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2016-04-05

世界一周のルート・日程決めがはかどる「ひとりブレインストーミング」

世界一周のルート決めがはかどる「ひとりブレインストーミング」

「はいはい、出たよ出ましたよ。今日はアレの日でしたか」。会議室の扉を開けると同時に、敏感な私は察知します。目の前にあるのは、大量の付箋とホワイトボード。

クリエイティブな人たちが、クリエイティブな発想を持ち寄って、よりクリエイティブななにかをクリエイトしようっていう例のアレをやるんですね。

それがこちら。

「○○さんから電話ありました」だけじゃない付箋の使い方として脚光を浴び、おしゃれなミーティング方法あるらしいよって、一躍有名になったこの「ブレスト」とかいうやつ。参加者が自分の意見を付箋に書き、白い大きな紙やホワイトボードなんかに貼ったりはがしたり、位置移動させたり重ねたり、とにかく斬新な付箋の使い方をしてみよう、というのがコンセプト。これにより、最適解を導き出せたり、新しいアイディアを生み出せたり、何かしらいいことがあるよ、と言われています。

一昔前はクリエイティブな集団における効果的なアイディア出しの手段として頻繁に用いられていましたが、今ではめっきり見かけなくなりました。しかし、現在の私の職場ではいまだにこのようなロートルな手法を採用した会議が催され、内向的な参加者を日々苦しめ続けているのです。何「ブレスト」って。「ブレインストーミング」あ、そう。私はこれがたいそう苦手

まずね、みんなでわいわい意見を出し合って、あーでもないこーでもないってやっていく過程で素敵なアイディアを思いつく人はいいですよ。でも世の中そんな人ばかりではありません。私のように、まるで川底に沈むダイヤモンドの原石を砂礫の中からそっとすくい上げるがごとく、意識の底に沈むアイディアを丁寧に丁寧に抽出するタイプの、繊細なメンタルの持ち主だっているわけです。

つまり、ひとりでじっと心を落ち着け集中したほうがいいアイディア出てくるタイプの人。大勢で集まって意見を出し合うという方法が一概にベストなアイディアを生み出す手段だとは言い切れないのです。

そして、ダイヤモンドの原石を磨くのもまた、たった一人で集中してやりたいタイプ。ブレインをストーミングするとかやらなくていい。付箋をホワイトボードにペタペタ貼ったりしなくていい。どうせみんな気を遣ってあれもいい、これもいい、みんな違ってみんないい、みたいな結論になることは目に見えています

いいアイディアが出るということよりも、こうした場を設けてブレインをストーミングしたぞっていうことに価値を見出しちゃってる

だったら、いっそ無記名コメント制にしたほうがよっぽどいい意見が出ると思うんです。匿名の掲示板が異様に盛り上がっているのと同じです。そのほうが心置きなく辛辣な意見を書ける。やっぱりね、みんな人の目があると、ちょっとなんかかっこいい感じのこと書いてしまいがち。できるクリエイター風の意見書きがち

私は現在セールスプロモーション的な仕事をしており、なんていうか「商品を売るための仕掛け」みたいなことを毎日いろいろと考えています。たまに開催されるミーティングでは、いかにして商品を売っていくかについて話し合います。

ある日のテーマは、物を買いたくなる売り場について

ものを売るうえで「売り場」というのは非常に重要です。どんなお店で買い物をするか、なぜそのお店で買い物をしようと思ったのか、といったことをまとめ、さらにどんな売り場ならものを買いたくなるかについて深く掘り下げてみようという趣旨。

でね、目の前に用意してある付箋に、自分がよく買い物するお店と、その理由を書け、と。

そして、ホワイトボードには大きなマトリックスの表が書いてあって、縦軸に「デザイン性の高い売り場」↔「機能的な売り場」。横軸に「目的があって行く」↔「とくになくてもチェックする

みたいに書いてあって、ちょっとみなさんどんなモチベーションで買い物とか行ってんの? 洗い出してみましょうよ、と。そうしておいて、意見や質問を心ゆくまでぶつけ合い、みんなで傷だらけになりながら今後の課題を見つけ出していきましょうよ、と。

私は、このブログでも、何度も何度も何度も繰り返し言い続けていますが、みんなに注目されたり、大勢の前で発言したり、自分の考えを堂々と人様の前で披露するのが何より苦手です。要は「ブレストこわいー」。

でね、まあいつもと同じように、安定のだんまり作戦で時間が過ぎるのをただじっと待つんですけど。私には長年の経験で培ったステルス能力がありますから、だいたいはこれで乗り切れます。基本的に他人の意見に便乗し、「ちゃんと話聞いてますよ」という雰囲気出して時折うなずいてみせたり、「ちゃんとメモとってますよ」とノートに何かしら書き記してみせたり。こうしておけば大丈夫。だいたいの人は私がいたことにすら気づきません。ステルスとはそういうもの。

しかしながら、まれに、このステルスを見破るレーダーを持つ者と遭遇します。「mayumiさん聞いてます? 」「mayumiさんどう思います? 」っていちいち聞いてくる。「え? 私のこと見えてるんですか? 」と聞き返したくなります。こういう人は非常にやっかい。ほっといてくれればいいのに。

こういう人がブレストを仕切っていると最悪です。レーダー社員が聞いてきます。

mayumiさんは、普段どんなところで買い物するんですか? 

はいきたー。ステルス無意味ー。でも大丈夫。こういうときは、とにかく無難なことを言って注意を他の人にそらせばいいだけの話。書いた付箋を差し出しながら答えます。

「Amazonです」

みんながザワッとしました。

「え、うそ。違った?私間違った? 」

こういうとき、だいたい的外れな回答をするのが私の特技。当然意図してやっているわけではありません。ちょっと企画の趣旨を見誤っていただけであって、こっちとしてはなるべく目立ちたくない一心で、いたって当たり前の、非常にありきたりな答えを書いたつもり

付箋だって蛍光イエローではなく、パステル調のやさしいほうの黄色を選んだし、ペンの色だってを使ってる。

細心の注意をはらって、当たり障りのない回答をしたはずなのに。あわてた私はすかさず言い添えます。

「わ、わたし、プライム会員なんで」

いい意味でみんなのななめ上を行き、さすができる人は考えることが違うなー人より能力が秀でた人はやっぱ斬新な発想するなーっていう、そういうユニークで新規性のあるパターンでは決してないやつ

レーダー社員、その手に持った付箋、ついさっき私から奪い取ったその付箋、ベクトルのどの位置に貼ったらいいか決めかねてます。ちょっと困っちゃってるじゃん。

意図してなかったけど、そっとしておいてくれなかったレーダー社員を少し困らせてやったことで、内心ほくそ笑む私。これが俗に言うブレストクラッシャーです

今日はこれ完全に私の勝ちでしょ。圧勝。やってやった。もうこれ以降私に意見を求めてくることはないはずですから。勝利に酔いしれる私にレーダー社員は言います。

あ、お店で試着はするけど、購入はAmazonっていうパターンですね。わかります。実物は見たいけど、価格はだいたいAmazonのほうが安いですからね。いろいろ比較して買えるのもいいですよね」

ですって。とにかく私の付箋をホワイトボードのどこかに貼らないといけませんから、彼も必死です。“他人の意見を批判して潰す” というのは、ブレストにおいては絶対にタブー。どんなにクソみたいな意見でもそれを大切に扱わなければならないのです。だから逆に苦しいの。とてもいたたまれないの。いっそなかったことにしてほしい。

そんなレーダー社員の発言を聞いて私は思います。「いや、実店舗なんて行かないですよ。店員さんとのコミュニケーションが苦痛なんで。それにプライム会員だと翌日着が約束されてますから。私はとにかく家から出たくないだけであって、現物見ないで買ってサイズ合わなかったら、それはもう仕方ないかなって割り切ってます。Amazonに寄せる信頼は計り知れないので、そんなふうに実店舗とAmazonを天秤にかけるような真似、するわけないじゃないですか」と。しかし私も大人なんでね、今日はこのへんで許してやるか、と。さすがにちょっとかわいそうになってきてますしね。得意のアルカイックスマイルをうかべながら「そうですね」と言ってあげました

正直こっちとしても、なんか力技で起動修正できてよかったな、ぎりぎり持ちこたえたなって思う部分はあるんです。ただの「引きこもりの購買行動のリアル」が、いつのまにか

“実際に商品を手にとってみたい”、“なるべく安く買いたい”という消費者の購買における心の葛藤を見事に代弁したんですよ

ってことになってましたからね。「あ、なるほどね、そんな視点もあるのかー」って、むしろこの意見は「顕在化されていない消費者の内なる欲望を見つけ出すための糸口」くらいまで持って行けてたと思います。

結局、なんやかんやでレーダー社員によって窮地を救われたおかげで、私の付箋は「機能的な売り場」と「目的があって行く」双方の最高地点、つまりホワイトボードの右下一番端ギリギリのもっとも目立たないゾーンに居場所を見つけたようです。

ちなみに、このあといろんな人が、自分がよく買い物をする場所を記入した付箋を貼っていきましたが、模範解答としては「伊勢丹」とか「ルミネ」とか「マルイ」とかそういうやつだったみたいです。


今までいやだいやだと思ってきた「ブレスト」ですが、このたび私はこれを完全にものにして見せました。ブレスト的付箋の使い方、実践編ですね。こういった高度な付箋の使い方をマスターしたことで、退職を目前に控えた今になって、やっとこれまでの成果を発揮することができたなあと自負しています。言ってみればこの5年間の付箋の使い方の集大成。それがこちら。

世界一周のルート決めがはかどる「ひとりブレインストーミング」

いやー、これ便利だね。こういう風に使うと付箋ってすごく便利。中南米のルートと日程考えるときは、このブレスト式付箋活用法でやるとすごくはかどる

だって、訪問順考えるのけっこう大変でしたもん。ペタペタやってると、まあ楽しいよね。ウユニ塩湖は月齢の関係で、1月末か2月末で固定。で、前半中米は4か国だからすんなり決まります。そのあとエリアを南米に移しまして、ここからが悩みどころ。あーでもない、こーでもないと付箋を貼ったりはがしたり…。無意味なブレストよりよっぽど有意義に付箋、使えてた。「ブレインストーミング=集団的思考」ですから、そもそもひとりでやることではない、というのはこの際無視します。

これを会社のお昼休みにごはん食べながらニヤニヤとやってたわけです。私が立ち去った後、「グアテマラ」とか「アルゼンチン」とか書かれた付箋が数枚落ちてたりするからホント意味不明でしょうね。

こうして完成したルートを昨日ドヤって発表しました。

みなさんもぜひ、このような付箋活用法にチャレンジしてみてください。大丈夫、意見ぶつける相手いませんから、一人でやるぶんには傷つくこともありません。思う存分「あーでもないこーでもない」をやっちゃってください。

本日も最後まで読んでくださってありがとうございました。

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コメント2件

  • こっけ~ より:

    はじめまして、こっけ~と申しますー

    いくつかの記事を読んだのですが、mayumiさんの文章の書き方がすごい好きです。
    一般的には「理屈っぽい」と言われるくらいの論理的な思考の積み重ねと、合理性を追求しつつ最終的には感性を大事にしてるところとか。
    って妙に分析口調になってしまいましたが、ボクもそういうタイプの人間なので、とても共感を覚えました。
    また遊びに来ます!

    • mayumi mayumi より:

      こっけ~さん
      コメントありがとうございます!
      褒めていただいて、とてもとてもうれしいです。
      共感していただけるなんて、仲間が増えたみたいで心強いです!
      だいたいいつも、一方的に主張を繰り出して終わるパターンが多いので、こんなふうに言っていただけると照れます。ぜひまた遊びにいらしてくださいね~。

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