キューバ(26 )サンタクララからカマグエイへの列車での行き方【非推奨】
世界一周みたいなことをしております私は、キューバを旅しています。数日滞在したサンタクララをあとにして、本日はお隣「カマグエイ」へと移動します。年末年始のホリデーシーズンということもあり、長距離バスのチケットを買うことができなかった私は、列車と言う移動手段にチャレンジしてみました。
【現在地】サンタクララ(キューバ)
Santa Clara(Cuba)
【気温】30度(昼)
【天気】晴れ
【通貨】1CUC=約115円、1CUP=約4円
列車のチケットを買おう!
サンタクララ(Santa Clara)からカマグエイ(Camagüey)に行くことができる列車は、「サンチアゴ・デ・クーバ行き」のみ。列車は、3日に1本という定期なのか不定期なのかいまいちわからない運航状況でして、こればっかりは、駅に行ってみないことには確認のすべはないと思われます。
ちなみに、サンタクララとカマグエイの位置はこのようになっておりまして、その距離約270km。
この日に14:25発の列車が来るというのは、事前に駅のスタッフさんに確認済み。前日にここを訪れた際には、「10時にチケット販売開始だから、そのころにここに来てくれればいいから」とのことでした。事前予約は承っていないとのことです。
サンタクララからカマグエイ行き列車の時刻表や料金表なんかはこちらの投稿をご覧ください。
列車はバスに比べると席数が多いし、出発の4時間も前からチケットを買えるなら、わりと余裕でゲットできるでしょう。
なんていう甘ったれた考えで駅に到着したのは10時10分ごろ。
えー、チケット売り場はすでにこのような状況になっておりました。
とはいえ、出発まで4時間あるし、順番にチケットを販売してくれれば全然余裕。このときの私はそのように思っておりました。
キューバでの順番待ちのスタイルは、独特です。列を作って黙って並んで待つ、ということはいたしません。じゃあどうやるか。
1.待っている人々の中から最後尾の人を見つけ出す。
何かを待つ際にできているのは、“行列”ではなく“人だかり”。ですから、この「人だかり」にむかって、元気よく、大きな声で「ウルティモー?? (最後の人)」と叫んでみましょう。そうすると、「我こそは最後尾だ」という方が名乗りをあげてくれるでしょう。
2.こんどは自分がウルティモになったことを全身全霊でアピールする。
いまいちどうやったらいいか分かりませんが、とりあえず「私がウルティモです」と誰にともなく声に出して言ってみるとか…。とにかくアピールすることが大切です。
3.自分より後に人が来たら、「今現在、自分こそがウルティモであり、あなたはその次ですよ」ということを伝える。
たぶん後から来る新参者も、「ウルティモー? 」と最後尾の人を探すと思います。その瞬間に、すかさず「私です!! 」と主張し、自分のポジションを確立してください。
このプロセスを経て、自分の前の人と後ろの人を確定させ、その人々をしっかりと記憶したら、あとは順番がくるのを待つだけです。
めんどくせぇぇぇええ。
なんだよウルティモってー。
でも、これがキューバのスタイルですので、がんばりましょう。そうして2時間半後。
ほっっっとんど前に進んでねぇぇぇええええ!!!
前にいるメンバーにずいぶんと入れ替わりがあったように思いますが、いっこうに前に進んでいない。
完璧に思えた「ウルティモ・システム」ですが、残念ながら、自分の直前&直後の人しか把握できないという欠陥がありまして、それ以外の人の状況は何も分からないのです。順番抜かされてもわかんなーい。
要はウルティモシステム崩壊してんじゃん、ということですね。
2時間半待ってれこれですよ。もしかしてやばくない? と焦り始めます。キューバのことだから、「ずっと並んで待ってましたけどチケット買えませんでした」といくら主張したところで、発車時間が来たら容赦なく待っている人々をおいて列車を出発させる気がします。
困ったなあと思っていると、ひとりの欧米人の男性から話しかけられます。
「どこ行きのチケットを買いたいの? 」
彼はイタリアから旅行でいらっしゃっているトーマスさん。年齢は、60歳前後くらいかなあ。私が「カマグエイです」と答えると、
「オーケー分かった。僕もカマグエイ行きのチケットを買うつもりだから、あなたの分もいっしょに買おう」とのこと。
なんと!!
「ぜ、ぜひお願いします!! 」
チケット購入にはパスポートが必要。私のパスポートを受け取ったトーマスさんは、人々がぎゅうぎゅうとおしくらまんじゅうをする殺気だった戦場(人だかりの中心)へと赴きました。
すでに破綻してはいるものの、ウルティモ・システムによると、トーマスさんは私よりだいぶ前のほうにポジショニングしていらっしゃって、窓口(爆心地)まであとわずか。それでも、後ろから、横からとぐいぐい乱入してくる現地人に押され、なかなかたどり着けない様子です。
確か、昨日の投稿で、「キューバの人は、時間をたくさん持っているから、待つことが苦じゃないんだろうなあ。すごいなあ」みたいなことを書いた気がしますが、
すみません、訂正します。
いよいよキューバが本性を現してきたようです。後ろのほうから見ていると、誰かが誰かを突飛ばしたり、口論を始めたり、全然おとなしく待ってないです。みんな必死です。
充満した熱気。飛び交う怒声と悲鳴。
もうチケット買えないかもなぁ…。
あきらめかけたころ、ついにポリスが2名ほどやってきました。
予期せぬ警察沙汰に、人々からは大きな歓声があがります。
ポリス呼び寄せた張本人のみなさまから歓声があがる意味が私には分かりません。ちゃんと並んで、順番を守って、ひとりずつチケットを買えば、絶対こんなことになってないのに。
とはいえ、ポリスが来たことで、それなりに人々も落ち着きを取り戻し、ついにトーマスさんがチケットを買える番が回ってきました。
やった、と安堵したのもつかの間、
「シーイズ、マイ、ワイフ!!! Why not!? 」と怒鳴るトーマスさんの声。
そのときグラウンド・ゼロで何が起こっていたかというとですね、私のパスポートをトーマスさんにあずけ2人分のチケットを買ってもらえる手筈だったのですが、我々の国籍が違ううえに、年齢が倍近く離れていることもあり、その関係を怪しまれたようです。
その結果としての、トーマスさんの嫁、という設定。
これが功を奏してか、トーマスさん、無事にチケットをゲット!!
サンタクララからカマグエイまで9CUC(約990円)。
ありがとうございます。ありがとうございます。10時過ぎから並んで、チケットを手に入れたのは、13時半。出発まで1時間切っています。長い長い戦いでした。ちなみに、戦場から無事帰還なさったトーマスさんのシャツは袖のところが破れており、メガネのレンズが片方なくなっておりました。
それから、実際、トーマスさんの奥様は日本人なんだそうです。だから私のことを放っておけなかった、と後から教えてもらいました。本当にありがたいことです。
チケットを買ったら、ホームへと移動します。
乗車、そして出発。いざカマグエイへ
ホームはすでにたくさんの人であふれかえっています。
列車、3日に1本ですからね。これを逃したら、次は3日後。
14:40、すでに予定発車時刻は過ぎておりますが、ここでやっと列車がやってきました。
車内の様子がわからないので、どんな座席なのかわからず、ドキドキ。
チケットに書かれている車両を目指し歩いていると、トーマスさんがポツリとつぶやきました。
「どうやら座席があるみたいだね、よかった…」
え…。座席ないパターンあんの!?
前回トーマスさんが列車を利用なさった際は、座席がなかったそうです。完全に貨物です。
さあいよいよ車内へ。こちらトーマスさん。
一応、指定席制。
一応、一人一席ある。
椅子はこのような感じです。
15:00、予定より約30分遅れで列車出発。
一応、車内販売もあります。
窓から見える景色は、大変のどかです。
トーマスさんは、窓から外を眺めながら、「僕が子供のころは、こんな風景がイタリアにもあふれていたんだ」とおっしゃいます。
「もう二度と戻らない、失われた景色がここにはある…」
と、なんだか切なそう。
日本人の私から見ると、キューバの田舎の風景は、のどかで牧歌的でいいなぁとは思いますが、“なつかしい”という感情はわいてきません。だって、日本とは全然違いますもの。
でも、窓の外にときおり見える、牛を使って畑を耕す人や、馬に荷物を積んで移動する人の姿は、イタリア人のトーマスさんにとっては、“なつかしい”ものなんだそう。
キューバはたぶん、育った国や世代によって感じ方がすごく変わる場所なんだろうなあ。
トーマスさん世代(60歳くらい)の、多くのヨーロッパからの旅行者さんにとっては、日本の大人たちが『ALWAYS 三丁目の夕日』とか『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』を観て、つい涙してしまうような、ノスタルジックな気持ちを掻き立てられる国なのでしょう。
16:00。出発から1時間後、Maps meというアプリで位置を確認すると、サンタクララから30kmほど進んだ地点にいます。
時速30km…。
べ、べつに急いでないし。
17:00。出発から2時間後。だいたい予想通り、70km地点到達。そろそろ日没です。
18:00。日が沈みました。きれいな空です。
今、110km地点。
19:00。車内に電気はありません。
20時、あと100km。
21時、あと65km
22時、あと30km
23時、カマグエイ、到着。
バスならば5時間で行ける道のりを、電車で8時間かけてやっとたどり着いたカマグエイ。外は、あたりまえですが真っ暗です。この列車はこれからサンチアゴ・デ・クーバまで行きます。おばけトレインみたい。
本日の気づき:列車は、最終手段。
乗り心地は、見た目より悪くはありませんけどね。
朝まで公園で時間をつぶすというタフなトーマスさんとお別れし、私は近くにあったカサパティクラールに泊まることにしました。駅から徒歩5分。
どんなにお願いしても25CUC(約2,800円)より下がりませんでしたが、この時間に大きな荷物を持って外を出歩く勇気はありませんので、ここに泊まることにします。
本日の投稿はこれにて終了。なんか長い1日だったなあ…。今日もまた最後までお付き合いくださってありがとうございました。明日からはカマグエイという町のことをご紹介いたします。
「トーマスさんのシャツは袖のところが破れており、メガネのレンズが片方なくなっておりました。」ってところで、気の毒やし笑ったらアカンと思いながらも爆笑してしまいました。笑
行列のすさまじさを物語っていますね。
キューバの不便さと魅力の表裏一体な感じが、読んでいてすごく伝わってきました。