モザンビーク(5) ダイビング最終日。お茶目な海の神と“Tofoの奇跡”
現在世界一周をやっております私はモザンビークのTofo(トーフ)という村に滞在中。インド洋に面したこの村は、モザンビークでもっとも有名なダイビングスポット。しかも、かなりの高確率でマンタに遭遇できるという噂です。
【現在地】トーフ(モザンビーク)
Tofo(Mozambique)
【天気】晴れ
【為替】1メティカル=約1.6円
陸と海、それぞれの「BIG5」について
タンザニアやケニアなどで体験できるサファリでは、遭遇できたら本当にラッキーと考えられている5大動物のことを“BIG5”と呼んでいます。その5種類というのはライオン、ヒョウ、ゾウ、サイ、バッファロー。
そして、私の中でその海バージョーンというのがございます。
【私的オーシャンBIG5】
ザトウクジラ(Humpback Whale)
イルカ(Dolphin)
サメ(Shark)
マンタ(Manta ray)
ジンベイザメ(Whale shark)
先日南アフリカでサーディンランというイベントに参加した私は、命を削りながらもこの5種のうち、ザトウクジラ、イルカ、サメといっしょに泳ぐことができました。
残るはマンタとジンベイザメ。
ジンベイザメは、私の中ではぶっちぎりナンバー1に会いたいのですが、今私がいるTofoでは10月~2月がそのシーズン。残念ながら今回はあきらめるしかなさそう。しかし、マンタは通年見られるっていう話だったじゃないですか!!
私絶対、会いたいんです!!
Tofoでのダイビング初日に、マンタに会うまで帰りま宣言をした私は、すでに1日2ダイブを2日間。合計4本潜っています。
しかしマンタの姿は無し。
今日こそはこの状況を打開すべく、今までよりさらに気合を入れて挑みました。
Tofoはかなり田舎の村でして、宿の前の道、こんな感じです。
おまけに今は冬なので、完全にオフシーズン。この時期Tofoにいるのはダイバーかサーファーぐらいのもの。さらにホテルの選択肢もダイブショップの選択肢も限られていますので、結局みなさん泊まるところも同じになり、潜るメンバーも決まってきます。
そうなるとまあ仲良くなりますよね。
昨日、午前中の2ダイブが終わり、いっしょに潜った方々とダイブショップ「Tofo Scuba」併設のカフェでお昼ご飯を食べました。
ここのオムレツがすごくおいしくって、野菜たっぷり、チーズたっぷり、バターたっぷりで、かなり胃にずっしりくるのですが、超おすすめ。
マンタと泳ぎに世界中からのダイバーさんが集まっていますから、みなさんの国籍、年齢、性別はバラバラ。これまでのダイビング遍歴やおすすめの場所などを披露しあい、とても盛り上がります。
マンタはいなくとも、海の美しさやダイビングの楽しさに変わりはなく、やはりみんな海が大好き。ほかのお魚はたくさん見られてハッピー! あとはマンタが見られればパーフェクトなのにね、と笑い合いました。
しかし、ただひとり、笑っていない男が!!
スペインはグラナダ出身。ダイビング本数通算400本超えのツワモノ、モーゼスさんです。
ダイビング休暇と称した長期休みを毎年とり、世界中で潜りまくっている彼は、今回のTofoでも、1日3ダイブを6日連続でやるという、かなりのダイビング狂。
5mmの長袖長ズボンのウェットで寒い寒い言ってる私とは違い、半袖半ズボンで元気にはしゃぐわんぱくっぷり。
「水温22度? 全然寒くないぜ!! 俺にとっては適温だ!! わはは」
と豪快に笑うモーゼスさんは、おじさんなのにお茶目でかわいらしい!!
モーゼスさんが海の中で魚とたわむれる様子。
子供のようにまっすぐにダイビングを愛する彼は、明日(つまり今日)が最終日。
「よし、明日は必ずマンタを見るぞ!! 」
そう宣言した彼は続けます。
「やっぱり潜る時間が遅すぎると思うんだ。いつもは7:00集合で、8:00くらいに海に入るだろう? それだとマンタや他の魚が起き出して食事するタイミングを過ぎてるんだ。日の出とともに出発して、7:00ごろ海に潜るのがベストだと俺は思う!! 」
そうなんだー。なるほどー。とみんな感心しています。
そしてモーゼスさんは「よし、ダイブショップと交渉して、いつもより1時間早くスタートできるよう頼んでみよう!! 」と、ダイブショップのオーナーのところへ。おぉ、なんか部活っぽい!! いいねいいね。こういうノリは嫌いではないですよ。しばらくするとモーゼスさんが戻ってきて言いました。
「ボートの定員がダイバー8人だから、8人参加者が集まったらOKだそうだ」
8人かぁ~、みんな行くかな…と思いきや、ものの数分であっさり8人達成。ダイビングに関して、意識高い系の人だらけです。
もちろん私も参加の意思を表明しましたよ。
そうして挑んだ2ダイブですが…
先に言いますと、本日2本潜りましたが、マンタを見ることはかないませんでした。念願の「マンタリーフ」という、マンタが見られないわけがないと思うようなネーミングのサイトに行ってもらったのに…。
見られたものといえば、
巨大ウツボ。がおーっ!
巨大ウツボと対峙するモーゼスさん。
日の出スタートのダイビングはマジで鬼寒いので、さすがに今日はモーゼスさんも長袖のウェット着用です。
Tofo周辺は黄色いウツボがたくさんいますが、今日は白いウツボを発見しました!!
細長いお魚:青。
細長いお魚:黄色。
岩に擬態したスコーピオンフィッシュ。
スイミーみたいな感じで、お魚の形の群れを作っているお魚。
たくさんのお魚お魚お魚。
お魚だらけなのに、今日もマンタはいない…。
こうして2本のダイビングが終了してしまいました。私含めみなさんちょっぴりがっかりした表情でボートに戻り機材を片付けます。
ボートのドライバーさんのTシャツが残酷すぎる。
少し沖でのんびりしたあと、ついにボートはダイブショップへと帰還を開始。
しかしここでモーゼスさんが遠くを指さして叫びました。
「あそこにクジラがいる!!! 」
おぉ~クジラ!! 南アフリカでたくさん見ましたが、モザンビークでも見られるとは。しかしけっこう距離があったのと、クジラに対する免疫がありますので「ややテンションアップ」くらいの感じですかね。
しかしそれから数分後、またもやモーゼスさんの叫び声。
「見ろ!! マンタがジャンプした!! 」
え!!! マンタがジャンプですと!?
なにそれ初めて聞きました。が、モーゼスさんが指さす方向を見ると確かに何かがジャンプした!! (写真の右端)
私は、海の中を飛ぶように泳ぐマンタを見たかったのですが、
目を凝らしてよくよく見ると…
こ、これは飛ぶではなく、跳ぶ。
マンタが跳んでるぅ!!!!
ピョーン!! クルクルン!! という感じで、海面から跳びあがったマンタはくるんと回転するんです。かわいい///これはこれで貴重なものをみることができました。
海の中ではないけれど、とりあえずマンタ見られたし、もういいかな。ブログの読者さんも、ここまでやれば許してくれるよね、なんて考えながらボートに揺られていると、
ふたたびモーゼスさんが叫びます。
「ホ……シャーク!!!!! 」
船の先頭に座って常に周囲に目を光らせているモーゼスさん。
その声は、ボートの音にかき消され、前半がうまく聞き取れませんでした。
「ホ? ホワイトシャーク?? 」と聞き返す私。なんだサメか。白いサメ? しかし興奮したモーゼスさんからの答えは、
「NOー!!!!
ホエールシャークだ!!!! 」
ホエールシャーク、ホエールシャーク、ホエ
ジンベイぃぃぃぃ!?!!?
えええぇぇぇぇ!!!!!!
ホーエルシャークは日本語でジンベイザメ。え、うそ!! どこどこ!? なんで今ジンベイがいるの!? シーズンじゃないじゃん!!
しかしモーゼスさんが指さす方向には確かに何らか大きな大きな生き物が泳いでいます。
しかもこっちに向かってくる!!!!
わわわわわ!!!!!
ちょww正面!!!
なんか頭の上にちっこいお魚くっつけとるー
かわいいなおい。
間違いない!!!!
「パターン青!!! ジンベイです!!!! 」
やばい!! ジンベイと泳げるかもしれない…過呼吸を起こしそうなほど大興奮の私はイントラさんにむかって叫びます。
「ジ、ジンベイジンベイ!!! ハアハア 私ジンベイと ハアハア 泳ぎたい!!! 」
イントラさん、ぽかーん。
あ、“ジンベイ”日本語ぉぉぉ!!! 海外の方に日本語でジンベイジンベイ言っても通じるわけありません。
「ホエールシャーク!! 海、入りたい!! 私スノーケル持ってる!! いっしょに泳ぐ!! OK? OK??? 」
今までで一番のカタコト英語で、イントラさんに、スノーケルで海に飛び込んでいいか尋ねると、OKとのこと。
ところが、このときの私は、ずっと濡れたスーツを着ていると寒いので、スーツを脱ぎ、水着の上にアウター的なものを羽織っている状態でした。
予期せぬジンベイの襲来。
「え、でももうプラグスーツ脱いじゃったよ」
しかし、南アフリカでの過酷なサーディンランに耐え抜いた私は知っています。
ターゲット発見、ギア準備そして飛び込んで標的まで泳ぐという一連の動作をいかにスムーズかつスピーディーに行うかがすべての鍵を握っている。
「今からプラグ(ウェット)スーツを着ている時間はない…。ブーツ履いてフィン付けるのでギリだな」
あっつい日本にいらっしゃるみなさんは想像しづらいと思いますが、水温22度の海をビキニで泳ぐのって、完全にクレイジーな人のやることなんですよ。
でも、ここで飛び込まなかったら、たぶん一生後悔する。
そうして私は誰よりも早く準備をし、極寒の海に対してほぼ丸腰の状態で何の躊躇もなく海に飛び込みジンベイザメまでまっしぐら。ジンベイの隣に一番乗りで到着です。
どうもはじめましてー!!!! ジンベイさーん!!!
下にちっちゃいサメがくっついとる!!
サーディンランの経験は、もしかしてこの日のために必要不可欠だったんじゃなかろうか…。
動画はこちら。
基本に忠実な者が海を制す
実はこの日、スノーケルをボートに持ってきている人はたった2人しかいませんでした。
ダイビングのライセンスを取るときに「マスクには必ずスノーケルを取り付けること」と習います。万が一の漂流やエア切れに備えるためだった気がするのですが、普段のダイビングではまず使いません。若干邪魔ですし見た目もアレなので、海外のダイバーさんを見ているとスノーケルを付けていない人の方が多い気がします。
しかしビギナーダイバーの私は、何事も基本に忠実にと思い、毎回付けているのですが、
今日はこれ完全にスノーケル保持者が勝ち組!!!!
泳ぐのが得意でない私は、スノーケルなしでジンベイと並走なんて不可能。そしてそして、もう一人のスノーケル保持者。もうお分かりですね。
海の神ポセイドンが降臨なさったー!!!
モーゼスさぁぁぁん!!!!
私がジンベイに追いついてすぐ、しっかりスノーケルを付けたモーゼスさんが到着。海の神も基本に忠実だったようです。
私と反対側にまわりこみジンベイと並んで泳ぐモーゼスさん。
海パン一丁で22度の海を泳ぐポセイドン。寒さなんてへっちゃらな様子。
ジンベイでっかぁぁぁい!!!!!
想像よりもでかいでかいでかい!!!!
どうしようジンベイといっしょに泳いでる!!!
動画はこちら。
ときどきモーゼスさんが写り込んで、ほほえましいです。ジンベイは思ったよりだいぶゆっくりと泳いでくれていますが、それでもこの巨体ですから、必死でバタ足しないとすぐおいていかれてしまいます。かつてないぐらいに一生懸命泳いで泳いで泳いで…
そしてふと下を見ると、
!?
え…マンタ!??!!!?
数メートル下にマンタがいるではないですか!!!
そしてジンベイ&私とは反対方向へと泳いでいきます。
ちょ、まっ、えぇえぇぇぇ!!!!??
いま!?
タイミング(涙)。念願のマンタとすれ違っちゃってますけど、
でも…でも私今ジンベイ追いかけてて、
それどころじゃないんです!!!!
ゆっくりと遠ざかるマンタ…。とりあえす、マンタと泳ぐまで帰りま宣言の解除に成功。
右を見ればジンベイザメ、下を見れば反対方向へと泳いでいくマンタ。贅沢すぎて気を失いそうな状況。
なにこれやべぇ。
とはいえ、二兎追うものは一途を得ずですから、ここはやはりジンベイを選択。
マンタ、今回はごめん。バイバイまたね。
こうして約30分ほどジンベイといっしょに泳ぎ、最高に幸せな気分を味わいました。しかしさすがに、水温22度に水着(ビキニ)で飛び込み30分以上泳ぐっていうのは常軌を逸した行動ですから、ここへきて急激に寒さが襲ってきます。
ボートへ上がりバスタオルにくるまりながら「寒い、アイムハッピー、極寒、でもアイムハッピー、でも寒すぎるあはは」とぶつぶつ言いながらガタガタ震える私を見て、周りの人はどう思ったでしょうか。
ちなみに、ポセイドンことモーゼスさんはというと、私が寒さのあまりギブアップしたあとも、かなり長いことジンベイといっしょに泳ぎ続けていらっしゃいました。
おまけに、偶然なのか神の力なのか分かりませんが、ジンベイを私たちの乗っているボートまで誘導してくれ、ボートの真下をジンベイがくぐるというびっくりな状況に。
餌付けとか一切してなくてこれですよ!!
Tofoの海やばい。また最終日に素晴らしいミラクルがおこってしまいました!!
ポセイドン、ありがとう。
モーゼスさんもボートに戻り、全員でジンベイに手を振ってお別れします。
ばいばーい!!!
ダイブショップに戻って、カメラをチェックすると、私の撮ったジンベイの写真には、9割方モーゼスさんが写っているという現実。何度見ても笑えます。
私の写真のデータをモーゼスさんに差し上げましたところ、彼はさっそくその写真と自分がGoProで撮った写真をスマホに入れて、眺めながらニヤニヤ。先ほどのミラクルの余韻に浸りまくっていらっしゃいます。
ほんとうにラブリーなおじさんでした。
こうしてTofoでの3日間にわたるダイビングは終わりを迎え、我々は夕食をいっしょに食べ、私含め翌日去るみんなとハグをしてお別れ。
びっくりするぐらいドラマチックな海と、それとは対照的にゆっくりのんびりした小さな村。その2つの要素がいい感じに合わさって、海を愛する者のための素晴らしい場所ができちゃいました。それがTofoです。ここもまた私にとって忘れられない海となりました。
そういえば【私的オーシャンBIG5】、まさかのオールコンプリートなんですけれども、もれなくすべてダイビングではなくスノーケリングなんですよね。というわけで、今後は【私的オーシャンBIG5】といっしょにダイビング!! を目指していきたいと思います。
それでは本日はこれにて終了。Tofo編も終了でございます。
最後までお付き合いくださってありがとうございました。
コメント6件
おめでとうございます。人生、運が必要です。
マンタってあんなに飛ぶんですね!!
それにジンベエもやはりデカイ^ – ^BIG5コンプリートおめでとうございます!!
わー!!よかったですね!!
私も動画見ながら興奮しました!!
ほんと、スゴイ運ありますよね♪
羨ましい!!
とんでるマンタが笑けましたヾ(´▽`*)ゝ