと乗り合いタクシーの走行時間は大差ありませんでした。
乗り合いタクシーはのっけから難あり
「Anakao Express」の到着地点で待機してくれていた乗り合いタクシーに乗ると、ドライバーさんが言います。
「あと4人拾ってから、ダイレクトにタナまで行くから、助手席に座ってもらってもいいかな? 」
ということで、どこかのホテルに迎えに行くと、乗って来たのはスペインからお越しのご家族4名様。
そしてなぜかかなりご立腹。
ドライバーさんに対してフランス語でひとしきりわあわあ怒ってやっと席に着きましたが、私はまったく事態が呑み込めずポカンとしておりました。すると、スペインママが私に英語で説明してくれました。実は彼女たちは翌日のタナ発の飛行機で帰らなければならず、タクシーを朝6:30に予約していたとのこと。
え、今9:30ですけど…。
「何の連絡もなしに私たちは3時間も待たされたのよ! きっとドライバーは、あなたもいっしょに乗せてった方がお金になるからあなたを待っていたのね。あ、別にいいのよ、あなたが悪いわけじゃないわ」
だよね。私悪くないよね。
とはいえものすごく気まずい感じで車は発車。ドライバーさん、それはあんたが悪いよ。
その後も「彼が稼ぐお金なんて私たちにしてみれば大した額じゃないのに」的な暴言は止まらず、スペインファミリーは別に嫌な感じの人たちではないのですが、いかんせん時間がなくあせっていらっしゃいます。まあね、その感じも分かります。確かに、飛行機に間に合わないのは困りますから、きっと私も同じ状況だったら、同じように怒っているに違いありません。
とりあえず、もしこの先「時間」か「お金」かの2択を迫られたら、迷わず「時間」を選択しようと心の中で誓いました。
車は順調に進み「やっぱたまにはタクシーブルースを避けるっていうのもアリだなー。っていうかお腹減ったなー」なんて思っていると、ドライバーさんが小さな声で聞いてきます。
「お腹、減ったよね…? 俺も」
「うん。減ったよ」と答えつつ、内心「減ったけど、たぶんあなたが言わないほうがいいと思うよ。ちょっと空気読もうか」という気持ちでいっぱいでした。それを察したのか、ドライバーさんは小声で私に、スペインファミリーにランチどうするか聞けと言ってきます。
「え、やだよ。自分で聞いてよ」
「お願い、ちょっと聞いてみて」
こんなコソコソしたやりとりは、まるで私が日本にいたころの感じそのものではないですか。私悪くないのになーと思いつつ、結局私が聞いてみました。
「ラ、ランチとかって…」
「私たち、タナへの道を急ぎたいのよ」
「ですよねー。じゃ、じゃあ私たちそこらへんでパンかなんか買ってきて車で食べるんで大丈夫です」
こうして、私とドライバーさんはそこらへんのパン屋さんで、パンを購入しお昼ごはんにいたしました。
完全に巻き込まれ事故以外の何ものでもないのですが、このあたりから、私とドライバーさんは妙な連帯感で結ばれつつあり、徐々に仲良くなっていきました。ドライバーさんの名前は「アリータ」(36歳。タナ在住。8歳の息子がいる)。
アリータ「好きな音楽は何? 」
私「やっぱ日本の音楽かなー」
アリータ「俺はマダガスカルの音楽がいいよ」
マダガスカルで流行ってるヒップホップ調の音楽をかけてくれる。
私「へーこんなの流行ってんだー」
アリータ「でも俺が一番好きな曲はこれだ」
私「スリラーじゃん。マイケルジャクソン、マダガスカルと関係なくね!? 」
2人「あはは」
スペインママ「音楽のボリューム下げてもらえる? 」
2人「ご、ごめんなさい」
相変わらず気まずい雰囲気(←ふんいきと入力すれば変換できる)のドライブではありましたが、車は海沿いのトゥリアーラを出発し、半砂漠地帯を抜け、今度は草原を通り過ぎます。そして岩だらけの変わった地形など、車窓から見える景色はめまぐるしく変わり、ずっと見ていても飽きることはありません。
嘘です。
飽きます。だって1,000kmですもの。大半うとうとしていて、たまに起きたタイミングで惰性で撮った写真を並べてみたら面白いな、という気付き。
こうしてほとんど寝ていたのですが、ふと目を覚ますと、車が停車しています。車内にはドライバーのアリータだけ。「どうしたの? 」と聞くと
「彼らが食事しているのを待ってるんだ…」
「あ、スペインファミリー、結局食べるんだ」
微妙な気持ちで待っていた私とアリータをとくに気にする風でもなく、スペインファミリーはさらに手にチキンみたいなものまで持って戻ってきました。
「ま、まあいいや。私たちさっきパン食べたばっかりだからお腹減ってない」
再び車は走り出し、また眠りにつく私。次に起きると、また車が停まっています。窓から外を見ると、スペインファミリー4人が
仲良く、
並んで、
吐いてる…。
車内に残ったアリータを見ると「何か悪いものを食べたみたいで…」
あっっぶねぇぇぇ!!!!
おかしなところでおかしなものをいっしょになって食べなくてよかった。
「食べなくてよかったね…」と私が小さな声で言うと、
「お、おう」とアリータも応じます。
深夜、スペインファミリーが寝静まったころ、車を停めてこっそりたばこ休憩をとりました。
「彼らには悪いけど、ちょっと休憩だ」
まあね、1,000kmですもの。そりゃ疲れます。今まで私が乗って来た「タクシーブルース」という大容量乗り合いバンは、常時ドライバーさんが2人乗っていて、交互に運転しているのですが、彼はたった一人で1,000km走破しなければなりません。
こうしてこっそり休憩をとる彼をねぎらうため私がコーヒーをおごり、お礼に彼がビスケットを買ってくれ休憩終了。スペインファミリーが起きないようにそっと車に戻り、再び、走行開始。
夜が明けるころには、きっとアンタナナリボに着いていることでしょう。運転をがんばるアリータといっしょに起きていてあげたいけれど、私も眠い。明日は、タクシーブルースに乗り換えて、さらに北を目指します。
それでは本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。
2000kmの行程を踏ん張る意味不明な糧の一部になれたみたいで、よかったです(^-^)
なるほどー 元編集者さんでしたか
豊富な語彙と文字数のくせに誤字脱字が無いんで誰なんだろうこの人はなんて思っていました。なんか納得です。
見送りの写真が何気に和みます。犬来てんじゃんw って。