Announcement Date: 2002-07-02

【カンボジア】2002.07

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初めての一人旅の最終目的地、カンボジア。

一之瀬泰造という戦場カメラマンの生涯を浅野忠信が演じた映画『地雷を踏んだらさようなら』を観て影響をうけまくった19歳の私は、今すぐカンボジアに行かなくては! と安易にもタイ&カンボジア旅行を決めた。一之瀬泰造がどうしても一番にカメラに収めたかったというアンコールワットをこの目で見たいと思った。相変わらず単純だ。

アンコールワットを初めて見たときの衝撃は今も忘れない。まだスマホもなくて、インターネットもそんなに普及していなくて、もちろんFACEBOOKなんてなくて、そんなに情報がないから、本や写真でだけしか見たことがなかった本物のアンコールワットが突然目の前に現れて、文字通り息をのんだ。変な感想だけど、本当にあったんだーと思って安心した。「本の中に入ってきちゃった」みたいな感覚。

多くの人が訪れるヒンズー教の寺院として建てられたあと、仏教寺院へと変わったアンコールワット。クメールルージュ時代には戦場になり、たくさんの人が命を落とした場所。それが今は、こんなにも静かで、こんなにも美しい姿で私の目の前にあるなんて、よくわからないけど泣きそうになった。たくさん人がいるのにみんな黙ってじっとしていて、しんと静まり返った中でアンコールワットからのぼる朝日を待っている時間は、すごく神聖な感じがした。最初の一人旅の目的地をカンボジアにしてよかったと今でも思う。

アンコールワットではじめて、いわゆる“ワンダラーガール”(勝手に名付けた)たちに遭遇した。世界中の有名な遺跡や建築物の近くにいて、ほとんどがその土地の民族衣装を超かわいく着こなしている。フォトジェニックな場所に立ち「さあ撮って」と言わんばかりにポーズを決める。そして、まんまと写真を撮った旅行者に手を差し出してこう言うのだ。「ワンダラー!!!!!」。ワンダラーというのは1ドル払いなさい、という意味で、発展途上国で暮らす人々の大切な収入源になっている、と思う。何で写真を撮っただけでお金を請求されるんだ、と思って払わないでいると、ずっとずっとずーっとついてくるから、最終的に払った。彼女たちも立派に働いているんだから仕方ないと思うことにした。可愛さを維持するのに何かしら努力しているかもしれないし、きっと友達と遊んだりしたいだろうに、体を張って稼いでいるんだ。それ以来ワンダラーガールは、世界中で私を誘惑してくる。絶対写真撮ったらあとで「ワンダラー!!」ってい言われる、と分かっていながら、わたしはいろいろなところで彼女たちの写真を撮る。だってかわいいから。“かわいい”はいつだって正義だ。バンコクにもチェンマイにもラオスにもベトナムにもペルーにもハンガリーにもワンダラーガールはいた。世界ワンダラーガール協会、とかいう組織から派遣されているんじゃないかとすら思う。

当時はまだ、地雷があるから入ってはいけません的なエリアがたくさん残っていたし、戦争で手足を失った男の人たちが路上で楽器を演奏していたし、遺跡の内部にも体が不自由なおばあさんが座り込んでいたし、あたり前だけど日本では見ることのない壮絶な光景を目にして(あまり直視できなかったけど)言葉が出なかった。これがこの国の現実で、私が知らなかっただけで、世界にはまだまだこんな状態の場所がたくさんある。このあたりが、私がもっと世界を見たいと思い始めたきっかけなんだと思う。いいことも悪いことも全部自分の目で見てみたい。もっともっといろんなことを知りたい。その気持ちは今も全然変わらない。まだまだ行きたいところがたくさんありすぎて困っているくらいだから。


 

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