マダガスカル(12)最強のバオバブ「ツィタカクイケ」とちっぽけな私
恐怖のタクシーブルースドライブ、無意味な野宿を経てひとまわり大きくなった私は、現在、マダガスカルの「モロンベ(ムルンベとも言う)」にいます。本日は、私が世界一周の中で、最も行きたかった場所を訪れるという、大事な大事な投稿です。ぜひ楽しんでいってくださいね。
【現在地】モロンベ(マダガスカル)
Morombe(Madagascar)
【天候】晴れ
【気温・湿度】25度・75%(夜)、35度・55%(昼)
【為替】100マダガスカルアリアリ=約3.4円
何よりも楽しみにしていたこの日がついにやってきました
一昨日、昨日となかなかにハードな状況を経験した私ですが、そんなことはもう過ぎた話。本日は、今回の旅で最も重要な意味を持つ“あの木”に会いに行く日ですから、もうワクワクドキドキ、興奮で鼻血が出そうなくらいなのです。
それでも、どうしても一昨日、昨日の投稿が気になると言う方はぜひそれを読んでから再度こちらのページにお越しください。
朝7:30起床。昨日、野宿という憂き目にあった私の命を救った(大げさ)バナナの残りを食べ、意気揚々と村の中心部へ向かいます。
本日私が行きたいのは、「アンドンビリー」という村。そこに生えている木こそが、私が最も見たいバオバブ、その名も
「ツィタカクイケ」
英語で書くと「TSITAKAKOIKE」。小さな声でいいので、ちょっとこの名をつぶやいてみてください。非常に言いづらいですね。まあ現地の言葉ですから仕方ありません。ここマダガスカルで「ツィタカクイケ」は“神聖なるバオバブ”と呼ばれていて、他のバオバブたちとは一線を画しているのです。
数日前に行ったモロンダバという町の「バオバブ街道」や「愛し合うバオバブ」は、どちらかというと観光地として有名ですが、このアンドンビリーにある「ツィタカクイケ」は現地の方々から聖なる木として崇められているのです。
この木の何がすごいかって、それはもう、そのサイズ!!
マダガスカルで一番!!
幹の周囲約30m。
こんなにすごい木なのに、なぜ観光客があまり行かないのか。そんなのは、分かり切ったこと。
たどり着くのが、ものすごく大変だから。
すでに、最寄りの村「ムルンベ」に来るまでがけっこう大変でした。さらにここから50kmくらい北にあるのが「アンドンビリー」。これ直線距離が50kmってだけで、実際は未舗装のガタガタの道なき道を4WDとかで2時間かけて行かないとたどり着けない。
“木”1本見に行くためだけにこれをやるのは、よっぽど暇があって、体力があって、物好きな人だけです。
そんな、暇で体力がありあまっている、物好きな私は、村の中心部で人々に聞いて回ります。中心部って言っても、メインストリートがこんな感じですからね。
ここでロールプレイングゲームよろしく、「アンドンビリー」「バオバブ」「ツィタカクイケ」という単語だけを頼りに、どうやって行けばいいかという情報を入手しなければなりません。
『地球の歩き方』には、“ツアーがある”みたいなことが書かれていましたが、私が思うに、今はそんなもん無い。村の人たちが私を見る好奇心たっぷりの目と、情報収集の結果、たぶん、観光客そんなに来ていないんじゃないかなーという感じがしました。
「アンドンビリー」へは、タクシーブルースとか公共の乗り物で行ければ一番いいんですけど、そんなにみんながこぞって行くような場所ではありませんから、個人で4WD車を持っている人を見つけて連れて行ってもらうほうが現実的か…。
そう考えながら、普段のコミュ障の私からは想像もつかないアグレッシブさとバイタリティーを発揮して、積極的に知らない人に話しかけます。見慣れない東アジア人が情報収集しているのがめずらしいのか、どんどん人が集まってくる。その中で1人、フランス語ですけどたぶん「タクシーブルースはないよ。でもツテがあるから付いてきなさい」というおじさんが現れました。
「はいかかったー!! 」
きっと4WDを持っている人を紹介してくれるんだ。そう思った私はおじさんに付いていきます。おじさんは、ちょっと歩いた先にある一軒の家に入って行き、私に外で待つよう言いました。それから10分ぐらいして、私も入って来るよう手招きします。
アフリカに生息するジャイアンとの邂逅
家に入ると、そこにいたのは一人の男の人。
例えるなら、ジャイアン(『ドラえもん』)と
ミスターポポ(『ドラゴンボール』)
を足して2で割ってさらに凶悪にした感じ。
いや、そんなめんどくさいことしなくても、凶悪なジャイアンのアフリカバージョンといえば話は早い。
まだ8時ぐらいだったため、寝起きだったのか、機嫌が悪そうなジャイアン。っていうか布団に寝ころんだまま。しかし、驚くべきことにジャイアンは英語を話します。
マジか。出木杉くんの頭脳を持ったジャイアン…。
スペックでいうと最強なんじゃないかと思われるその男は、どうやらこの村の観光業を取り仕切っているようで、彼が4WD車でのツアーを斡旋しているようです。布団に寝ころんだままのジャイアンは値踏みするかのように私をじっと眺め、質問してきます。低い声でゆっくりと話すジャイアン。
ジャイアン「バオバブを見に行きたいんだって? 」
私「そうです。タクシーブルースが無いって聞いたんで、4WDを持っている人を探していて…」
ジャイアン「ああ。俺なら手配できる。いつ行きたいんだ? 」
私「今日。今から行きたい。明日トゥリアーラに帰りたいから」
ジャイアン「で、おまえは俺にいくら払うつもりがある? 」
ちょっと考える私。確か『地球の歩き方』には“ツアーだと150,000~170,000アリアリ(約5,100~5,780円)”って書いてあったな。
私「100,000アリアリ」
ジャイアン「アンドンビリーがどんだけ遠いか知ってんのか!? 道も悪いし、それをわざわざ連れて行くんだぞ。そんな値段じゃダメだ。300,000アリアリ(約10,200円)でどうだ」
私「無理無理無理無理。私お金ないですもん。そんなん払えません」
ジャイアン「なんだと!? おまえまだ学生か?」
私「は、はい」
ジャイアン「歳はいくつだ? 」
私「に、25…」
ジャイアン「そうか。俺は29歳だ」
ちょっとサバ読みすぎたかなーと思いつつ、ジャイアンが自分より年下ってことに驚きを隠せませんでした。
ジャイアン「マダガスカルに何しに来たんだ」
私「バオバブを見に」
ジャイアン「それだけか? 」
私「あ、あとダイビングも」
ジャイアン「なんでそんなにバオバブが見たいんだ」
私「でかい、かっこいい。あとは私にもよく分かんない」
なんでそんな根掘り葉掘り聞くんだろうと思っていましたが、確かに、あまりなじみのない国からたった一人でやってきた25歳学生(詐称)が何を考えているのかは、確かに気になる。
しかも、現地の物価や所得からするとかなりの大金をバオバブを見に行くためだけに支払ってもいいと言い切るなんて、もはや謎以外のなにものでもないでしょう。
そのあとも、旅費は誰が払っているんだ、とか、どうやってお金を貯めたんだ、とか様々な質問攻めに合いつつも、結局200,000アリアリ(約6,800円)で折り合いが付きました。だいぶ高い気もしますが「こんなとこまできて見に行けない」ってことのほうが怖かったのです。たぶん、ジャイアンが300,000アリアリって言って譲らなかったら、私は払っていただろうと思います。
しばらくすると絶対ジャイアンより年上の気の弱そうなおじさんが連れてこられ、彼が私のドライバーだと紹介されました。
なんだ、ジャイアンが連れてってくれるんじゃないのか、と思っているとジャイアンが言います。
「俺もガイドができるんだが、今日はちょっと別件があってな。もしよかったら、夜うちに来ないか、飯でも食おう」
あーこれよくほかの人のブログで見るよねー。夕ご飯に招待されるパターン。現地の人との心温まるコミュニケーションってやつ。でもさー、これ女性の一人旅となるとけっこう難易度高いんですよ。「危ない目に合うんじゃないか」っていう危険と隣り合わせで。
本当に普通にごはんのお誘いならむげに断るのも気が引ける、でも、それ以上のお誘いだったらのこのこ付いてくのは自殺行為。
その見極めが難しいよねー、みたいなことを考えていると、ジャイアンが一言。
「おれのバオバブを見せてやるよ」
……
……
あ、結構です。そういうのやってないんで。
見極めは簡単でした。マダガスカル流のテッパン下ネタ(かどうか知りませんけど)をドヤ顔で放ったジャイアンを華麗にスルーした私は、紹介してもらったドライバーさんと一緒に外へ出ました。こちらがドライバーさんの車。
後ろからゲラゲラ笑いながら付いてきたジャイアンと、ドライバーさんが何か話しています。しばらく話し込んだ後、ジャイアンが私に向かって言いました。
「ドライバーの彼は、ちょうど明日トゥリアーラに行くらしい。おまえも明日帰りたいんだろう?
だから、いっしょに連れてってやるよう言っといたから」
なんだかんだいって、ジャイアンはいいやつでした。
正直、私はもうあのオープンエアのタクシーブルースに乗りたくはなかったし、どこにも立ち寄らずまっすぐトゥリアーラに向かってくれるなら、きっと来る時より早く戻れるはず。ありがとうジャイアン。アニメではなく、長編映画の『ドラえもん』のほうのジャイアンくらいのいい人っぷり。
ジャイアンに感謝を伝えると、「夜、気が変わったら連絡くれよな」と一言。ニヤリと笑って首を横に振る私を見て、大きな声で笑いながらジャイアンは去って行きました。
連絡先なんて知らないし、知ってても連絡しない。ジャイアンのバオバブを拝む気なんてさらさらないけれど、ああいう人は嫌いではありません。
いざ行かん、あの地へ…
ジャイアンと別れ、ドライバーさんと私は、ついに「アンドンビリー」へと出発します。ロープレでいうなら“4WDのドライバー”という職業の人を仲間にし、4WD車を装備した状態。英語が話せないドライバーさんとフランス語が話せない私なので、ほとんど無言だったけど、バオバブが見える要所要所で車を停めてくれて、写真を撮りやすい位置に移動してくれました。
ギリギリ「道」と呼べる未舗装の道路を2時間走り、途中で何人もの歩行者に道を尋ねながら、やっとの思いで小さな村に到着。そこが目当ての村「アンドンビリー」。村に車を停めて、その奥へと歩いて行きます。
そして、
ついに、
出会えました。
聖なるバオバブ「ツィタカクイケ」。
でっけーなあ!!!!!
わたし、ちっせーなあ!!!!!
このスケール、分かります? 上の写真に写り込んでいる人間、私なんですけど、まあ小さいこと。バオバブ“ドーン”で、わたし“ちょこん”ぐらいですよ。これがね、私がマダガスカルで一番見たかったもの。そして、世界一周で、一番行きたかったところ。世界一周開始から、早10日でもう来ちゃってんじゃん、っていう話なんですけどね、おいしいところは真っ先に手を出しちゃうタイプです。
はい、このテンションで、まずはモノクロ。
続いて、セピア。
そして、ちょいレトロ。
幹の寄り。
枝。
太陽光で力強く輝く「ツィタカクイケ」。
ハァハァ。ヒートアップしすぎてすみません。
なんかもう、私ってちっぽけすぎて笑える。
これはもう完全に苦労してこんなとこまで来たかいがありまくりです。
パワーがハンパない。私、スピリチュアルなこととかちょっとよく分からないですけど、ここは間違いなくパワースポット。この木の近く、空気が違うもん。全然違う。
マダガスカルに来てから今まで見た他のバオバブとは完全に別物な感じ。
38度を超えて灼熱だったけど、この場所はいい風が通り抜けます。私の写真を撮り終わったドライバーさんは車に戻り、私はツィタカクイケのそばでたった一人になりました。
ツィタカクイケの周りをぐるぐる回ってから、近くに座ってしばらく過ごした至福のひととき。“木”にこれだけ萌えられる私はちょっとおかしいんじゃないかと、自分でも不安になります。
でも、なんだか分からないけれど、ここは、すごい場所です。
ツィタカクイケのあとの出来事をさらっと
ツィタカクイケを思う存分満喫した私は、車へと戻ります。
車、めっちゃ囲まれてんじゃん!!
たくさんの子供たちに包囲されている我々の車。側に大人がいるなーと思ったら、学校の先生とその生徒さんでした。マダガスカルの子供たちは本当に元気いっぱいで、好奇心旺盛で、写真が大好き。
子供×カメラで毎回恒例のようになった撮影大会を開催し、その場を後にします。
「アンドンビリー」からほど近い場所に、こちらも現地の人から崇められている「ベブーカ」というバオバブがあります。
妊婦のバオバブという意味で、それはまさに木のフォルムそのもの。ベブーカもまあハンパなくでかいんですよね。
バオバブ街道や愛するバオバブなどがある「モロンダバ」にくらべると、ここ「ムルンベ」周辺のバオバブは幹が太くてどっしりしています。同じ「グランディディエリー・バオバブ」という種類なのだそうですが、「ムルンベ」のほうが乾燥した気候のため、より水分を蓄えやすい形状に進化したのだとか。
迫力たっぷりのダイナミックなバオバブを見たい方は、ぜひぜひ「ムルンベ」へ。何ら具体的な情報を残せず申し訳ないのですが、とりあえず、ジャイアンに4WD車を斡旋してもらってみてください。
今日の投稿は、やたらとテンションが高く勝手に盛り上がってしまって恐縮です。普段「やたらと文字のサイズ大きくしたりして、とりあえず勢いだけでなんとかしようとするブログにならないようにしなければ」と自分に言い聞かせているのですが、人は、気分が高揚し、振り切ってしまうと、つい文字を大きくしたくなるものなんだということが分かりました。本日も、最後までおつきあいくださってありがとうございました。
コメント6件
mayumiさん、それからお腹の調子はいかがですか?
バオバブ街道もすてきでしたが、ツィタカクイケスゴすぎます~‼ わたしも星の王子さまでバオバブにあこがれ、ミュージアムにてバオバブの木セットを買い早8年、未だ箱のなか~(>_<) 素敵写真でたくさんのバオバブを満喫できてよかったです♪
お星さまの写真、携帯のロック画面に使わせてもらってます。 流れ星が毎日みれてうれしいです♪ありがとうございました。
本当に思ったより大きいバオバブですね。
日本から短期だとなかなか行きにくい場所ではありますが、俄然興味が沸いてきました、マダガスカル
こんにちは、初めまして、
自分も今年の10月から世界を放浪しようと思っています。
それで一番行きたい国がマダガスカルでバオバブを見ようと思っていました。
まさか自分と全く同じ考えの人がいるなんて驚きと喜びが隠し切れません!
ますますバオバブみにいきたくなりました!
後自分はマダガスカルにいったら外せないのは
マダガスカルの人とゴー☆ジャスのネタをやることです笑
いつか世界のどこかであえることを楽しみにしています