マダガスカル(18)稚拙な固定観念をあっさり覆してくれたドライバー
現在マダガスカルを旅行中の私は、南西部にある町「トゥリアーラ」から、北部の町「ディアゴスアレス」へと2,000kmのドライブ中。現在、乗り換え地点のアンタナナリボを経由してさらに北を目指す旅の後半戦へと突入しております。
【現在地】アンタナナリボ(マダガスカル)
Antananarivo(Madagascar)
【天候】晴れ
【気温・湿度】25度・65%(昼)
【為替】100マダガスカルアリアリ=約3.4円
アンタナナリボに到着はしたものの
朝7時、あたりが明るくなってきたころ、乗り合いタクシーはやっとアンタナナリボに到着。トゥリアーラを出発してから21時間、約1,000kmのドライブが終了いたしました。この地図でいうと真ん中まで来ています。
旅の前半はこちらの投稿。悪くないのに罪人に仕立て上げられたりもしましたが、退屈だと思われたドライブもなかなか楽しむことができました。
移動方法の詳細はこちらのページをご覧ください。
タナ(アンタナナリボ)の空港で、トゥリアーラから同乗してきたスペインファミリーが降車。結局飛行機には間に合うみたいですが、送りに行ったドライバーのアリータとスペインママがけっこう長いこと何かを話しています。
そのやりとりを車の中から見つめる私は思います。
「さてはタクシー代、値引きするしないでもめてんじゃない? 」
20分くらいして戻って来たアリータはひどくしょんぼりしています。案の定、
「彼らがお金を満額払ってくれなくて…」
ほらー。私そうだと思ったよ。だってかなり怒ってましたもの。
これは彼のビジネスのお話ですので、どっちが悪いとかは私にはよくわかりませんけどね。だいぶ落ち込んでいるアリータは私に聞いてきます。
「mayumiはどこへ送ってほしいんだ」
「私は、タクシーブルースに乗ってさらに北へ行きたいから『アンブディブナ』っていうタクシーブルース乗り場に行きたいんだけど」
「そうか。これからまた移動するのか。アンブディブナには知り合いがいるから、チケットを買うのを手伝うよ」
そう言って、タクシーブルース乗り場まで連れて行ってくれました。
とりあえず、この「アンブディブナ」というタクシーブルース乗り場、これがまた安定のカオスっぷり。南部に行くタクシーブルースが集まる「ファサンカラナ」も相当ぐちゃぐちゃでしたが、北部に行く「アンブディブナ」はもっとぐちゃぐちゃ。
「ファサンカラナ」はそれでも一応、道路から少し入ったところにターミナル的な広場があって、その周りを囲むようにタクシーブルース会社が店を連ねておりましたが、この「アンブディブナ」は完全に道路沿い。
普通に車が行き来する道路を挟む形で、たくさんのタクシーブルースが停車していて、何が何だかさっぱりわかりません。
アリータが言います。「ディアゴスアレス(別名アンツィラナナ)へ行くタクシーブルースは2種類あって、途中の町で乗り換えなきゃいけないものと、ダイレクトに行くものとあるんだ。これを間違えて買うと、さらに時間がかかるから、ダイレクトに行くのはどれか聞いてきてやるよ」
そうして見つけてきてくれたタクシー会社で値段を聞くと70,000アリアリ(約2,380円)。全く情報がなく、相場もくそもないんで、この金額でOKと答える私。「車体と座席も確認しよう」と言って、私が乗る予定のタクシーブルースに連れて行ってくれます。これが今回のタクシーブルース。
そして「どこの席に座りたい? 」というアリータに、私はマダガスカルに入って以来憧れていた「ドライバーの真後ろの席」をリクエスト。
これまでマダガスカルを訪問なさった日本の方が口を揃えておすすめなさっている「ドライバーの真後ろの席」。でもここは地元の人からの人気も高いらしく、今まで一度たりともゲットできたことはありませんでした。
そんな特等席をあっさり取ってくれ、「本当にこのタクシーブルースでいいのか? 気に入ったか? 」と確認されます。気に入るもなにも、私は、とにかく目的地まで連れて行ってくれるなら、別になんでもいいやと思っているのでとくに不満はありません。もちろんOKと伝えて、発車時間を確認すると、午後3時とのこと。
このときまだ朝7時。出発まで8時間もあります。
「道路に座って時間をつぶすにしてもさすがに長すぎる。かといって、ここからホテルとかあるエリアに行くには遠すぎる」
どうしようかなーと思っていると、アリータが、8時間だけ休ませてくれるホテルを探してくれると言います。
っていうか、1,000km、21時間をほぼノンストップで運転してきた彼はこの時点で相当疲れているハズ。なのにここまで付き合ってくれただけで十分にありがたい。だから私は「いやいや、それは悪いよ。どっかこのターミナルの近くにレストランとかあったらそこで時間つぶすから大丈夫」と伝えます。
しかし彼は「レストランはあるけど、それは危なすぎる。こんなに大きな荷物を抱えて。誰かに盗られるかもしれない」と言って譲りません。
結局彼のお言葉に甘える形で、そこから20分ぐらい離れたホテルに連れて行ってもらい、さらに金額の交渉までしてもらって、10,000アリアリ(約340円)でタクシーブルースの出発時間まで滞在できることになりました。
ちなみに、やたらファンシーだったホテルの部屋。
そうしてアリータは「2時にまた迎えに来るから」と言って一旦自宅に帰って行きました。
え!? また迎えに来てくれんの!?
もう絶対眠さMAXで、消耗しきっている状態のはずなのに、午後2時ぴったりアリータは迎えに来てくれて、再び私をタクシーブルース乗り場まで連れて行ってくれました。なんなんだろう、このいい人は。
昨夜の、ドライブ中の会話を思い出します。
マダガスカルと日本の違い、東京とアンタナナリボの違いなんかについて話していた時「俺もいつか東京に行ってみたい」というアリータに、私が言った言葉。「東京とはいえ、そんなにたくさんアフリカの人がいるわけじゃないからさ、アリータはたぶん目立つと思うよ。目立つって言うか、なんかこう、怖そうに見えるかもしれない。アフリカの人は、日本の人より、なんていうか、強そうに見えるから」
そうなのです。実は、私はここへくるまで、アフリカンな外見の男性に対して、少なからず「怖そう」というイメージを抱いていました。そもそもアフリカ人の友人なんていませんし、あまり接する機会もなかったもので…。完全に映画とか漫画とかに影響されまくったイメージ。私の稚拙な固定観念の中では、アフリカンな方々はどこか別世界の人で、なんなら思考や感性なんかもちょっと自分とは違うんじゃないかとすら思っていたフシがあります。
でも私は彼に会って、そんなバカみたいなイメージがすっかり払拭されてしまいました。わずか2日いっしょに過ごしただけですが、我々には何も大きな違いはなく、思考や感性も近しいものがあったように思います。
だって、いっしょにコソコソしたじゃない。
「怖そうに見えるのか…」とちょっと悲しそうな彼に「あ、でもそんなイメージもあなたに会って変わったよ。マダガスカルにもアフリカにもいろいろな人がいるだろうけど、とりあえずあなたのことは全く怖くない」
そう伝えると、うれしそうに笑っていたアリータさん……
ティアドロップ型のサングラスが異常にお似合いになる、まさに「ザ・アフリカン」なルックスで。
差別的な意味合いは全くないのですが、映画とかに出たらもうこれ完全に「悪い人」(涙目)。
観光客を運ぶタクシードライバーではなく、法に反したお薬や出所のあやしいお金なんかを運ぶほうがお似合いになるのではないかと…。
若いころはバスケットをやってらっしゃって、かなり背が高くガタイもいい。そんなアリータさんがね、私が日本から持参したミニサイズのボールペンを使って書きづらそうにメールアドレスをメモ帳に書いてくれています。
私が写真を撮っているのに気づくと、「怖そうに見える」というのを気にして、
「ノー!! シガレット、ノー!! 」
と言ってタバコを後ろに隠しました。
それから、私がちゃんとドライバーの後ろの席に座るのをしっかり見届けて、さらにバスの中で食べるようにと言ってマンダリンを2個買ってくれて、「何かあったら電話するように」と何度も繰り返して、最後は大きな手で私と握手をして帰って行きました。
アリータさん、最後に、ホテルからここまで連れてきてくれたタクシー代を渡そうとしたら受け取らなかった。
マダガスカルに来て、もう何回目になるか分かりませんが、またいい人に助けられて私は次の目的地にスムーズに向かうことができるようです。
16時10分タクシーブルース発車。ドライバーの真後ろ、特等席の窓からゆっくりと日が沈んでいくのを、ぼんやり眺めつつ思います。「次の場所ではいったい何が私を待っているんだろう」。目的地はどんな町なのか、果たして何時間かかるのか、まったく未知すぎて笑えます。インドで買ったお気に入りの毛布にくるまり、期待に胸膨らませる私を乗せて、タクシーブルース2,000kmの旅、後半戦のスタートです。
本日も、最後までお付き合いいただき本当にありがとうございます。
こんにちわ!
時間を見つけては楽しく読ませて頂いてます!
「未知すぎて笑えます」は名言ですね!
グッときました。
今後もどうかご無事で!